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クールで熱いセンターバックの福田師王封じ。帝京長岡DF桑原航太が1年ぶりの全国で得た確かな手応え

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マークに付いた福田師王と競り合う帝京長岡高DF桑原航太(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[12.31 選手権2回戦 帝京長岡高 3-2 神村学園高 等々力]

 闘う姿勢には自信を持っている。何しろ好きなサッカー選手はセルヒオ・ラモス。相手が強ければ強いほど、燃えるタイプであることは間違いない。

「試合前から福田(師王)選手が凄い選手だというのは分かっていて、自分がどれだけやれるかというのは楽しみにしていて、前半のファーストプレーでしっかりガツンと行けたのが、試合を通して自分が優位に立てた理由かなと思います。もう何かやろうとしても、『全部引っ繰り返っちゃうんだろうな』と思っていたので、絶対に負けないという気持ちだけは一番強かったです」。

 帝京長岡高の3バックを中央で引き締める守備のキーマン。DF桑原航太(2年=東京ヴェルディジュニアユース出身)のクールで熱いパワーは、チームにとって絶対不可欠だ。

 右のDF松本大地(3年)、左のDF松村晟怜(3年)と3人で組んだ最終ラインは、難敵を相手に役割を明確化していた。神村学園高(鹿児島)と対峙する注目の一戦。相手のアタックの軸はMF大迫塁(2年)とFW福田師王(2年)。縦関係に並ぶこの2人に対して、桑原がその対策を口にする。

「試合前から14番の大迫選手がセンターバックの前でウロチョロしているというのも、13番の福田選手が1トップのような形というのも分かっていたので、あらかじめ大地を14番に付かせて、自分が13番に付いて、晟怜がそのカバーというのは決めていたことなので、それはしっかりハマった形かなと思います」。

 少し下がった位置の大迫には松本が対応し、前に張る福田には桑原が対峙する。もちろんそのストライカーの名前は知っていたが、自分と同じ高校2年生。簡単に負けるつもりは毛頭ない。1対1、上等。身体の強さも特徴的な相手に、持てるものをフルに使って対抗する。

 結果的に福田には1ゴール1アシストを許したものの、どちらもCKの流れからニアへと潜り込まれたもの。流れの中から失点を許さなかったことが、1点差での勝利に繋がった。「シーズンを通してセットプレーでやられることは凄く多かったので、ここでやられてしまったというのは凄く悔しいですけど、崩されての失点がなかったというのは、守備としては良い収穫だなと思います」と桑原。セットプレーへの反省はもちろんあるが、難敵相手に一定以上の守備の手応えを掴んだことも間違いなさそうだ。

 失点してからの冷静なゲーム運びには、理由があった。12月に開催された高円宮杯プレミアリーグプレーオフ。勝てばプレミア昇格という重要な一戦で、帝京長岡は3-1と2点をリードした状況から、桐生一高(群馬)に3点を奪われて大逆転負け。信じられない90分間から、大きな教訓を手にしていた。

「失点に全員が焦ってしまって、すぐ試合を始めてしまって、そのまま相手の流れで押されているというのがプレミアプレーオフだったんですけど、そこからしっかりみんなで話し合った結果、やっぱり『みんなでちゃんと集まって、やることをちゃんと決めてからまたセットしてやろう』というのは決めていたので、今日も失点してから円陣をもう1回組んだ時は『これはやられる感じはしないな』と思いました」(桑原)。

 同じ失敗は繰り返せない。この日も2度あった2点リードの状況にも、2週間前の経験を十二分に生かした帝京長岡の選手たちは、最適解を見つけようとチームが一致団結。古沢徹監督も「選手たちがプレミアプレーオフのように連続失点しないというところを良く意識して入ってくれたので、落ち着いてゲームが進められたかなと思います」と言及。苦い経験は、大一番で確実に生かされていた。

 元々は東京ヴェルディのジュニアユース出身。ユースには昇格できず、進路を考えていた時に、選手権で華麗なスタイルを披露している帝京長岡の姿を見て、練習に参加。「ここなら同じサッカーができて面白そうだし、人間的にも成長できるかなと思って」雪深い新潟の地へとやってきた。

 春先に話していた言葉が印象深い。「個人としての目標はチームを引っ張るということで、チームとしては『去年を超える』というのをずっとベースでやっているので、去年を超えるためにこれから何ができるかというのが大事になってくると思います」。

 積み重ねてきたこの1年間の集大成。自分も、チームも『去年を超える』。桑原にとって2度目となる冬の全国が、確かな自信を伴って幕を上げている。

(取材・文 土屋雅史)

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