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青森山田中高6年目で実った努力。国立でAチーム初得点、日本一の瞬間も経験のMF田中栄勢は仲間と恩師に感謝

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青森山田高MF田中栄勢は中高6年目のシーズンで念願の全国のピッチに立ち、日本一の瞬間も経験。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[1.10 選手権決勝 大津高 0-4 青森山田高 国立]

 青森山田中時代は登録外やベンチ外が続き、チームをサポートする側の位置。青森山田高(青森)進学後も1、2年時はAチームに入ることができなかったという。1年前の新チーム始動時(東北新人大会)もメンバー外。それでも、挫けずに努力を続けた技巧派アタッカーが、国立でゴールを決め、3冠メンバーになった。

 決勝で後半43分から出場し、優勝の瞬間をピッチで迎えたMF田中栄勢(3年=青森山田中出身)は、「今までにない喜びだったり、嬉しさがこみ上げて来て、本当に3冠という目標は青森山田で成し遂げたことがなくて、自分はその代で3冠を成し遂げられて本当に嬉しく思っています」と声を弾ませた。

 田中は今回の選手権で4試合に出場。初戦でゴールにも絡んでいるが、ハイライトは準決勝だろう。5-0の後半44分、前線で身体を張ったFW小湊絆(2年)が相手のクリアを阻止し、こぼれ球が田中の下へ。右足で冷静にGKの股間を抜いた一撃が、田中にとってAチームでの初ゴールとなった。

 青森山田中時代からのチームメートであるMF松木玖生主将(3年)が真っ先に駆け寄り、飛びつき、他の仲間たちも笑顔、笑顔、笑顔。この試合で青森山田が最も沸いたシーンの一つでもあった。

 歓喜の中心となった田中は「FWの選手(小湊)が頑張ってくれて、自分、良いところにいて点数を取れたので、あれはチームのお陰だなと改めて思います。自分はトップで決めた初ゴールだったので、自分の中で嬉しくてそういう喜びがあったと思います」。這い上がって来たMFが“聖地”で決めた感動のゴールだった。

 田中は「去年の今頃だったら東北大会の新人戦とか、(登録メンバーに)入っていなくて、本当に2月とか3月とか頑張ってプリンス(リーグ東北、セカンドチームが出場)で10番とか任されて良い経験の中で今の選手権の舞台に立たせて頂いたというのもあって、自分を起用してくれた(黒田剛)監督やコーチ陣に感謝の気持ちを持っています」という。

 危機感を持って取り組み、信頼を積み重ねてきた選手だ。今年はセカンドチームの10番を背負い、15試合に先発して奮闘。メンバー入りしたインターハイは逆転Vを飾った決勝の延長戦開始から途中出場し、アグレッシブな仕掛けで流れを引き寄せている。そして、選手権準決勝でAチーム初ゴールを決め、優勝のピッチにも立った。

 青森山田での6年間は、苦しい時期もあった。「やっぱり中学の時とかですかね。試合にずっと出れていなくて、(全国大会の登録外やベンチ外で)サポートの位置にいて、そこから高校1、2年生もトップに関わることもなかったので、その時期は辛かったですね」。それでも、スタッフや仲間たちに励まされながら青森山田のハードワークを身に着け、武器を磨いてきた。

 その自分に対して田中は「やってきたのは良かったです」と語り、「今後もサッカーを続けていきますし、プロを目指していくので、最後まで諦めないでやり抜きたいと思います」と宣言。テクニカルなMFは進路の名古屋産業大(21年度東海学生リーグ1部)でも諦めずにやり抜き、再び目標を達成する。

(取材・文 吉田太郎)

(※青森山田高の協力により、リモート取材をさせて頂いています)
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