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10年前、地元に勇気与える初の4強。尚志は第100回選手権で「福島県の歴史を変えられたら良い」

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最注目CBチェイス・アンリ擁する尚志高は対戦校の思いも背負って日本一へ

[12.29 選手権1回戦 尚志高 0-0(PK4-3)瀬戸内高 柏の葉]

 第100回選手権をチームにとって、福島県にとって特別な大会にする。尚志高(福島)は1回戦屈指の好カードとなった瀬戸内高(広島)戦をPK戦の末に勝利。4-3-3と3-4-3を使い分ける瀬戸内高の質の高いパスワークに主導権を握られる時間もあった。

 尚志は後半、メンバーを積極的に入れ替えながらペースアップ。怪我人を複数抱える瀬戸内の運動量、質が低下したこともあり、流れは尚志へ傾いた。高い位置でボールを奪い返し、相手DFライン背後への仕掛けを連発。シュート数を前半の2本から後半は9本へと大きく伸ばした。

 だが、仲村浩二監督が「決定力というところで全然」と振り返ったように、ゴール前の精度が課題に。後半20分に交代出場MF草野太貴(3年)の縦突破から交代出場MF松本勇斗主将(3年)が迎えた決定機はシュートが右へ外れ、終了間際にFW村上力己(3年)と松本が放った決定的な一撃は、いずれも相手GK大木泰季(2年)のファインセーブに阻まれた。

 苦しい戦いだったが、それでも交代出場GK布川陽大(2年)の活躍に寄って選手権で2大会連続、今年もインターハイ、プレミアリーグプレーオフで涙を呑んでいるPK戦で勝利。仲村監督は「ここを乗り越えたのは本当に大きい」と微笑んでいた。
 
 尚志は10年前の第90回大会で震災からの復興・復旧を目指す福島県に勇気と希望を与えるベスト4初進出。福島県の高校サッカー史に大きな1ページを刻んだ。それから10年間、18年度選手権での2度目の準決勝進出や19年インターハイ3位、連続でのプロ選手輩出など“福島の星”は、全国的にも名を広めてきた。チームは最注目CBチェイス・アンリ(3年)を擁し、攻守にバランスの取れている今大会、新たな一歩を踏み出す意気込みだ。

 尚志にとって選手権は特別な大会だ。仲村監督の習志野高(千葉)時代の恩師でもある小室雅弘コーチが、選手時代の第50回選手権で日本一。仲村監督も第68、69回の選手権に選手として出場している。仲村監督は「スタッフも含めてこの選手権で成長させてもらった。この100回大会で福島県の歴史を変えられたら良い」。難関を全員の力で乗り越えた尚志が、一つ一つ白星を積み重ねて初優勝を果たし、福島の歴史を変える。

(取材・文 吉田太郎)

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