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国立5アシストの一方で…大会No.1SH藤森颯太が見せた“青森山田の象徴”と言える姿

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青森山田高の右SH藤森颯太は2アシスト。守備でも貢献度も大きかった。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[1.10 選手権決勝 大津高 0-4 青森山田高 国立]

 高校年代“3冠”を達成した青森山田高(青森)は、全員がキャプテンシーを持って日常、ピッチ上で学び、発信し、試合では犠牲心を持って戦う集団だった。もちろん、FC東京加入のMF松木玖生主将(3年)、町田加入のMF宇野禅斗(3年)という逸材2人が引っ張っていたが、他の選手たちが見せる意識高い動き、チームを鼓舞する姿も印象的。中でも右SH藤森颯太(3年=青森山田中出身、U-18日本代表候補)は他のチームメートたち以上に青森山田がやるべきことを表現していたのではないか。

 青森山田は、大津高(熊本)との決勝で被シュートゼロの完璧な勝利。藤森は前半37分に左サイドからの右足CKでCB丸山大和(3年)の先制ヘッドをアシストし、後半10分には左サイドからロングスローを投じた流れの空中戦で逃げずに競り勝ち、松木の3点目を演出した。その一方で献身的なプレスバックを貫徹。左SHの田澤夢積(3年)とともに運動量を増やして走り続けたことが、青森山田の「シュートを打たせない」に加え、「クロスを上げさせない」というテーマも実現させていた。

 シュートを打たせてしまえば、失点の可能性が生まれてしまう。また、クロスを上げさせてしまうと、シュートやセットプレーに繋がってしまう怖れもある。黒田剛監督は青森山田での指導だけでなく17年に日本高校選抜を指揮した際もSHにプレスバックする運動量を強く求めていたが、青森山田のSHは今回の選手権でも当たり前のようにそのテーマを実行していた。

 中でも世代屈指のサイドアタッカーである藤森のハードワークは秀逸。自分を奮い立たせるように走り、球際では相手を弾き飛ばすような強度を見せた。準決勝の高川学園高(山口)戦では、2アシストして迎えた後半12分に右コーナー付近で驚異的なボールキープ。2人がかりでボールを奪いに来た相手DFに対し、重心を落とし、両足を目一杯広げてボールを守る。「競り合いで負けない」を全力表現。高川学園は奪いきれずにボールがこぼれ、これを拾った松木が個人技から3点目のゴールを叩き込んだ。

「あの時は1対2で、あそこでボールを奪われてカウンター食らったらいけないと思って、まずボールを奪われないことを意識して身体を上手く使ってキープできたかなと思います」と藤森は微笑む。準決勝、決勝での計5アシストや高速ドリブルがクローズアップされるが、「どんな状況に置かれても逆転したり、どんなに点差が開いてもまだまだ諦めずに点を取りに行く姿勢だったり、そういうメンタルの部分などが青森山田の私生活の面で鍛えられていると思う」「玖生や禅斗だけに頼っているのも、それはそれでチームが良くならないと思った」と語る藤森の犠牲心あるプレーや、リーダーシップも青森山田の優勝には大きかった。

 それでも、藤森は今大会の活躍に満足していない。「自分自身、なかなか2回戦、3回戦、準々決勝と自分の本領を発揮できずにいました。国立入ってから(準決勝、決勝)は十分とは言えないですけれども、チームの勝利に貢献する形で活躍できたことは嬉しく思っています。でも、そのパフォーマンスを2回戦から発揮できたらもっとチームの得点に貢献できたり、チームのためになった。優勝できたから今は良いんですけれども、優勝できなかったらと思うと、本当に悔しい結果で終わっていた大会だったかなと思います」。また、藤森はプレミアリーグEASTの終盤戦で3戦連発を記録したが、今大会は無得点に終わっている。だからこそ、満足することなく課題に取り組んでいく覚悟だ。

 藤森は優勝の瞬間について、「目標として掲げていた3冠を成し遂げることができて嬉しいですし、山田中からの6年間、山田でのサッカー生活が終えたということを考えると感慨深いものがありますし、3年間、6年間やってきた仲間と切磋琢磨してきたことを誇りに思う反面、少し寂しいなという気持ちでいっぱいです」と明かす。

 卒業後は大学サッカー界屈指の強豪、明治大へ進学。新たなステージ、また年代別日本代表での活躍も期待される。「自分自身が青森山田でできた素晴らしい経験というのはこれからのサッカーキャリアにおいて、絶対に自信や支えになりますし、年代別の代表に入りたい気持ちもありますけれども、まずは大学に入って一から積み重ねていきたいなと思っています」。青森山田の“象徴”と言えるほどの動き、リーダーシップを見せたMFは、6年間で学んだことをベースに、よりスケールアップして次のステージで大きく羽ばたく。

(取材・文 吉田太郎)

(※青森山田高の協力により、リモート取材をさせて頂いています)
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