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試練を経て逞しさとエネルギー増した注目ボランチ。MF根津元輝は士気を上げ、ピッチ内で前橋育英を「楽にできる選手に」

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復調してきた注目ボランチ、前橋育英高MF根津元輝(3年=1FC川越水上公園出身)はピッチで輝く

 試練が注目ボランチを逞しくしている。MF根津元輝(3年=1FC川越水上公園出身)は、名門・前橋育英高(群馬)で2年時からレギュラー。昨冬は選手権8強を経験し、下級生ながら大会優秀選手、日本高校選抜にも選出された実力者だ。

 2年時からコンビを組むMF徳永涼主将(3年)とともに新シーズンの飛躍が期待されたが、プレミアリーグEAST開幕直前に右膝を負傷。「最初は一週間くらいで戻れると思っていたら、日に日に……」と怪我は長引いた。

 根津がリハビリに励む中、チームは初参戦のプレミアリーグEASTで上位争いを演じ、インターハイ出場権を獲得。攻撃的なボランチMF青柳龍次郎(3年)が根津に負けないパフォーマンスを演じ、6月には盟友の徳永がU-18日本代表候補へ初選出された。

 その間、根津はリーダーの一人としてピッチの外からチームを鼓舞。そして、インターハイでの活躍を信じて地道にリハビリを続けたMFは、7月のプレミアリーグEAST前半戦ラストゲームで復帰というところにまでこぎつけた。山田耕介監督は「アイツがいるとチームリーダーになるので。チームの雰囲気も全然変わるので、ベンチワークも変わる」と期待。だが、その試合直前に再負傷したMFは、「絶望しました」と当時を振り返る。

 幸いにも2度目の怪我は重傷ではなかった。インターハイは登録メンバー入りし、全5試合で途中出場。根津はピッチ外で仲間たちを引き締め、ピッチに入るとチームの雰囲気を変えた。そして、日本一の瞬間をピッチ上で経験。だが、「インターハイはチームとしては本当に評価できますけれども、(直前の怪我によって)思うように試合に出れなくて、納得できない自分がいました」と明かす。

 公式記録上の出場時間は5試合で30分ほど。“悔しい”インターハイ後、先発奪還へ向けて再スタートした。根津の持ち味は正確なボールタッチと長短のパス、前への推進力、そしてフィジカルコンタクトの強さを活かしたボール奪取。自信を持って、生き生きとプレーしていた負傷前以上の動きを自身に求めた。

 自分が出場時間を増やせば、その分、出場時間が少なくなる選手もいる。先発選手として、誰もが認めるプレーをしなければならない。「スタートから出れることは本当に当たり前じゃない、プレー以外のところでもしっかり責任感持ってやらないといけない」。トレーニングからアピールを続けた続けた根津は、9月11日のプレミアリーグEAST・FC東京U-18戦で先発出場。その前半5分、ペナルティーアークからの右足FKを左隅へ決め、プレミアデビュー戦ゴールを記録した。

「前半は自分自身も手応えがあって、ゴールも獲れたので。全然100点満点じゃないですけれども、それなりにできたかなと思います。FKも本当に練習していたところなので、あそこで蹴らせてもらえることも嬉しいことなので、ああやって結果を出せて良かった」。試合中は徳永と“喧嘩”するほど意見を出し合い、同時に支え合って勝ち点1を獲得。続く青森山田高戦は0-1で敗れてしまったが、自身に課す「チームを楽にできる選手」になっていく意気込みだ。

「これまでピッチ外でもチームの士気を上げることはできたんですけれども、ピッチ内のところで怪我している間は全然できなかったので、いかにチームを楽にできるかとか、チームを楽にできる選手にならなければいけない。怪我は仕方ない。残すはプレミアと選手権で、懸ける思いは誰よりもあるつもりでいるので、本当にそこは自分の高校サッカー全てを懸けて頑張りたい。ゴールへの意欲が今、本当にあるので、エゴすぎちゃだめですけれども、ボランチの位置でも決定的なゴールを決められる選手になりたいと思っています」

 離脱中、身体的な不安はなかったが、懸念されたのは生命線のボールタッチ。「トレーナーとか、みんなによく手伝ってもらって」パスアンドコントロール、細かなドリブルを1からやり直して取り戻してきた。離脱中の筋トレで増量した体重も3kg減らし、コンディションは明らかに良くなっている。また、プロのボランチの映像をこれまで以上にチェックし、俯瞰して見てきた根津は、トレーニングから余裕のある動き。今後はピッチ内で、個人としても輝くと同時に、インターハイ優勝からまだ浮ついた部分のあるチームを引き締めていく。

「自分がやらないといけない。自分もプレーで引っ張っていくことは毎試合意識しているんですけれども、プレー以外のところでも自分はできると思っている。本当にまだまだ足りないなとは思っているのでもっと嫌われるくらい、バチバチ言わなければいけないのかなと思っています。嫌われ役は買って出ないといけない。奢らずにチームの士気を高め続けることが自分の役割だと思っているので、次はプレミアと選手権へ向けてやっていきたい」。試練を経て高まった逞しさと冬へのエネルギー。根津が前橋育英の士気を上げ、ピッチ内で楽にし、夏冬連覇への大きな力になる。

(取材・文 吉田太郎)
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