beacon

[MOM3762]青森山田DF丸山大和(3年)_努力家が引き寄せた仲間の信頼。全国決勝での“連続ゴール”で3冠達成の立役者に!

このエントリーをはてなブックマークに追加

インターハイに続き、全国決勝の舞台でゴールを奪った青森山田高DF丸山大和(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.10 選手権決勝 大津高 0-4 青森山田高 国立]

 必ず点を獲れるという自信しかなかった。1年前の自分に、この姿を見せてあげたい。スタンドからチームの敗戦を見つめるしかなかった、このピッチに立つことなんてイメージすらできなかった、あの時の自分に。

「こういう大舞台で決め続けることが自分の得意なところ。その結果が今日の得点に繋がったと思います」。

 インターハイ。そして、選手権。2度の全国決勝でゴールを重ねた青森山田高(青森)のセンターバック。DF丸山大和(3年=クリアージュFCジュニアユース出身)が1年間を掛けて着実に纏い続けてきた自信と信頼が、ゴールという結果で国立競技場のピッチに弾けた。

「この2年間は辛いことが本当に多かったので、その想いをこの1年間にぶつけたいと思います」。新チームが結成されたばかりの頃。定位置を掴みかけていた丸山はこう話している。東京から覚悟を持って、青森山田の門を叩いたものの、思ったような自分にはなかなかなり切れないまま、気付けば最上級生に。残された時間は1年になっていた。

「春先に守備が総入れ替えして、前と後ろのバランスがとても悪くて、監督からもチームの仲間からも、守備は怒られっぱなしで、言われっぱなしでした」(丸山)。MF松木玖生(3年)やMF宇野禅斗(3年)、FW名須川真光(3年)など、昨年のレギュラーが軒並み残っていた中盤や前線とは対照的に、ディフェンスラインはGKも含めて総入れ替え。誰もが口にする自分たちへの不安の声が、とにかく悔しかった。

 だが、チームの弱みだったはずの守備は、いつの間にかチームの大きな武器に変わる。「言われ続けたことが悔しさに変わって、それが強みになったかなと思います」と丸山。GK沼田晃季(3年)、右SB大戸太陽(3年)、CB三輪椋平(3年)、左SB多久島良紀(2年)、そして丸山。不動の5人で敷いた堅陣は、世代最高峰のプレミアリーグでもJユースの猛者たちをも飲み込んでいく。

 さらに、夏前から開花したのは得点力。インターハイでは松木に次ぐチーム2位タイの4ゴールを記録。苦戦を強いられた決勝の米子北高(鳥取)では、後半終了間際に起死回生の同点ゴールを頭で叩き込むと、延長後半アディショナルタイムにもやはり頭で劇的な決勝点をマーク。「質のいいボールが入ってくるので、信じて飛びこめるんです」という言葉通り、味方のキックを幾度となくゴールという成果に結び付けてきた。

 臨んだ高校最後の大会でも、その“嗅覚”は遺憾なく発揮される。3回戦の阪南大高(大阪)戦で、松木のCKからヘディングをゴールへねじ込み、選手権初ゴールを記録すると、舞台を国立競技場へ移した準決勝も、セットプレーで大会を沸かせてきた高川学園高(山口)から、相手のお株を奪うようなCKでの2ゴールを挙げてみせる。

 迎えた決勝の大津高(熊本)戦。「チームが1試合1試合乗り越えた結果が決勝の舞台。『最後の最後までみんなで戦おう』という形になりました」と丸山。辿り着いた最後の1試合。不思議と、必ず点を獲れるという自信しかなかった。

 前半37分。左サイドで獲得したCK。キッカーのMF藤森颯太(3年)に自ら要求する。「試合前からトリックとか決めていて、トリックは正直失敗したんですけど、そのあとはノーマルで、『ここで決めよう』と思ったので、颯太に要求してニアに蹴ってもらいました」。

 小細工はいらない。磨き上げてきたヘディングで真っ向勝負。ニアに飛び込んだ丸山の頭に、最高の軌道が入ってくる。手応え十分。その1秒後。ボールはゴールネットを揺らしていた。

「セットプレーは自分がターゲットとしてやってきたので、責任を感じながら、自信を持って今日の試合も臨みました。みんなが自分のためにスペースを空けてくれましたし、藤森も良いボールを蹴ってくれた結果が、あのゴールにつながったと思います」。自信は、人を変える。スタンドからピッチを見つめていた男は1年後、選手権の決勝という最高のステージで、鮮やかにゴールをさらっていった。

 日本一に輝いた試合後。丸山は力強く、こう言葉を紡いだ。「相手もプレミアのWEST。レベルの高い全国レベルの相手なので、攻められる時間帯もあることは覚悟しながら、『失点もするかな』という不安もあったんですけど、そこはもう気持ちの面で負けない、かつ気持ちが強い方が勝つと。気持ちの面ではまず負けないと思ってました」。

 確かに“持っている”のかもしれない。2度も全国大会の決勝で、日本一に繋がるゴールを奪ってしまうのだから。でも、それだけで片付けてしまうわけにはいかないだろう。誰よりも努力を積み重ね、誰よりも自身のさらなる成長を願い、周囲の信頼を勝ち獲ってきた頑張り屋。気まぐれなサッカーの神様が、この日の主役に丸山を指名したのも、きっと偶然ではない。

(取材・文 土屋雅史)

●【特設】高校選手権2021
▶高校サッカー選手権 全試合ライブ&ダイジェスト配信はこちら

TOP