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[MOM3633]鵬翔FW佐藤颯之介(3年)_興梠慎三の系譜を継ぐ13番が決勝弾!キャプテンマークを巻かない男が示した主将の姿

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鵬翔高の”13番”とキャプテンの重責を担うFW佐藤颯之介

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.3 選手権宮崎県予選準決勝 日章学園高 0-3 鵬翔高 ひなた宮崎県総合運動公園サッカー場]

 渾身の一撃でライバルに引導を渡した。序盤から5バックで守りを固め、守備陣が日章学園高の攻撃をシャットアウト。球際でも厳しく寄せ、堅守速攻をベースとした試合運びは100点に近い内容だった。とはいえ、何が起こるか分からない。実際にインターハイ予選の準決勝では我慢強く戦いながら、日章学園に先制点を許し、鵬翔高は最後まで追い付けなかった。

 同じ轍を踏むわけにはいかない――。懸命に守ってくれている仲間のためにも、自分がゴールを奪わないといけなかった。

 歓喜の瞬間が訪れたのは前半26分。自身に訪れたファーストチャンスだった。序盤から攻撃の起点になっていたFW佐藤颯之介(3年=セントラルFC出身)は左サイドでMF宮田理央(3年)のパスを受け、ドリブルでゴール前に侵入。得意のカットインで中に割って入ると、右足でネットを揺らした。

 待ちに待った先制点。「佐藤が決めてくれたので絶対に点を与えない」(DF新竹優生・3年)。エースのゴールが守備陣のモチベーションをさらに高め、その後の試合運びに大きな影響を与えた。

 試合の流れを決める得点を決めた佐藤は、鵬翔と関係が深いセントラルFCの出身。小学校時代から先輩たちの姿を見てきたし、もちろん全国優勝したチームもテレビで見た。

「自分も鵬翔のユニホームを着て日本一になりたい」。

 その一心で鵬翔に入学し、1年次からレギュラーとして活躍。迎えた3年次には興梠慎三(浦和レッズ)や増田誓志(元鹿島アントラーズほか)などが背負ってきた伝統のエースナンバーでもある“13番”だけではなく、キャプテンも任された。

 覚悟を持って高校ラストイヤーをスタートさせたが、夏のインターハイ予選は準決勝で日章学園に0-1で敗北。またしてもライバルに敗れ、「結果が出ず、エースとキャプテンを務めるのは自分に合っていない。そう思ってしまい、悩んでいた」(佐藤)。

 しかし、ここで立ち止まっているわけにはいかなかった。小学生の時に見た、先輩たちの光景は今も脳裏に焼き付いている。責任を背負う意味をもう一度考え、再び走り出した。

 その結果、見事に準決勝で決勝弾。4月にオンラインで鵬翔出身のプロサッカー選手たちと交流する機会が設けられた際、興梠から助言された「常にゴールを取る選手でないと上にいけない。FWの選手はゴールを取って評価される」という言葉通りの活躍で、キャプテンとしてもエースとしても重責を果たした。

 周囲からプレーでそうだと分かるようになって欲しいという理由から、チームの伝統としてキャプテンは腕章を巻かない決まりがある。春先は頼りない部分もあったが、今は誰よりも声を出し、ここ一番でゴールを奪える選手になった。

「彼は1年生から試合に出ている。色んな思いを込めてプレーしないといけないので、決めてくれて良かったです」(上永智宏監督)。

 誰が見てもキャプテンと分かる存在になったエースの活躍なくして、5年ぶりの選手権出場は成し遂げられない。決勝でも裏抜けとカットインを武器に、チームを勝利に導くゴールを奪う。

(取材・文 松尾祐希)
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