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中央学院が千葉8強。千葉明徳に特長消されるも、技能派集団は「几帳面な守備」で新たなチャンス掴む

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PK戦の末、中央学院高が千葉準々決勝進出

[10.24 選手権千葉県予選2回戦 中央学院高 0-0(PK8-7)千葉明徳高]

 千葉の技能派集団は“もう一つの強み”で8強へ――。24日、第100回全国高校サッカー選手権千葉県予選決勝トーナメント2回戦で中央学院高千葉明徳高が激突。0-0で突入したPK戦の末、中央学院が8-7で勝利した。

「本当、できていない。何回引っ掛けた?」 試合後、中央学院の濱田寛之監督はミーティングで選手たちに向けて厳しい言葉を投げ掛けていた。解散後には、「ファーストタッチから仕掛けていない。逃げている。もっと意識してやらないと。もう一回チャンスをもらったから……」。戦国・千葉で異質の存在。個人技、個人戦術にこだわってトレーニングしてきた技能派集団には、プライドもある。

 だが、この日は千葉明徳の出足の良く強度の高い守備にドリブルを封じられ、なかなか中盤のラインを突破することができなかった。濱田監督も認めたように、内容は千葉明徳が勝っていたようなゲームに。それでも、中央学院は攻撃以上に「もっと几帳面になってやっている」という堅守で白星を引き寄せた。

 中央学院は試合序盤からドリブルとパスを織り交ぜた細かな崩しにチャレンジ。そして空中戦で“無双”に近い強さを見せていた2年生CB大磯竜輝がセットプレーでヘディングシュートを狙う。攻撃から守備への切り替えも速く、やや優勢に試合を進めていた。

 対して千葉明徳は試合を通して、安定した守りを継続していた。前半は前線で動き出しを繰り返すFW釜本舜生(3年)が鋭く相手の背後を突き、プレッシングで相手GKのキックをチャージするシーンも。後半に入ると、MF川口大騎(3年)とMF黒瀬成虎(3年)のダブルボランチが幾度もボールを奪い返す。

 そして、黒瀬の好パスからMF稲垣柊平(3年)がドリブルで仕掛けるなど、ショートカウンターを連発。中央学院ゴールに迫る回数を増やした。中盤を抜かれてもCB石田耀俊(3年)やCB宮後悠(3年)がカバー。決定打を打たせなかった。

 一方の中央学院は高速左SB宇田川海翔(2年)やしなやかなドリブルを見せるエースFW野口滉生(3年)が大きく前進するシーンもあったが、攻撃は単発で攻め切ることができない。

 加えて、前半に負傷したGK鈴木蓮汰(3年)が後半開始直後に交代するアクシデントも。だが、代わって入った1年生GK小舟風雅が思い切りの良い飛び出しでピンチを防ぐ。また、高さを発揮し続けていた大磯が要所でタックルを決め、「(特長は)気持ちや身体を張るプレー」というCB山宿雄陽主将(3年)も的確な守備対応を見せるなど得点を許さなかった。

 千葉明徳は特長ある交代カードを切りながら1点を目指し、中央学院もドリブル、コンビネーションでの打開を狙う。だが、互いの堅守は崩れず、0-0のままPK戦へ突入した。先攻・中央学院は1人目が千葉明徳GK三浦康陽(3年)に止められたが、4人目のシュートをGK小舟が足でビッグセーブ。この後、互いに重圧のかかる中でキックを決め続けたが、千葉明徳9人目のシュートが枠を外れ、勝敗がついた。

 中央学院は失敗しても繰り返しドリブルにチャレンジ。仕掛け続けたことで相手にダメージを与えた部分もあった。山宿は「流経・市船とか激しいサッカー、攻守一体のサッカーをやっているけれど、自分たちは変わったことをやっているので、だからこそ変えたくないというのがあります。それがしたくて入学したのもある。みんながこのサッカー大好きですし、市船・流経のような(他の強豪校の)サッカーには負けたくない」と自分たちのスタイルへのプライドを口にする。この日は千葉明徳の堅守の前に成功する回数が少なかったが、それはトレーニングでレベルアップさせるしかない。

 主将は、その点を認めた上で“もう一つの武器”へのこだわりについて説明する。「失点しなければ負けないので、バックラインとGKとが声を掛け合って守れたので良かったと思います。学院らしくはないですけれども、皆さんが思うような。でも、攻撃陣はそういうサッカーをしていて、守備陣はもっと几帳面になってやっているんだというのは、目立っていないですけれども中央学院は徹底してやっている。去年の流経戦(準決勝、0-0でPK戦敗退)も取られていない。守備陣は陰ながら頑張っている感じですね」。濱田監督も「しっかり守備をして良い流れで点を取れるようにやってきた」。異質の技能派集団は、攻撃から守備への切り替えの速さや、キチキチと競る・走るという武器も持って、まずは公立校・白井高との準々決勝。堅守と“学院らしく”テクニックを表現して千葉制覇へ前進する。

(取材・文 吉田太郎)
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