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技術を発揮するのも、まずはメンタル。3発逆転勝ちの秋田商は反省の準決勝から改善して連覇へ

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後半31分、秋田商高は2年生FW泉海斗(左端)が勝ち越しゴール

[10.19 選手権秋田県予選準決勝 新屋高 1-3 秋田商高 ソユスタ]

 名門が苦しみながらも全国最多47回目の選手権出場へあと1勝とした。19日、第101回全国高校サッカー選手権秋田県予選準決勝が行われ、前回優勝の秋田商高が3-1で新屋高に逆転勝ち。秋田商は22日の決勝で明桜高と戦う。

「こんなに硬い彼らを見るのは初めてでした。自分たちらしさや良さを出せなかった試合でした。それくらい新屋さんも頑張っていたと思います」。秋田商の小林克監督は対戦相手をリスペクトしながらも、力を出しきれなかった試合に首を傾げていた。

 新屋は序盤からハイプレッシャーでボールを奪い、いずれもキープ力の高い181cmFW石澤琉真(2年)と10番FW大高蒼(3年)の2トップへ配球。上手く試合に入り、相手の背後を突く攻撃を繰り返す。

 7分、MF加藤隆之介(3年)のインターセプトから石澤の放った右足シュートはわずかにゴール左。だが13分、GK安達琉真(3年)のキックを前線の石澤が頭でそらす。これで抜け出したMF菅原永暉がミドルレンジから左足シュートを決め、一般生も駆けつけたスタンドを興奮させた。

 先制された秋田商は、徐々にボール保持の時間を増加。前線での力強い動きが光るFW川辺瑞輝(3年)と俊足FW柳村奈祐太(3年)の2トップを活用して反撃する。20分にはスルーパスで柳村が抜け出すもシュートは新屋GK安達がビッグセーブ。だが、飲水タイムで落ち着きを取り戻した秋田商がサイド攻撃で同点に追いつく。

 25分、GKからボールを繋ぎ、川辺が左サイドへ展開。MF米谷海(3年)がカットインからクロスを上げると、ファーサイドの右SB斎藤楓真(2年)が右足でゴールへ押し込んだ。追いついた秋田商はMF有泉楓馬(3年)の右足シュートなどで畳み掛けようとするが、相手を飲み込むことができず、大高、石澤を起点とした新屋の速攻を受けるシーンもあった。

 後半立ち上がりも相手に合わせてしまうような攻守。小林監督は、「5分、10分で2点目を入れて欲しかった。ズルズルと仕留め切れない展開が続いた。新屋高校さんが必死に身体を張っていたところがあるんですけれども、そこを上回る何かが欲しかった」。MF光田楽生主将(3年)やCB畑村匠毅(3年)のように落ち着いてプレーし、取り組んできたパスでの崩しを狙う選手もいたが、全体の運動量が少なく、迫力を欠いてしまう。

 秋田商は15分、交代出場FW泉海斗(2年)のスルーパスで川辺が抜け出すが、シュートは再び新屋GK安達が阻止。16分には光田の展開から、突破力を発揮していた左SB船川充希(3年)がラストパスを送る。だが、川辺の右足シュートは枠右へ。決定機を作り出したが、決め切ることができない。

 新屋は中盤の底の位置でバランスを取るMF神戸葵主将(3年)を中心に粘り強い戦い。だが後半半ば頃から、足を攣らせる選手が続出してしまう。迎えた後半31分、秋田商は“カウンター返し”。川辺が競ったこぼれ球を泉が左中間で拾う。そして対角の左足シュートを決めて勝ち越した。

 新屋はSB千種海翔(3年)のロングスローやDF背後を狙った攻撃で反撃。だが、秋田商の集中した守りの前にシュートまで持ち込むことができない。逆に交代出場選手が活力を加えた秋田商は40+3分、中央で泉と交代出場MF塩遥音(1年)がワンツー。抜け出した泉が切り返しでGK、DFをかわし、左足シュートをゴールへ流し込んだ。

 秋田商は逆転勝ち。ただし、小林監督は「タマはいるんですけれども。噛み合った時は強いですね。噛み合わない時は平気でこういう試合をしてしまうので……噛み合っていないところをどうやって噛み合わせるか」。厳しい表情を見せていた。

 試合後、長いミーティングで選手が指摘されたのはハートの部分。光田は「メンタルが無いと、パスを出す部分でビビって出せない。技術云々の前にメンタルが無いといけない。『きょうはメンタルが無かったな』と言われたので、まずはメンタルをベースに技術を出していきたい。メンタルがしっかりしていればできるチームだと思います。決勝で明桜はもっともっと来ると思うので意識していきたい」と力を込めた。

 この日は最後の最後で2年生の泉と1年生の塩が落ち着いて個のスキルとコンビネーションを発揮してゴール。後輩のプレーからヒントを得た選手たちは、決勝で明桜の圧力に粘り強く対応し、強い気持ちを持って自分たちのサッカーにチャレンジする。

 インターハイ予選決勝で1-4の敗戦を喫している明桜とのリベンジマッチ。光田は「チームの全員、誰もが全国へ行きたいと思っている。プラスインターハイのリベンジもありますし、出てなんぼの秋商だと思うので、きょうのように腰が引けていると先手取られてインターハイのようになってしまうので、もっと入りから100%で行けるような持って行き方をしていきたいです。勝ちたいと思います」。準決勝とは違う姿を見せて、今年も秋田商が選手権の舞台に立つ。 

(取材・文 吉田太郎)
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