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トルメンタで世界を魅了、“旋風”巻き起こした高川学園が大粒の涙…「日本一になりたかった」

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涙をこぼした高川学園高(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.8 選手権準決勝 高川学園0-6青森山田 等々力]

 “世界”を魅了した山口の雄・高川学園高がベスト4で涙を呑んだ。インターハイ、プレミアリーグEAST2冠の青森山田高の強さに圧倒され、0-6で敗戦。コーナーキックは1本も得られず、話題の「トルメンタ」を繰り出すことはできなかった。

 青森山田のプレッシングを体感したゲームキャプテンのMF北健志郎(3年)は「DFラインを中心に相手のプレスにビビってしまって、長いボールを蹴ってしまうことが多かった」と強度に脱帽。「日本一になりたかった。負けてしまって本当に悔しい」。試合後、チームは国立競技場で大粒の涙をこぼした。

 大会初ゴールは鮮烈だった。昨年12月29日の1回戦、星稜高と対戦した高川学園は前半8分、FKのチャンスに5選手が円陣を組み、手をつないでグルグルと回転。キックが入ったタイミングで散開する奇策から見事に先制点を奪った。“円陣回転FK”は『ESPN』など大手海外メディアにも取り上げられ、選手が運営する公式ツイッターで正式名称が「トルメンタ」(スペイン語で「嵐」「旋風」)と発表された。

 これを皮切りに、トリッキーなセットプレーで第100回大会を席巻した。相手に対策を練られる中でも「トルメンタ」の変化系やトリックを“おとり”に使った形、「列車」「少しトルメンタ」とユニークで多彩な戦術を披露。選手たちが考案した想像力豊かな飛び道具で注目を集めた高川学園は、ドラマティックに勝利をもぎ取り、14年ぶりに準決勝までたどり着いた。

 過去最高成績に並ぶ堂々の4強入り。J内定選手を擁するタレント軍団ではなく、体格的に有利だったわけでもない。一体感を持って戦う中で、抜群のキープ力と技術で攻撃を牽引したMF林晴己(3年)や精度の高いキックで得点を演出したDF山崎陽大(3年)、好セーブを連発したGK徳若碧都(3年)ら各ポジションの選手たちが持ち味を遺憾なく発揮し、スーパーサブのMF西澤和哉(3年)も2試合連続決勝ゴール。記録にも記憶にも残る快進撃だった。

 大会直前に負傷したDF奥野奨太主将を「国立競技場のベンチに座らせよう」と、チームは一体感を高めた。「大会が始まってから、チームの思いがひとつになった。毎試合毎試合、この1年間でも、今まではできなかったようなこともできて、チームとしての成長をすごく感じた。その中で結果も出た」。北はチームの軌跡をそう振り返りつつ、「決勝にいけなくて申し訳ない」と悔しさをにじませた。

(取材・文 佐藤亜希子)

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