[12.29 選手権1回戦 静岡学園高 5-0 徳島商高 フクアリ]

　相手も十二分に警戒していた。静岡学園高(静岡)のMF古川陽介(3年、磐田内定)がボールを持つたびに2人、3人と寄せに来る。それでも技巧派軍団の10番を背負う超絶ドリブラーは軽やかにかわしていった。

　大量5得点のゴールラッシュの中でも最も観客がどよめいたのは後半11分の4点目だった。古川が対峙する相手2人をいなしながら横パス。MF玄理吾(3年、徳島内定)とのワンツーでPA内に進入すると、左足裏でボールを転がし、寄せてきた相手の逆を突く。ゴール前で完全にフリーとなり、右足でゴールネットに突き刺した。

「ドリブルだけで進入していくのは警戒されていると思うし、ワンツーで入っていくのも得意な形にしている。玄に付けたときに、前を向いて空いているところに走ったら、うまい形で出してくれた。冷静に相手を見てキックフェイントというか、得意な形でかわして、いいコースに蹴れてよかったと思う」

　チームの4点目をマークした古川は後半17分にもMF荒井駿希(3年)のゴールをアシスト。1得点1アシストで5発発進に貢献した。それでも本人は「チームとしても個人としても、もっとこだわれる部分がたくさんあった。この大会を通してもっと成長できるなと実感している」と貪欲に話す。

「前半の左足のシュートがミートしなかったり、クロスだったり、相手の足にドリブルが当たってしまうシーンもあった。自分の中では納得していない」。初戦の緊張やエースとしての気負いもあった。試合後、スタンドに挨拶に行くと、静岡学園OBのMF松村優太(鹿島)に声をかけられたという。

「観客席に松村優太さんが来てくれていて、『もっとリラックスしていいよ』と言ってくれた。学園にいたときはあまり関わりがなかったのに声をかけてくれてすごくうれしかった」。2年前、全国制覇を成し遂げた先輩からの温かい声に少し肩の荷が下りたのか、古川の表情にも自然と笑みが広がっていた。

(取材・文　西山紘平)

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