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自分たちのフットボールと伝統の強さ。両方を表現した滝川二が神戸弘陵の3連覇阻止!:兵庫

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前半8分、先制点を決めた滝川二高FW相原禎汰がガッツポーズ

[11.3 選手権兵庫県予選準決勝 滝川二高 2-1 神戸弘陵高 三木陸上]

 新たな自分たちのフットボールと伝統の強さ、両面を表現した滝川二が全国王手――。第100回全国高校サッカー選手権兵庫県予選は3日、準決勝を行い、21回目の全国出場を狙う滝川二高と3連覇を目指す神戸弘陵高が激突。滝川二が2-1で好勝負を制し、決勝(対相生学院高、7日)進出を決めた。

 滝川二は試合を通してポジショナルプレーと自陣ゴールエリアからのダイレクトを交えたパス交換、ドリブルによるビルドアップにチャレンジ。神戸弘陵の強烈なプレッシングによって高い位置でロストするシーンもゼロではなかった。

 それでも、就任2年目の亀谷誠監督は「練習というのは試合のためにやっているので、試合になって怖くてやらなかったら練習やっている意味ないでしょうと。その部分を表現するのが僕らのフットボール」。自分たちのフットボールでゴールを目指し、スタンドを沸かせる一方、名門校は勝利への強い姿勢も示していた。

 後半は思い通りに表現できずに我慢の時間が続いたことは確か。それでも、「怯まず 驕らず 溌剌と」(ひるまず おごらず はつらつと)のモットー、伝統の強さを体現するような戦いで凌ぎ、神戸弘陵の連覇を止めた。

 立ち上がり、神戸弘陵が出足良く試合をスタート。だが、滝川二は8分、自陣で相手のクリアボールを胸コントロールしたCB黒田蒼介(3年)が右サイドへ斜めのパスを通す。この日、再三相手DFをかわし続けていたエースMF藤田仁朗(3年)がMF元津潤哉(3年)とのワンツー、さらに個人技でDF2、3人を剥がしてDFライン背後へ左足クロス。相手CBの後方へ飛び出したFW相原禎汰(3年)がダイビングヘッドで決めて先制した。

 ホットラインによるファーストシュートで得点した滝川二は前半、守備でも距離感とタイミングの良い寄せでボール奪取を連発。加えて、CB島田爽吾(3年)が自陣ゴール前へのボールをことごとくクリアし、GK多田健司(3年)が安定したキャッチングを続けていた。

 そして、マイボールに変えると、GK、DFラインから勇気を持って相手のプレスを剥がしに行き、長身で柔らかいMF神谷友騰(2年)やMF倉内晴久(3年)を経由する形で前進。また、個で違いを示していた藤田は相手の守備網を幾度も突破して2本のドリブルシュートや、ラストパスまで持ち込む。22分には、藤田の左クロスから元津が決定的なヘッド。続けざまに相原が狙うなど追加点の好機を作った。

 一方、怪我でFW松隈弘樹(3年)を欠く神戸弘陵は左SBとしても注目の吉村瑠晟(3年)をFW起用。前半半ば頃からMF谷倫太朗(2年)の虚を突くパスやサイドを活用した攻撃が増え、10番MF田中祉同(3年)と吉村が怖さのある動きを見せていた。だが、守備で後手に回り、終了間際に右ショートコーナーからCB鞘本嶺(3年)の放ったヘッドは左ポストを直撃。0-1のまま前半を終えた。

 神戸弘陵は後半開始から吉村に代えてFW竹内悠真(3年)を投入し、竹内を起点とした攻撃。谷純一監督が「守備が良くなってゴールに向かうようになった」という後半は神戸弘陵がペースを握り返す。前半と変わらず徹底してボールを繋いでくる滝川二にバイタルエリアまでは運ばれても、そこから先には行かせず。CB田中百々輝(3年)や鞘本、MF横井愛弥(3年)、GK吉田宇良(3年)の好守もあった。

 そして、20分には右アーリークロスが竹内に通るが、滝川二GK多田健司(3年)が至近距離からのシュートをストップ。それでも神戸弘陵は押し込み、サイドアタックを続ける。一方、足を攣らせる選手の増えた滝川二は我慢の展開。だが、「『怯まず 驕らず 溌剌と』、という滝二のモットーがあるので。試合中、自分結構掲げられていたその横断幕を見ながらゲームをしていました」という相原や、田中祉封じを期待された右SB黒井海舟(3年)ら各選手が踏ん張り、シュートを打たせない。

 迎えた36分、滝川二はエースがビッグプレー。相手CBの死角からプレスを掛けた藤田がインターセプトし、一気に独走する。そして、GKに倒されて獲得したPKを自ら右足で決め、2-0とした。

 それでも、神戸弘陵が連覇への執念を見せる。40分、左SB鳥羽悠生(3年)のクロスを竹内が頭で決めて1点差。さらに右サイドを切り崩し、MF松久保翔(3年)が右足で狙うなどゴールへ迫ったが、滝川二が守り切った。
 
 滝川二は80年代後半から兵庫を代表する存在となり、全国大会でも06年度全日本ユース選手権優勝、10年度全国高校選手権優勝などの輝かしい成績を残している。また3度のワールドカップに出場したFW岡崎慎司(カルタヘナ)ら数々のプロ選手を輩出しているが、18年以降は負けられないという重圧を乗り越えることができず全国出場無し。昨春から第1期生のOBで鹿島のアカデミー監督やスカウトなどを歴任してきた亀谷監督の下、新たなスタートを切っている。

 今年はインターハイ予選で5回戦敗退。それでも、対戦相手によって一試合一試合ボールの動かし方を変えるなど指揮官からの細かな要求を受ける中、選手たちも失敗を繰り返しながら対応力を身に付けてきた。

 そして、この日は1年前に逆転負けしている宿敵相手にも怯まずに滝二の戦い方を徹底。藤田は「弘陵相手でビビって蹴っていたら今までと何も変わらないので、絶対に自分たちが普段練習していることを表現しようということで全員が自信を持ってできたと思います。弘陵相手でも自分たちのサッカーが通用することが証明できたんじゃないかと思います」と胸を張った。

 亀谷監督は低下した後半の内容について指摘していたものの、全国大会に出てさらに成長すること、Bチームの選手たちに新たなチャンスを与えることに繋がる勝利ができたことを評価。決勝では選手たちとともに、この日以上のサッカーを披露することを目指していく。

「それ(常に滝川二のフットボール)を見せることで、このフットボールをしたいと思って(中学生たちが)来てくれると思うので、それが復活のサイクルに入ってくるきっかけになるんじゃないかと思っている。(今日は)我々の理念のフットボールはこうだよと見てもらったと思う。全国に行くとより見てもらえると思うので」。ライバルを突破したが慢心はない。藤田は「(決勝でも)自分たちのサッカーを最後まですること。僕たちは弘陵に勝つんじゃなくて、全国で自分たちのサッカーをすることが目標なので、次も自分たちのサッカーをして全国を決めたいなと思っています」。決勝でも自分たちらしく戦い、勝って、全国で「強くて、魅力のある滝二」を示す。

(取材・文 吉田太郎)
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