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「全国で勝てるチームに」。スタイルを貫く専修大北上は粘る盛岡市立を振り切り、3年連続のファイナルへ!

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専修大北上高は途中出場のMF小原希琉(8番)がダメ押しゴール!

[10.31 選手権岩手県予選準決勝 専修大北上高 3-1 盛岡市立高 いわぎんスタジアム]

 この攻撃的なスタイルで戦うから、意味がある。このアグレッシブな姿勢を貫くから、意味がある。「いろいろな戦い方はあると思うんですけど、自分たちで『これをやろう』と言ってやってきているので、それは徹底してやりたいなとは思いますけどね。これをやり切るから意味があると思いますし、岩手県の中でも魅力のあるチームになれればなと思っています」(専修大北上高・小原昭弘監督)。

 緑の旋風を、全国で再び。31日、第100回全国高校サッカー選手権岩手県予選準決勝は、昨年と同じカードの再現に。専修大北上高盛岡市立高は、FW佐藤裕翔(3年)とFW吉武皇雅(3年)の2トップがそれぞれゴールを奪い、専修大北上が2点をリード。盛岡市立もMF大山青夏(3年)が1点を返したが、終盤に途中出場のMF小原希琉(3年)がダメ押し弾を決めた専修大北上が3-1で競り勝ち、3年連続となるファイナルへと駒を進めている。

 ファーストシュートは前半1分の専修大北上。左サイドをドリブルで運んだMF鳥谷部修平(3年)が自らフィニッシュ。軌道は枠の右へ外れたものの、いきなりチャンスを作り出すと、13分は盛岡市立。ミドルレンジからMF高橋範好(1年)が思い切りよくシュート。ボールは枠を越えるも、お互いに先制点への意欲を前面に押し出す。

 以降はボールこそ専修大北上が持つ時間を多く作りながら、「ピッチの環境も変わって、観客も入るようになったので、ちょっとその雰囲気に焦ってしまった所があって、自分たちの繋ぐサッカーがあまりできていなかったと思います」とキャプテンの吉武も振り返ったように、緻密なアタックは表現しきれず。26分には鳥谷部の左クロスに、ニアで佐藤が合わせたヘディングは枠の右へ。盛岡市立も34分には大山が左サイドで大外に付け、DF菅原圭登(2年)のクロスを高橋が折り返し、FW大久保裕介(3年)はシュートまで持ち込めなかったが、惜しいシーンを創出する。
 
 そんな流れの中で、専修大北上の“らしさ”が炸裂したのは終了間際の40+2分。ルーズボールを収めた佐藤は縦へ。MF阿部翔輝(3年)が落としたボールを、佐藤は再び縦へ。「トラップが乱れたんですけど、最後は身体を張って裕翔に繋げました」という吉武が残したボールを、佐藤は左足でゴールネットへ豪快に突き刺す。3本のダイレクトパスから、流れるようなアタックで華麗に先制。専修大北上が1点をリードして、最初の40分間は終了した。

 後半はアドバンテージを得た専修大北上の勢いが上回る。7分にはボランチのMF鎌田悠正(3年)が右へ展開したボールを、佐藤が中央へ折り返すと、走り込んだ阿部はスルー。待っていた鎌田のシュートはバーを越えるも、スムーズな連携でフィニッシュまで。さらに8分には阿部が、9分には吉武が決定機を掴み、前者は盛岡市立のGK小笠原陸矩(2年)のファインセーブに、後者は左のゴールポストに阻まれるも、続けて漂わせる追加点の香り。

 20分。10番のキャプテンが魅せる。中央でボールを引き出し、前を向いた吉武は「あそこはシュートレンジですし、監督によく『シュートを打っていけ』と言われていたので、とりあえず打っていこうと思いました」と右足一閃。右のポストを叩いたボールは、ゆっくりとゴールネットへ到達する。2-0。点差が開いた。

 折れない盛岡市立。27分。“強肩”発動。右サイドで手にしたスローイン。「元々肩は強かったので、手前のゴールポストぐらいまでは飛ぶと思います」と話すMF川村禅(3年)がロングスローを投げると、抜けてきたボールをMF大山青夏(3年)が右足でゴールへ流し込む。「利き足じゃない方の右足だったので、ビックリしましたし、嬉しかったです」。2-1。たちまち試合はわからなくなる。

「1点獲ってから行ける流れは来ていましたね」(川村)「これは行けるなというふうに思っていました」(大山)。川村の連投に次ぐ連投。「ロングスローがあるので対策はしていたんですけど、思ったより飛んできました」(吉武)。30分。ここも川村の左ロングスローから、こぼれを拾ったDF工藤光介(3年)がシュートを放つも、ここは専修大北上のディフェンスリーダーを務めるDF伊藤羽琉(3年)が果敢に身体でブロックする。

 次の得点が生まれたのは、39分。阿部が丁寧なパスを前方に蹴り出すと、途中出場でピッチに送り込まれたMF小原希琉(3年)は、飛び出してきたGKの位置を見極めながら、冷静にフィニッシュ。ボールはゆっくりと、正確に、ゴールネットへ到達する。

ファイナルスコアは3-1。「2-1になってからはやっぱり怖かったです。3点目を獲れるかなと思っていたんですけど、獲れなかった中で、ああいう失点だったので、やっぱり苦しかったですね」と小原監督も言及した専修大松戸が、それでも粘り強く準決勝を制し、1週間後のファイナルへ駒を進める結果となった。

「県内だとあまりこういうサッカーをしているチームは多くなくて、結構縦に速いロングボールを主体にしているチームが多いので、その中で自分たちはやっぱり繋ぐパスサッカーで、観客の方もやっぱり見ていて凄いなと思ってもらえるようなプレーをできるように、みんなで心掛けています」という吉武の言葉が印象深い。『見ていて凄いなと思ってもらえるようなプレー』。ここが重要なポイントだ。

 自身も盛岡商高2年時に高校選手権へ出場し、準優勝に輝いた武南高(埼玉)とPK戦までもつれ込む激闘をピッチで経験した小原監督は、このスタイルに舵を切った理由をこう明かす。「やっぱり岩手県は良い選手がいっぱい外に出てしまうんですよね。だから、岩手の中に良い選手が残るようなサッカーができればと思って、こういうサッカーをやっているところはあります」。

 この夏のインターハイでは、初戦で前橋育英高(群馬)と対戦したが、1-7という大敗を喫している。「やっぱり上手いだけじゃなくて、戦えるし、走れるし、という意味ではやっぱり『あまり世の中を知らないよね』というところはありましたね。アレが全国のスタンダードであって、そこに少しでも追い付けるようにという意識を持とうというのは、僕らもそうですけど、選手も多分そう感じていると思います」(小原監督)。

「あの負けからチーム全員で、基準をあの前橋育英よりも上というか、そのぐらいにしていかないと全国では勝ち上がれないと思って、練習に臨んできました。特に練習中の声もプラスの声がみんな出てくるようになってきたり、最近は大会前なので円陣を組んでから練習に取り組んだりして、チーム一丸となって戦えていると思います」(佐藤)。

 全国のスタンダードを知り、自らの基準を上げる。「県内の子は全国で勝てるチームに魅力を感じて外に行くので、岩手県で勝っても1-7で大敗しているようでは、魅力を感じないだろうなとは思います」と指揮官。見上げる目標は高い。

 決勝への意気込みを問われると、小原監督の言葉に力がこもる。「とにかく選手たちは一生懸命この3年間、選手権を目指してやってきていますし、今まで努力してきたことが報われるのは、やっぱり結果だと思うので、何としても勝ちたいなというのが一番の想いですね」。

 専修大北上は自分たちらしく、貫いてきたスタイルを出し切る覚悟で、岩手の頂点獲りへ堂々と挑む。

(取材・文 土屋雅史)

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