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初戦欠場から覚悟の強行出場も…東福岡DF段上主将は涙の途中交代「何もできず悔しかった」

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DF段上直樹主将(3年)

[12.31 選手権2回戦 東福岡高 0-4 大津高 熊谷陸]

 部員250人を超える東福岡高を束ねてきたDF段上直樹主将(3年)の高校サッカー生活は、涙で幕を閉じた。「自分が試合に出て負けるわけにいかなかったけど、こういう結果になってしまって悔しい」。大津高とのライバル対決に強行出場するも無念の途中交代。最後は同じ境遇に苦しんだ仲間に付き添われながら、涙ながらにピッチを後にした。

 段上は11月中旬に行われた選手権福岡県予選決勝で、右足首の内側・外側靭帯をそれぞれ損傷。それ以降、プレミアリーグWESTの終盤戦や練習試合に出場することは叶わず、全国大会のメンバー入りこそ果たしたものの、コンディションを見ながら慎重に調整を続けてきた。12月29日の1回戦・秋田商高戦(○1-0)にも間に合わず、ベンチメンバー外。運営補助を務めながら戦況を見つめていた。

 それでも31日に行われた2回戦・大津高戦、段上の名がスターティングメンバーに並んでいた。「1試合目はメンバー外となったけど、みんながつないでくれると信じていたし、みんなもずっと声をかけてくれていた。次の大津戦では絶対に出場して、みんなのために戦うと決めていた」。決意を込めての強行出場だった。

 ぶっつけ本番での強行出場ということもあり、コンディションには不安が残っていた。試合後には「絶対に昔の状況でプレーできているとは思っていなかった」とも明かした。ただ、ピッチでどう振る舞うかのイメージはしっかりとできていた。

「ずっとプレミアリーグの試合も近くで見ていたので、自分としてはプレースピードという面で思っていたより差はなかった。その中でもできるという自信はあったし、3年間やってきた努力を出せれば通用すると思っていた。そんなに心配していなかった」。自らの積み重ねを信じ、3バックの中央に入った。

 ところがこの日の東福岡は厳しい展開が続いた。前半10分にハイボールのこぼれ球を拾われて失点すると、同20分過ぎからの猛攻は相手守備陣に阻まれ、なかなか優位に試合を進められない。そして後半8分、相手のアタッカーに段上が振り切られる形で失点。すると同14分、交代が告げられた。

 ピッチを去る段上はベンチコートに顔を包み、涙をこらえきれない様子だった。そのわけは脇に付き添っていたMF吉岡優希(3年)の存在があったという。

 吉岡も段上と同じく県予選決勝のピッチで負傷。ただ、怪我の程度から選手権のメンバー入りすらも叶わなかった。森重潤也監督によると「チームに貢献してきた3年生の気持ちを他の選手が背負いながらしっかりと闘ってくれ」というメッセージが、今大会の東福岡において一つのテーマになっていたという。

 だからこそ、段上はピッチに立つ者として吉原の思いも背負って戦っていた。「メンバーに入れなかった吉岡優希がいるが、そいつのためにも自分は早く治そうとしていたし、一緒にリハビリもやってきた。早く治して出場して、優希のためにという気持ちでずっとやってきた。それなのに何もできなかったのが悔しかった」。ピッチを去る際の涙は仲間を思ってのものだったようだ。

 段上がピッチを退いた後だが、東福岡はさらに2失点。「1失点、2失点としていく中での気持ちの立て直しは自分がピッチに立っていればできたのかなと思うが、ピッチにいなかったので気持ちの立て直しがなかなかできなかった」(段上)。そのままタイムアップを迎え、悔しい2回戦敗退となった。

 段上は高校卒業後、大学に進学してサッカーを続ける予定。これから推薦入試を受験するという。「この悔しさを経験したのは自分たちしかいない。それを糧にこれから大学でもサッカーを続けるので、4年間しっかり成長してプロになれれば」。そう意気込みを語った主将は「来年、再来年はこの試合を経験した選手も多いし、僕たちの代よりも絶対に強い。全国制覇を目標に頑張ってほしい」と後輩たちにエールを送った。

(取材・文 竹内達也)

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