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県3部リーグから“戦国”愛知の頂点に! グランパス元守護神が率いる中部大一は、初の選手権で波乱を巻き起こす

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中部大一高が愛知を制す

[11.14 選手権愛知県予選決勝 名古屋高 0-1 中部大一高 港サッカー場]

 第100回全国高校サッカー選手権愛知県予選の決勝が14日に行われ、名古屋高中部大一高が対戦。後半3分に奪ったFW中嶋晃成(2年)のゴールを守り切った中部大一が1-0で勝利し、選手権初出場を手にした。

 2017年以来、毎年代表校が入れ替わり、群雄割拠の様相を呈している愛知県とはいえ、県3部リーグの中部大一が頂点に立つと予想していた人は少なかったに違いない。5月のインターハイ予選は、初戦となった2回戦で敗退している。Jリーグ創設時の名古屋グランパスで守護神を務めた伊藤裕二監督も、選手に「県大会にすら出られないぞ」とハッパを掛けていた程だ。だが、2回戦で一昨年の代表校である愛工大名電高を2-0で下すと、そこからは県1部リーグのチームに3連勝し、決勝まで駆け上がった。

 迎えた決勝は、同じく初出場を狙う名古屋高。3年生には中学時代、県トレだった選手が一人もいない中部大一に対し、名古屋は県内でも実力者が揃うと評判のチームだ。力の差は歴然で、「今日はどんどんボールを入れられるのは分かっていた」(伊藤監督)という。

 名古屋の攻撃は明確で、「良い場所でセットプレーを獲り、そこからゴールを狙っていた」(山田武久監督)。ボールを持ったら、前線のターゲット役であるFW今泉陸(3年)や、DFはぜ真輝(3年/はぜは米へんに慮)と樽澤諒(2年)の両ウイングバックへと展開。彼らの力強いプレーでセットプレーを奪って、中部大一を押し込んだ。中部大一としては、ただクリアをすると、セカンドボールを拾われ、二次攻撃、三次攻撃を受けてしまうため、前がかりとなった相手のウイングバックの背後にクリアボールを入れる事で凌いでいった。

 PA内で持たれても、守備の要であるDF北村昌樹(3年)を中心に全員が集中力を切らさず、相手に自由を与えない。前半25分には、左ロングスローのこぼれから、DF大森裕太(3年)にシュートを打たれたが、DFがブロック。34分には、左でのスローインをMF小林朝陽(2年)がゴール前に落とし、MF谷澤春斗(3年)が抜け出したが、GK下村駿季(2年)がタイミングよく前に出て、防いだ。その堅守ぶりは、敵将である山田監督が「相手はGKも含めて、守備が素晴らしかった」と試合後に賞賛する程だった。

 縦に速い名古屋に付き合う形になったため、理想とする攻撃は出来なかったが中部大一の選手は意に介さない。「前半は結構やられていたけど、僕らは『前半に1点も入れられなかった』とポジティブに考えていた。だから、後半からもっと行ってやるぞ!という気持ちが出せた」と話すのは、主将のMF大嶽匠矢(3年)だ。

 中部大一は後半開始と共にギアを入れ、開始30秒には大嶽が左クロス。ファーに流れたボールから、MF利田敬介(2年)がこの日1本目シュートを放った。2本目のシュートは後半4分。右サイドでこぼれ球を拾った利田がカットインから、DF裏にスルーパスを入れると、中嶋がいち早く反応。前に出たGKの右隅を冷静に突いて、均衡を崩した。

 先制してからも名古屋に押し込まれる時間帯はあったが、落ち着いた守備対応を見せ、前半とは違いシュートまで持ち込ませない。反対に29分には、右サイドからFW早河恭哉(3年)がクリアしたボールが反対サイドに渡り、フリーのMF井川愛騎(3年)へ。そこからゴール前に入れて、中嶋がシュートを打つなど、耐えるだけでなく自分たちの見せ場も作って、試合終了を迎えた。

 全国大会に名を連ねるのは、名だたる強豪ばかり。予選以上に苦しい試合になるのは確かだが、選手全員は覚悟ができている。「僕らより弱いチームは、どこにもいない。愛知県大会でもやってきた走りで1試合でも多く勝てればなと思います」。そう話すのは、大嶽だ。「サッカーは何が起こるか分からないスポーツ」と続けるのは井川で、実際に予選では言葉通り、波乱を巻き起こしてきた。この日の試合を観ていると、中部大一が全国を驚かせても不思議ではないと思える内容だった。

(取材・文 森田将義)
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