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1年前の「ゾーン」が「スタンダード」に。青森山田の「高体連最強ボランチ」MF宇野禅斗はプロ入り後も日々成長

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1年前の準優勝から進化、全国制覇に貢献した「高体連最強ボランチ」宇野禅斗。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[1.10 選手権決勝 大津高 0-4 青森山田高 国立]

「先輩たちが見に来て頂いていたり、(激励の)連絡を前日にもらっていたので、そういう(先輩たちの分もという)気持ちも自分もあった中で優勝することができた。2年間の借りを返すことができたので、そこは喜ばしいかなと思います」

 青森山田高(青森)の「高体連最強ボランチ」MF宇野禅斗(3年=青森山田中出身、町田加入)は、自然と涙が溢れたインターハイ優勝時とは、また違う気持ちで日本一の瞬間を迎えていたという。3冠を成し遂げた達成感、高校ラストゲームを終えたことへの寂しさのような感情も。そして、ピッチに立っていた1年前、そして2年前の先輩たちの準優勝の雪辱を果たせたことを素直に喜んでいた。

 1年前、「ゾーン」と表現していた動きは、彼の「スタンダード」と言えるものになった。ボール奪取力とセカンドボール回収力は1年前の時点で高体連ナンバー1と言えるようなレベル。山梨学院高(山梨)との20年度選手権決勝で敗れたものの、1対1でのボール奪取、狙い澄ましたインターセプトなどマン・オブ・ザ・マッチ級のプレーを見せたのが宇野だった。

 1年前の決勝後、宇野は「一年間見ても自分の中では一番納得できるプレーだったかなと思います。集中しきっていたというか、『ゾーン』というと大袈裟かもしれないですけれども、自分の中の『ゾーン』状態に入っている感じでした」と振り返っていた。

 同時に掲げていたのが、「今年(高校最後の)1年間でもっとメンタル面を強化して、コンスタントに、毎試合毎試合プレーできれば良いなと思っています」ということ。当時は平常心を保てず、自分のプレーレベルを維持できない試合もあった。

 だが21年、宇野はリーグ戦も、トーナメント戦もハイアベレージのゲームを継続。どの試合も「宇野は良かった」と言えるようなパフォーマンスを見せていた。インターハイ準々決勝は5-0から失点に絡んで黒田剛監督から厳しく指摘されていたが、またそれを糧に成長。選手権では期待通りに何度も相手の攻撃の芽を刈り取り、攻撃の起点となる役割も発揮していた。

 決勝でも鋭いアプローチで大津高(熊本)の前に立ちはだかり、相手を押し下げた。そして味方との連係でボール奪取を重ねるなど、被シュートゼロでの勝利に大きく貢献。「自分が2年生の時に感じた『ゾーン』の状態を、1年間常に出すというイメージでやってきました。(今年は)それを自分の一定のリズムでやれて来ているという実感があったので、決勝戦は特に楽しみながらプレーすることができました」。会心の内容で勝利。宇野は仲間たちとともに実力を証明した90分間に胸を張った。

「自分もそうですけれども、青森山田の色を最後の最後まで出し尽くして終わることができたと思います」。周囲からの高い評価にも奢ることなく取り組んできたボランチは今後も成長を止めるつもりはない。

「『3冠した代の6番』を付けさせてもらったことはとても光栄なことですし、そういう見られ方をこれからもすると思うんですけれども、ここで青森山田の宇野禅斗としては区切りができたと思うので、これから、いちサッカー選手の宇野禅斗としてどれだけ多くの方々に応援してもらえるかというのを常に頭に入れながら、自分のウィークポイントやまだまだ足りないところがあると思うので、目を向けながら日々成長できるように頑張っていきたいです」と力を込めた。

 盟友・松木玖生(3年)とのコンビは、黒田監督が「本当に日本だけではなくて、世界に誇れるダブルボランチだったんじゃないかなと思います」と絶賛。本人はミドルシュートやフィードといった攻撃面、また守備面においても現状に満足はしていない。貪欲に基準を高めてJ、世界で活躍する、また誇れるボランチになる。

(写真協力=高校サッカー年鑑)

(取材・文 吉田太郎)

(※青森山田高の協力により、リモート取材をさせて頂いています)
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