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3戦7発の鮮烈な衝撃。阪南大高FW鈴木章斗は仲間との思い出と確かな成果を携えてプロの世界へ羽ばたく

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3試合で7ゴール。大会屈指のストライカー、阪南大高FW鈴木章斗(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.2 選手権3回戦 阪南大高 1-3 青森山田高 駒沢]

 力は出し切った。自分の結果に満足はしていないけれど、みんなと勝ち進んできたチームの結果には、納得している。

「チーム全体が最後に3年間やってきたことを出してくれていたので、あとは自分がゴールを決めていればチームを勝たせられたと思う部分で悔しい気持ちはあるんですけど、後悔はないですね」。

 3戦連発の7得点。湘南ベルマーレへの入団が内定している大会屈指のストライカー。阪南大高FW鈴木章斗(3年=ガンバ大阪ジュニアユース出身)は鮮烈なインパクトを見る者に残して、100回大会の選手権を後にした。

 なかなかボールが自分の元へ入ってこない。絶対王者、青森山田高(青森)と対峙したこの日の一戦。立ち上がりから攻勢に出た阪南大高だったが、エースの鈴木には相手のCB丸山大和(3年)が激しく対応。フィニッシュに持ち込めるようなシーンを作れない。

「最前線のところで受けるというのが彼の良さではあるんですけど、今日は試合前からセンターバックが相当強くて、章斗にボールを入れる角度がないのは分かっていたので、そこで頑張り切れない時には1個落ちて、そこで受けて起点になっていこうという話はしていました。前半はそういうシーンもあったんですけど、失点してからは彼自身も前に前にという気持ちが強すぎて、ちょっと悪循環に入った時間が長かったんじゃないかなと思います」(濵田豪監督)。

 それでも、その類稀なる感覚は一瞬で解き放たれる。3点をリードされた後半19分。右からMF松本楓悟(3年)が入れたロングスローがエリア内でこぼれると、誰よりも早く反応して球体をゴールネットへ流し込む。

「0-3という状況で、気持ちで押し込むしかなかったので、決められて良かったと思います」。もちろん打ち出した“気持ち”は十分。だが、それ以上に身体を倒しながら、GKが飛び出して空いたコースを見極め、足の裏でのシュートを選択するセンスはまさにストライカー。この日唯一のシュートで得点を記録。試合には敗れたものの、確かな意地は見せた。

 もともとG大阪ジュニアユース時代はSBやSHの控えという立ち位置。ユースへの昇格は叶わず、進学した阪南大高でも1年時はSHのドリブラーとしてプレーしていたが、2年の春に濵田監督がFWへとコンバート。そこからプロへと繋がるサクセスストーリーの道が開けた。

 本人も「3年間を振り返ると、いろいろあったんですけど、一番はポジション変更が大きくて、それでここまで来れていると思います」と明言。指揮官も「3年間でこうなってほしいなと思って声を掛けた選手なので、そういう部分では予想以上というか、ここまで成長するかどうかは、僕自身も半信半疑でした。ただ、その可能性を信じながら3年間を見ることができたのは、私自身にとっても良い経験だったなと思います」とその成長について目を細める。

 今年はキャプテンとしても、チームを牽引してきた。夏、冬ともに全国ベスト16まで勝ち上がり、プレミアリーグプレーオフも経験。一定以上の結果を残したこのグループに対する感謝も、鈴木はこう口にしている。

「1人1人に強い気持ちやプライドがあって、ケンカすることもあったんですけど、それがあったから、こうやってお互いに言い合えることができて、強くなっていったと思いますし、このチームでなければ僕もプロというステージには行けなかったと思うので、本当にこの仲間たちに感謝しないといけないですし、この感謝を次のステージでの活躍で恩返ししたいです」。

 まだまだ伸びしろは、十分過ぎるほどにある。全国の舞台で仲間と戦い抜いた3試合の思い出と、積み重ねた7ゴールという確かな成果を携えて、鈴木はプロの世界へと羽ばたいていく。

(取材・文 土屋雅史)

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