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「昌平戦を忘れるな」…当時を知る林晴己と中山が2Gの高川学園、総体4強の星稜に打ち勝つ

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高川学園高が攻撃力を見せつけて大量4得点(写真協力=高校サッカー年鑑)

[12.29 選手権1回戦 星稜高 2-4 高川学園高 ニッパツ]

 第100回全国高校サッカー選手権1回戦、ニッパツ三ツ沢球技場での第2試合は、壮絶な点の取り合いの末、高川学園高(山口)が星稜高(石川)を4-2で下し、2回戦に駒を進めた。

 両校合わせて6ゴールが生まれた一戦、最初の得点はトリッキーなセットプレーから生まれた。前半8分、高川学園は敵陣右サイドでFKを獲得。ゴール前で待ち構える高川学園の5選手が、手をつないで円陣をつくり、反時計まわりにステップを踏む。円陣を散開し、それぞれがゴール前に突進するタイミングで、キッカーのMF北健志郎(3年)がゴール前へ。MF林晴己(3年)が頭で合わせた。

 この異質なセットプレーは、選手たちで考えたものだと江本孝監督は言う。「点をとるのは一番うれしいこと。自分たちの考えを持って点をとるのが、成長につながると思っています。点をとりやすいセットプレーで発揮してくれたのはよかったです」。一方で、早めに先制点をとれたことで、「相手(星稜)のパワーがどんどん出てきた」と指揮官は試合を振り返る。

 星稜はMF河合伸悟(3年)のロングスローでチャンスを構築。自慢のサイド攻撃も機能しはじめ、左のMF前田一勇(3年)がスピードを活かした突破を仕掛けていった。前半38分には、右サイドでMF戸川期雄(3年)が相手2選手をドリブルではがして、ゴール前に送る。FW山崎陸成(3年)に当たってこぼれたところを、河合が蹴り込み、試合は振り出しに戻った。

 1-1の同点のまま後半に入り、次にスコアを動かしたのは、高川学園だった。突破を試みたMF桑原豪(3年)が、ペナルティエリア内で倒されてPKを獲得。これをFW中山桂吾(3年)が真ん中に蹴り込んで、二度目のリードを奪う。

 追いかける展開を再び強いられた星稜に追い打ちをかけるように、主将で守備の要のDF中村実月(3年)が、交代を余儀なくされる。追い込まれた星稜は、県予選の準々決勝から決勝まで3試合連続ゴールを挙げたMVP男、FW山下陸(2年)も投入すると、この交代策がズバリ的中する。前田の右CKがファーサイドに流れると、MF{岡田伯斗}}(3年)から河合へとつなげて、河合がゴール前に放り込む。DF井上陽向大(3年)がそらしたところを、山下が右足で蹴り込む。ラスト7分で、星稜が同点に追いついた。

 昨年度の選手権1回戦、昌平高(埼玉)に2点差を80分から追いつかれてPK方式の末に敗れるという苦い経験をした高川学園。見る者には、その記憶が呼び起こされたが、「昌平戦を忘れるな」を合言葉に鍛錬してきた選手たちは「メンタリティが落ちなかった」と江本監督は回想する。そして、1年前の昌平戦にも出場していた2選手が、スコアを動かした。

 勢いに乗る星稜が攻勢をかける中、高川学園はGK徳若碧都(3年)のパントキックで一気に相手ゴール前へと運ぶと、FW梅田彪翔(2年)のパスを受けた林晴己がDFと対峙しながらも、股を抜く技ありシュートでこの日2点目。直後には、林晴己が落としたボールを中山がミドルレンジから沈めて、4-2。試合を決定づけた。

 今夏のインターハイでベスト4という好成績から、躍進が期待された星稜だが、2大会連続で初戦敗退という結果に。「運とかいろんなものもかかわってくるとは思いますが、初戦なので自分たちがやりたいサッカーが出せない時間が長い印象です」と、星稜の河合伸幸監督はそのむずかしさを語る。高川学園のフィジカルの強さを感じたといい、「もう一度体作りをしっかりしたい」、「来年ここに戻ってこれるように」とリベンジを誓っていた。

(取材・文 奥山典幸)

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