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[MOM3680]西武台DF安木颯汰(3年)_レギュラー抜擢の理由は「バスケが上手かったから」。ムードメーカーの左SBが頭で全国決定弾!

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決勝ゴールを挙げた西武台高DF安木颯汰(中央)はチームメイトと笑顔

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.14 選手権埼玉県予選決勝 浦和南高 0-1(延長) 西武台高]

「安木をレギュラーにしたのは、バスケットが上手かったからなんですよ」。守屋保監督はそう言って、笑顔を浮かべる。その言葉を伝え聞いた本人は「運動神経は悪い方ではないと思うんですけど、どのスポーツも好きなので、楽しくやっています。バスケは得意でもないですけど、バスケもドリブルがあって、サッカーでもドリブルが好きなので、ドリブルは好きですかね(笑)」とイマイチピンと来ていない様子。それぐらいがちょうどいいのかもしれない。

 西武台高のムードメーカーにして、著しい成長を遂げてきた左サイドバック。DF安木颯汰(3年=Forza'02出身)の延長で奪った決勝ゴールが、チームにとって11年ぶりの全国大会出場を引き寄せた。

 前半からアグレッシブな姿勢は目立っていた。左サイドを駆け上がり、果敢にクロスを上げたかと思えば、セットプレーのキッカーとして、正確なボールをゴール前に供給する。「もともと相手はサイドに振ると弱いというのは分析であったので、自分のところからアシストやゴールは狙いたいなと思っていました」。虎視眈々とその時を狙い続ける。

 延長後半7分。タイミングは、やってきた。右サイドでDF原田蓮斗(3年)がスローインを素早く始めると、MF丸山実紀(3年)が正確なクロスを放り込む。「自分もほぼ後ろの武笠(隼季)にディフェンスは任せていて、原田からでも丸山からでも、右からクロスが上がってきたら飛び込む位置には毎回走り込んではいるので、自分は押し込むだけでした」。突っ込んだ安木のヘディングは、ワンバウンドしながらゴールネットへ吸い込まれる。

「ちょっとキーパーが触るのは見えて。でも、ネットが揺れた瞬間はもう嬉し過ぎて、何かよくわからないけど、とりあえず走りました」。スタンドで応援してくれていた仲間の元へ全力で駆け寄る。土壇場での先制弾は、そのまま勝利を手繰り寄せる決勝ゴール。アグレッシブな左サイドバックのヘディングが、西武台を憧れの晴れ舞台へと導いた。

 試合後。安木のゴールについて聞かれた守屋保監督は、笑いながらこう明かす。「安木をレギュラーにしたのは、バスケットが上手かったからなんですよ。自分が体育の授業で1,2年生の時に見ていたので、『この子をどこかで使えないかな』と。リバウンドを獲るのが上手くて、そういうところに入っていくのが非常に上手で、『この子の身体能力やボールの感覚はウチの中では優れているな』と思ったんです」。

 新チームになっても、最初はレギュラーではなかったが、ポジション争いをしていたライバルのケガもあり、「『声も出る』『前向きなことしか考えない』ということで今年の4月から試合に使ったら、関東大会でも良いパフォーマンスをしてしまって、関東大会の優秀選手になって、ノリノリになってしまったという状況です」と指揮官。チャンスをしっかりとモノにして、チームに確固たる居場所を築いたという。

 よく出る声。前向きな姿勢。ヘディング。このストロングポイントは、中学時代に所属していたForza‘02で培ったものだという。「中学時代は『常にポジティブな声を出せ』と言われていたので、そこで自分はそういう声を出しているつもりですし、身長が低い分だけ弱そうに見えると思うんですけど、中学校のチームがヘディングの練習をするチームだったので、ヘディングには自信があります」。もともと十分なエネルギーは有していた。その出しどころをチームも理解し、自身も理解したことが、今の躍動に繋がっている。

 タイムアップの瞬間。ピッチに突っ伏して、涙を流す姿が印象的だった。「小学生の頃に『自分が高校3年生の時の選手権が100回大会だ!』って気付いて、それに向けて中学時代も頑張って、高校は西武台に決めたので、去年は結構悔しい想いをしたんですけど、全国を決められて良かったです。この100回大会に自分が出るからには、チームメイトに頼りながら、後輩の力も借りながら、自分にできることを精一杯やるだけです」。憧れ続けてきた選手権の、しかも節目の100回大会に出場できることへの喜びを滲ませつつ、最後に西武台を選んだ理由を本音で語った会話も秀逸だ。

「サッカーが強いのはもちろんなんですけど、結構家が近いというのは大きくて、自転車で通える距離ということも含めて西武台を選んだのかなと。6割ぐらいはそうかもしれないです(笑)。でも、本当に西武台を選んで良かったです!」。

 飾らない性格は、チームにとっても大切な潤滑油になっている。今や西武台に欠かせないキーマン。ピッチ内では全力でファイトし、ピッチ外でも全力で今を楽しむ。安木はきっと、それぐらいがちょうどいいのかもしれない。

(取材・文 土屋雅史)

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