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選手権初出場に挑戦する日体大柏の成長株は“学校設立以来一番”の学力。CB古金谷悠太はDFラインの要と学年1位を継続して冬へ

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文武両道を貫いてきた日体大柏高CB古金谷悠太(3年=TUソレイユFC出身)は、最終ラインの要として選手権初出場へ

 柏レイソルと相互支援契約を結び、「レイソルアカデミー」の一つとして活動する日体大柏高(千葉)は、20日に190cmエースFWオウイエ・ウィリアム(3年)の23年シーズン柏加入が内定。注目度がさらに向上する中、チームは10月8日開幕の選手権千葉県予選決勝トーナメント制覇に挑戦する。

 日体大柏は19年にプレミアリーグ勢の市立船橋高、流通経済大柏高を破って33年ぶりにインターハイ出場。両名門校が不参加の関東大会予選では2連覇中だ。相互支援契約によって、柏のアカデミーコーチがチームを指導。現在はいずれも柏などで活躍した根引謙介監督と菅沼実コーチを中心としたスタッフの下、個とチームの強化を目指している。

 その中で根引監督が、「賢いので、言ったことを重ねて重ねて伸びてきた選手かなと思いますね。試合を増すごとに安定してきています。本当に伸びている選手というか、今も新しいことを要求しているけれど前向きにやってくれている。こっちが要求できることが増えてきている。まだ伸びる」と認める存在が180cmCB古金谷悠太(3年=TUソレイユFC出身)だ。

「僕、中学校の時、凄く弱いチームだったので、(相手が)J下部だけで『凄い』みたいになっていた」という古金谷。1年生時は試合に絡めず、1年生チームの主戦場である関東Rookie Leagueにも「全然出られなかった」と振り返る。

 2年目の昨年1年間は、Bチームで試合経験を重ねた。そして昨冬、先輩たちが引退して新チームがスタート。その際はAチームに入れなかったが、得意のビルドアップを「誰にも負けないようにしよう」と努力してきたCBは訪れたチャンスを掴む。けが人が出た影響もあってAチームで出場機会を得ると、攻守両面で勝利に貢献。CB柴田光琉(3年)らとともに台頭し、春から現在まで継続してAチームのスタメンに名を連ねている。

 この夏はパワーワークカップ(千葉)や和倉ユース大会(石川)で全国トップクラスの強豪校と対戦。神村学園高(鹿児島)の世代最強FW福田師王(3年)と戦い、「(福田の)コンディションはあまり良くなかったと思うけれど、その中でも2失点して1本は僕の裏抜けられて…。そのままGKと1対1を決められて、守備はまだまだだなと」と振り返る。

 また、昨年度3冠の青森山田高(青森)とも対戦。相手のパワフルなセットプレーや鋭い攻撃にゴールをこじ開けられてしまったが、落ち着いてビルドアップするなどできていることも多かった。

「(当初は名前負けしていたが、)高校3年間で一番は自信を持ってプレーできるようになりましたね。全国相手にも『やれるな』、というのは変化」。日々のトレーニングで出てきた課題を忘れず、改善を繰り返すことで進化。特別な学力を持つ古金谷は、その武器をサッカーの成長にも繋げてきた。

 古金谷は難関私立中学の芝中学校(東京)に一般受験で合格。毎年2桁の生徒が東京大学へ合格している進学校の中でも、「結構、頭良かった。自分の頭の良さは自信がある」という古金谷だが、「高校でサッカー続けたい」とサッカー第一の進路選びをする。

 中学時代、プレーヤーとしては無名。「東京の3部リーグとかで、高円宮杯とか都の本戦も行けなくて」進路を選べる立場ではなかった。その古金谷は、積極的にセレクションを受験。当時、視野の広いボランチだった古金谷は、柏U-18と日体大柏の合同セレクションでのパフォーマンスが評価され、台頭中の日体大柏へ進むことが決まった。古金谷の兄は、ラグビーで全国大会に出場。「スポーツも応援してくれる」家族の理解、後押しもあり、サッカー強豪校での生活をスタートさせた。

 国内最高クラスの大学進学を目指してきた古金谷はサッカーも、勉強も、本気。家族と約束し、日体大柏では学年1位の成績をノルマにしてきた。「どっちも中途半端にしたらいけないと。サッカー出れなくて、辛くて、勉強が疎かになった時もあった」というが、1度だけ“めっちゃ賢い”留学生に譲った以外は、学年1位を継続してきた。

 模試で千葉県2位、偏差値総合70を記録したこともある古金谷について、コーチ、監督を含めて長く日体大柏を指導してきた片野慶輝総監督は、「学校設立以来で、一番頭良いんじゃないですか」と微笑。その言葉に対し、古金谷は「そう言ってもらえるのは嬉しい。それに恥じないように、勉強も頑張っていかないといけない」と応えた。

 部活動が休みの日は1日10時間、12時間勉強するが、普段はコンディション維持のため自宅学習は夜11時頃まで。帰宅後は食事、入浴、そしてストレッチを優先する。「睡眠時間が短いと自分はダメ。(プレーヤーとして)積み上げてこれたことも、怪我しなかったから。それはストレッチのお陰。時間があったら30分、1時間とストレッチをします」。朝6時に起床し、通学中も英単語などをチェック。勉強時間は「全然足りない」というが、サッカーも、勉強も「甘えなしでやっていきたい」と貫いてきた。

 挫けそうになった時も、自分のため、支えてくれる家族のために折れなかった。「(昨冬、)新チームになってAチームに上がれなくて辛かった」というのが本音。ただし、「『ここで終わったら本当に終わりだな』と思った。『サッカーで成し遂げられなかったら、勉強もダメだ』と思ったので、とりあえずサッカーを頑張って、頑張ってダメだったら仕方ないと」。諦めずに積み上げてきたことが、現在に繋がっている。

 その賢さとプレーはリンクしているのか。「常に考えてプレーするようにしています。練習中も何で失敗したのか分析している。一つ一つ考えて来たことが今に繋がっている。どこが空いているとか、どっちから来るか、あとはボールをどこに置くか。身体の向きとかは、守備にも通じるので、すごく考えてやるようにしている。(賢さとプレーは)めちゃくちゃリンクしている訳ではないと思うけれど、やっぱり頭の良さ、言われたこととかすぐ自分で考えて行くことは、自分の武器。賢さは大事だと思います」。

 今年、オウイエやFW吉田眞翔主将(3年)ら前線が非常に強力な日体大柏だが、和倉ユース大会などの反省からよりボールを保持したサッカーへ挑戦中。そのスタイルのキーマンでもある古金谷は、ビルドアップ力、賢さ、そして地道に磨いてきた守備力を持って選手権予選に臨む。

「市船・流経倒して全国出て、和倉ユースで分かったんですけれども、自分たちは(全国トップクラスの相手とも)全然できる。優勝を目標して頑張りたい」。積み重ねてきた日々に自信を持って準備し、その賢さ、自分の力をチームのために発揮するだけ。そして、目指してきた選手権全国大会のピッチに必ず立つ。

(取材・文 吉田太郎)
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