[12.31 選手権2回戦 尚志高0-0 PK5-6関東一 柏の葉]

　第100回全国高校サッカー選手権は31日、各地で2回戦を行い、県立柏の葉公園総合競技場の第1試合は尚志高(福島)と関東一高(東京B)が対戦した。0-0でPK戦に突入し、関東一がPK6-5で勝利。関東一は初の16強入り。来年1月2日の3回戦は矢板中央(栃木)と対戦する。

　U-22日本代表CBチェイス・アンリ(3年)を擁する尚志に対して、関東一は攻守に“アンリ封じ”を遂行した。「攻守において、できるだけ彼が活躍できないようなシチュエーションを作りたかった」と小野貴裕監督。前線3枚は本来1トップのFW本間凜(2年)とシャドーのMF林尚樹(3年)を入れ替えた配置でスタートし、アンリを釣り出す形を狙った。

「攻撃になったらアンリ君から離れて林が触って、そこに食い付けば裏に本間が走る。(アンリが)距離を詰めなければ、林と肥田野(蓮治)がドリブルで仕掛ける狙いを持っていた」。相手のビルドアップ時は林がマークについてアンリのパス配給を遮断し、「守備に関してはできるだけ彼(アンリ)に長いボールを蹴らせたくなかったので、どちらかというとラウル君に持たせるような立ち位置を取らせるようにした」と小野監督。セットプレー時はアンリのマークにDF池田健人主将(3年)がつき、規格外なキーマン封じを図った。

　尚志は1回戦・瀬戸内高戦(広島)で“鬼門”だったPK戦を制し、中1日で初戦と同じ11人が並んだ。MF黒瀬舜(3年)が維新力のあるドリブルで守備網を翻弄するなど、前半はペースを握った。しかし、前半22分にはアクシデント。配給役のボランチMF松尾春希(3年)が負傷交代でベンチに下がり、MF半谷一太(3年)を投入。キャプテンマークはアンリに託された。

　　関東一は28日の開幕戦で中津東高(大分)に6-0で大勝し、中2日で2人を変更。林を3-4-3の最前線に据え、中盤に180cmのDF倉持耀(2年)が入った。流動的に立ち位置を変えながらコンビネーションで崩そうとするが、アンリとDF安江海ラウル(3年)のCBコンビを中心に跳ね返され、フィニッシュまでは持ち込めない。

　前半40分には攻撃参加したアンリがスタジアムが大きくどよめかせた。窮地をしのいだ直後に自陣から攻撃をスタートすると、アンリも前線へと一気に駆け上がる。オーバーラップしてMF齋藤幹太(3年)からパスを呼び込むと、マイナス方向にクロス。リターンを受けた齋藤が決定的なシュートを打つチャンスを迎えたが、これはGK笠島李月(3年)のファインセーブに阻まれた。

　前半終了間際にも尚志が波状攻撃で押し込んだが、先制機を生かせず、スコアレスで前半を折り返した。関東一は後半3分、MF若松歩(3年)のヒールで抜け出したMF神山寛尚(3年)がシュートを狙ったが、冷静に寄せたアンリがブロック。相手のクロスには制空権を握るアンリが頭一つ抜きん出た高さから、ヘディングで跳ね返し続けた。

　互いに続々と交代カードを切りながら1点を目指す。関東一は攻撃の起点となるMF肥田野蓮治(3年)が存在感を強め、攻撃が活性化。関東一が攻め立てる時間が続き、後半27分には肥田野が鋭いカットインからアンリを引き連れ、ラストパス。若松がシュートを放つチャンスを迎えたが、わずかに枠を外れた。

　互いに決定機をつくりながらもスコアレスのままタイムアップに迫り、尚志は後半アディショナルタイム2分、GK鮎澤太陽(2年)を下げてPK専用キーパーのGK布川陽大(2年)を投入した。先行の尚志はアンリがきっちりと決めると、後攻の関東一は1人目がポストに当てて失敗。それでも、 GK笠島李月(3年)が2本を止めた関東一がPK6-5で激闘を制し、2回戦の壁を破った。

(取材・文　佐藤亜希子)

---

●【特設】高校選手権2021
▶高校サッカー選手権 全試合ライブ&ダイジェスト配信はこちら