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[MOM3625]佐賀商MF中原魁二(3年)_今大会がサッカー人生の集大成。一般企業内定のキャプテンが1ゴール1アシストの大活躍!

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佐賀商高を牽引するキャプテン、MF中原魁二

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.31 選手権佐賀県予選準決勝 鳥栖高 0-5 佐賀商高 鹿島市陸上競技場]

 予想外だった。3年生が夏で引退した鳥栖高は全選手が下級生。前評判でも佐賀商高が有利と見られていた。しかし、蓋を開けると、気持ちが入り過ぎたが故に思うようなプレーができない。選手たちは浮き足立ち、周りを使う局面でも強引に突破する場面が多く見られた。硬さが目立った佐賀商において、普段通りのプレーを見せていた選手がいる。キャプテンのMF中原魁二(3年=鹿島市立西部中出身)だ。3列目の位置でボールを冷静に捌き、守備でもしっかり身体を寄せてボールを奪い切る。得点が遠い展開でも動じず、前半38分にはボランチの位置からゴール前に顔を出し、FW田雑蓮(3年)のゴールをお膳立てした。

 この先制点でチームを落ち着かせると、後半も攻守で違いを作る。後半17分には右サイドを抜け出したFW原口海斗(3年)の折り返しに合わせ、チームの3点目を奪った。

 1ゴール、1アシストの大活躍。序盤の苦戦を跳ね除けた佐賀商において、中原が示した存在感は抜群だった。そんな中原のプレーぶりに松尾智博監督も賛辞を惜しまない。

「佐賀商の中では技術があり、プレーの判断がしっかりできる選手。精神的にも成長して、きちんとやってくれているので非常に助かる。先制点も中原がバイタルエリアに侵入したところから。あいつがボールを持つと、違いが作り出せる」

 今でこそ絶大の信頼を受けている中原だが、夏までは頼りない一面もあったという。しかし、8月に転機が訪れる。卒業後の進路を決めたからだ。大学でサッカーを続ける選択肢も持っていたが、高校卒業後は一般企業へ就職することを決めた。本気でサッカーに打ち込むのは選手権が最後。逆にその決断が自身の気持ちに火を付けた。

 進路を決めて以降、中原の意識は大きく変わったという。

「大学サッカーと就職で悩んで、本気で没頭するモノが今後なくなるかもしれない。だからこそ、思い残すことがないようにサッカーに取り組みたい」

 今まで以上に部員に声を掛け、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で部活動ができなかった夏場も自主練習を仲間に促すだけではなく、自らも毎日6km以上のランニングで選手権への想いを示してきた。

 迎えた選手権予選は順当にファイナルへ進出。2週間後に迎える大一番では、インターハイの県決勝で敗れた佐賀東と再戦する。負ければ引退――。後が無い状況で挑むが、サッカーを楽しむ心は忘れていない。

「サッカーを本気でやるのは最後。みんなと楽しみながら、最後は勝って終わりたい」

 仲間とボールを追い掛けるためにも、ライバルにリベンジを果たしてみせる。

(取材・文 松尾祐希)

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