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雪辱果たした近大和歌山が12年ぶり県制覇! 初芝橋本指揮官も「素晴らしかった」と称賛、課題消化して冬の大舞台へ

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県制覇を果たした近大和歌山

[11.13 選手権和歌山県予選決勝 初芝橋本高 1-3 近大和歌山高 紀三井寺陸上競技場]

 11月13日、第100回全国高等学校サッカー選手権大会和歌山大会の決勝戦が紀三井寺陸上競技場で行われた。決勝戦まで勝ち進んできたのは、昨年の王者で今夏も制した初芝橋本高と前回大会準優勝の近大和歌山高。第99回大会と同じ顔合わせとなった。

 今大会は、感染症対策を万全にとりながら、観客を入れて開催。出場チームの部員や保護者だけでなく、クラスメイトや他校の選手たち、地元の中学生や小学生、出場チームのOBなども試合を観戦することができた。1200人の温かく大きな拍手に迎えられ、両校の選手たちは準備してもらった最高の舞台に胸を張って入場した。

 キックオフ直後から攻守の切り替わりが早い白熱したゲームとなる中、先制したのは近大和歌山。5分、ゴール前で迎えたピンチから一転、カウンター。一旦は弾き返されたものの、ゴール前中央でボールを収めたMF北藤廉(3年)からのパスを右サイドで受けたMF田井寛務(3年)が相手DFの前で一度切り返し、左足一閃。ネットに鋭く突き刺し、先制点を奪った。

 初芝橋本は、キック精度の高いMF坂口歩夢(3年)のセットプレーやFW朝野夏輝(1年)の突破などでチャンスを作るが、得点に繋げることができない。MF大月志浩(3年)のシュートはバーを叩き、朝野のヘディングシュートもGK後迫海吏(3年)が阻止。近大和歌山が1点をリードして試合を折り返した。

 拮抗したゲームが続く中、後半15分にスローインのチャンスを得た近大和歌山。MF畑下葵(2年)のロングスローは、ニアサイドに密集した選手たちの頭上を越え、ちょうど落下してきた位置に飛び込んできたDF荒木宏心(3年)がダイレクトで右足を合わせてゴールに叩き込み、リードを広げた。

 2点を追う苦しい展開となった初芝橋本だが、諦めずにゴールに向かう。後半27分に、こぼれたボールをピッチ中央で拾ったFW酒谷圭太(3年)が前線へと走り出していたMF宗像喜春(3年)にパス。宗像がドリブルで運んだ後に出したクロスを朝野が滑り込みながらも足を合わせて、ゴール。点差を1点に縮めた初芝橋本は覇気を取り戻し、さらに得点を奪いに行く。

 しかしながら、近大和歌山も相手に気圧されることなく落ち着いて試合を運び、後半36分には相手の攻撃をDF澤一翔(3年)がクリアし、そのボールを受け取ったFW藤木皇成(3年)が相手DFをかわし、そのままゴール前へ。冷静な判断でGKの頭上を越すループシュートを決め、3点目。再び初芝橋本を突き放し、3-1で試合終了。近大和歌山が第88回大会以来となる優勝を掴み取った。

 初芝橋本の阪中義博監督は、この試合を振り返り「迷いも生じ、中途半端な試合になった」とチームの持てる力をすべて発揮しきれなかった無念さに肩を落としながらも、阪中監督が指揮を執ってきた12年間のうちで対戦した近大和歌山の「どの時のチームよりも、今年のチームは素晴らしかったと感じている」と称賛した。初芝橋本は、今年のチームに残されたプリンスリーグ関西の3試合を大切に戦っていく。

 昨年のリベンジマッチだった近大和歌山だが、2点目を決めた主将の荒木は「リベンジだということを試合前から強く意識してはいなかった。今日は、自分たちがやってきたことを出して勝とうと話していた」という。今年1年積み重ねてきたことを選手それぞれが発揮した「結果として、リベンジという形になった」。

 優勝したことを素直に「うれしい」と語った選手たちだが、試合内容に満足はしていない。「ビルドアップも練習してきていたけれど、バタついてしまった時間もあった」(藤木)し、「パスの成功率もあまり良くなかった」(荒木)。

 藪真啓監督もまた、「相手の方がセカンドボールの回収率が高い時間帯もあったので、ただ蹴るだけになってしまう苦しい時間も作ってしまった」と振り返る。今年の近大和歌山は、180cmを超える選手が複数人いたことでロングボールを多用していた昨年までとは違い、サイドからの素早い仕掛けとパスを繋げることを強みとして磨き上げてきた。そのため、「もう少し相手陣内でパスを繋ぐこともできたかな、と感じている」というが、「選手たちが積み重ねてきたことを思い切ってやってくれた」ことで優勝を掴むことができた。

 この決勝でそれぞれが感じた“もっとこうしたかった”を「全国ではきちんと出せるよう、また積み重ねていく」(荒木)。近大和歌山にとっては、12大会ぶりの冬の舞台。ようやくたどり着いた場所でもこれまでと変わることなく、信じてやってきたことを気負うことなく存分に発揮したい。

(取材・文 前田カオリ)

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