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[MOM3683]西原DF重田統哉(3年)_“即時奪回”を統べる男、31年ぶり沖縄制覇に導く先制弾

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西原高DF重田統哉(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.13 選手権沖縄県予選決勝 西原高 2-0 宜野湾高 黄金森公園陸上競技場]

「たった2チームしか立つことにできない憧れの決勝の舞台。そこに立ちたくて、自分は西原を選びました」。

 そう話すのはセンターバックの一角を担う西原高DF重田統哉(3年)。身長171cmの上背をカバーする危機察知能力で相手のパスコースを切り、左足から繰り出す前向きなパスでビルドアップを図る。またプレースキッカーとしてのスキルを兼ね備え、今大会の準々決勝・那覇高戦(○4-1)では直接FKも蹴った。チームの根幹を担う欠かせない選手だ。

 彼は2018年の中学3年のとき、西原と那覇西高による選手権決勝を現地で観戦していた。「ボール支配率を高める那覇西のパスサッカーに対し、縦に速いサッカーをする西原のスタイルを見たとき、自分は西原が好きだなって感じました」。

 ボールを奪ったときのチーム全体がゴールに向かう姿勢。それが点に結びついたときの爽快感。肌で感じたその記憶が離れられない重田は、惹かれた西原のサッカーに触れたい一心で那覇市の家から自転車通学する道を選んだ。

「今までの県大会は那覇西がいつも勝っている印象。その流れを自分たちで崩したい」。沖縄高校サッカー界の潮流を変えるべく「打倒・那覇西」を胸にした重田は2年生のとき、早速そのチャンスが巡ってくる。昨年の第99回大会県予選。決勝にコマを進めた西原は、那覇西との2年前のリベンジマッチの機会を得た。

 このとき西原は2年生中心のメンバーで、重田はセンターバックでスタメン出場。人数をかけた守備でボールを奪えば、縦に鋭い攻撃に転じる西原のサッカーを随所に展開。先制点を奪われたものの、前半終了間際には重田のコーナーキックからMF西平将智(当時3年)がボレーで同点とし、そのつばぜり合いに会場が沸いた。しかし後半になっても相手のパワーとスピードは途切れず、徐々に疲弊し足が止まる西原はその後2失点を喫し、1-3で敗戦。30年ぶりの戴冠とはならなかった。

 選手権終了後、悔しい記憶を力に変えるべくすぐさまミーティングを開いた選手たち。「自分たちがやりたいサッカーは何なのかというのをあらためて話し合いました。この年代は走れる選手もいますし、縦に速い選手もたくさんいる。でもそのポテンシャルを出し切れているのか。そこを求めていこうということを話し合いました」(重田)。

 入学した頃から1kmの距離を3分で走り切り、それを5回繰り返すトレーニングを毎週必ず行ってきた。地獄という言葉も出てくるほど追い込まれた練習を積み上げてきたことで、体力と気力はどこにも負けない自信もあった。相手よりも走ることが勝つために絶対に必要。走りを止めたら西原のサッカーは追求できないと仲間同士が固く信じあったことで絆も生まれ、とにかくひたすらに走り続けた。

 それでも新人戦は浦添に、インターハイは那覇にそれぞれベスト8で敗れるという苦杯をなめた。「何故なんだ」という言葉も脳裏に浮かぶ。しかし、ここで感情論で済ますのでなく、冷静になって良し悪しを分析することの大切さを知り、それがバージョンアップに進むきっかけとなった。

「自分たちは新人戦もインターハイも縦に速いサッカーを意識してサイドから早めにクロスを入れたり、相手よりも前で触って点を決めるといった考え方でやっていました。でも、相手のレベルが高くなるに連れてそのサッカーが通じなくなっているなということを実感しました。ならばどうするのかということを考えたとき、自分たちだったら何をされたら嫌だなって思うかを逆算して、前からハメる守備を仕掛け続けて相手の自由を奪おうという考えが生まれました」(重田)。

 縦に速いサッカーを演じようとも、ゴールまでの距離が遠ければ遠いほど点を奪える可能性は低くなる。また、このサッカーを演じる上で大事になるのは相手に追いつかれないことにあるが、ボールを奪ったあとに「よーいドン」でスタートすれば相手の走力によって潰される可能性も出てくる。

 だからこそ、自陣付近でボールを奪ってから切り替えるのではなく、相手のDFラインとGKの間の広大なスペースに入り込む狙いを定めながらハイプレスを仕掛け、奪った直後に裏へ走り込んでいる選手へと送りサイド攻撃を完遂させる。なおかつボールを奪われ相手が前向きになった瞬間も、チャンスだと捉えてすぐに囲んで奪い返し、ショートカウンターにつなげることで相手に脅威を与え続け主導権を握る「即時奪回」の思考が芽生えた。

 もちろん、それは玉城真哉監督の助言があってこそだが、今まで以上に高い強度で攻守に走り続ける運動量と覚悟が必要となるという指揮官の説明に対しても、選手の決心は揺るぐことなかった。またコロナ禍によって緊急事態宣言時の部活動禁止によりボールが蹴れない悪条件を体力アップの期間として利用し、徹底的に走り続けたことで西原のニュースタイルを作り出した。

 向かえた今大会。西原は先制点を奪うことで試合を優位に進めると2点目、3点目と奪いにかかる力強さも見せ、決勝までの4試合で総得点30をあげる超攻撃型へと変貌。決勝戦の宜野湾戦でも昨年のリベンジを図るべく緊張を感じさせない躍動する姿を見せた。

 そして前半18分、重田の先制弾が生まれる。DFラインを高く保ちながら相手のビルドアップを読みパスカットした彼は「宜野湾のDFラインとボランチの間が空いていた」と状況を冷静に判断。オーバーラップを仕掛けてバイタルエリアに到達した瞬間、「シュートだけしかイメージしていませんでした」と躊躇することなく振り切った左足で右隅のネットを揺らしてみせた。

「バイタルエリアで前を向けたら自分たちが有利になる。そこを活かそうという思いをみんなで共有できたからこそ得点が生まれたと思います」。そう話した重田は、スペースを広げたFW座覇駿とMF呉屋彰乙(ともに3年)の前線の動きに感謝した。

 後半に入り、2点差を追う宜野湾の猛攻を受ける展開となったが「試合を積み重ねてきたことで宜野湾のやりたい動きはわかっていた」と、慌てず冷静に相手の動きを読み切ってボールをカットし続けた重田。そして西原の31年ぶりの優勝を告げる笛が鳴ると、彼は「ここがゴールではない」という立ちふるまいで表情を崩さず、次なるステージに目線を向けた。

「去年の選手権で準優勝させてもらったことで『今年は期待しているぞ』という声も多く耳に入っていたなか、新人戦とインターハイで納得のいく結果を残せませんでした。この最後の大会で絶対優勝するぞという思いでしたし、それが実現できたいま、行くところまで行くぞという思いです」。そう話す重田は「西原に来てよかった」とハニカム高校生らしさを見せながらも、西原の縦に速いサッカーを全国に知らしめるべく静かに闘争心を燃やし、来る大舞台へ立つ準備を整える。

(取材・文 仲本兼進)
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