beacon

リーグ戦出場時間は計15分ほどのFW野尻七誠が延長V弾!勝ち切る強さ、執念発揮の成立学園が東京B準決勝進出!

このエントリーをはてなブックマークに追加

延長後半1分、成立学園高FW野尻七誠が決勝ゴール

[10.22 選手権東京都Bブロック準々決勝 東久留米総合高 1-2(延長)成立学園高 南豊ヶ丘フィールド]

 今季リーグ戦の出場時間は15分ほどという“盛り上げ役”が、成立学園を4強へ導いた。22日、第101回全国高校サッカー選手権東京都Bブロック準々決勝が行われ、東久留米総合高成立学園高が対戦。延長後半1分にFW野尻七誠(3年)が決勝点を決め、成立学園が2-1で競り勝った。成立学園は11月6日の準決勝で駒澤大高対東京実高戦の勝者と戦う。

 今年の関東大会予選優勝校の成立学園と、Aブロック含めて都立勢で唯一勝ち残っている東久留米総合との熱戦は、交代出場のFWが決着をつけた。1-1の延長後半1分、成立学園は自陣からビルドアップすると、MF陣田成琉(3年)がワンツーで前進。相手に倒されかけながらも踏ん張った陣田が、この日幾度も通していたスルーパスを狙う。

 絶妙なコースへ飛んだパスに野尻が反応。「陣田から『自分が持ったら斜めに走ってくれ』と言われていて、その通りに動いたらボールが来て流し込むだけという感じでした」。今までにないくらいという冷静なシュート。ゴールを決めた背番号22は、迷わずにベンチ方向へ走り出し、ピッチに飛び出してきたチームメートの輪の中に飛び込んだ。

「絶対に自分が決めて勝利に貢献しようと思っていました。本当に嬉しくて、ベンチメンバーも、ベンチに入れないメンバーも、全員で一つになって喜んでくれて嬉しかったです。(自分にとっても、)本当に大きいゴールです。決めた時は『これがオレだ』『オレが出たら、決めるんだ』と」。出番がなくても明るい声がけでチームをサポートしてきたFWが、この日は決勝点で主役になった。

 成立学園は今年、関東大会予選を制し、都1部リーグでも首位。だが、インターハイ予選は初戦敗退し、夏以降はリーグ戦も勝ち切れない試合が増えていた。だが、10月9日の都1部リーグ・実践学園高戦で1-0勝利。「まずサッカーどうこうよりも勝ち切ろうと言って、良い波に乗れたかなと思います」(陣田)という試合をきっかけに、波に乗ることができている。

 この日は前半から陣田やMF八木玲主将(3年)を中心にテンポの良いパスワークを披露。陣田のスルーパスで俊足FW菅野芳帆(3年)が相手の背後を突いたほか、MF渡辺弦(3年)のカットインシュートやCB佐藤由空(3年)の高さを活かしたセットプレーで相手ゴールを脅かした。

 だが、東久留米総合はGK中谷悠人(1年)がファインセーブを見せたほか、3バック中心に我慢強いディフェンス。前線で起点となったFW江川諒(3年)や攻守に推進力のあるMF久保寺壱晟(2年)、テクニカルな司令塔・MF横倉和弥(2年)が攻め返して見せる。

 成立学園は後半、敵陣で攻め続けると10分、右SB大川拓海(3年)のパスで渡辺が抜け出して先制点。だが、東久留米総合は22分、相手の隙を突く形でチャンスを作り、交代出場FW齋藤聖和(3年)の落としを江川が右足で決めて同点に追いついた。

 その後も東久留米総合は、サイドからの仕掛けや奪い返しからの速攻でシュートまで持ち込もうとしていた。だが、成立学園はGK鈴木健太郎(3年)や佐藤、CB藤井利之(3年)らDF陣が集中した守り。焦れずにチーム全体でボールを動かし続け、鮮やかな崩しで2点目を奪って勝ち切った。

 決勝点を決めた野尻のAチームでのリーグ戦出場は2試合、計15分ほどだという。それでも、FC東京U-18B戦でゴールを決めたFWはチャンスを掴み、「(山本健二)監督とかコーチからも『やってこい』と言われていて、自分の仕事はシュートを決めることだけだと思ってずっと狙っていました。(成立学園は)全員上手いので、絶対に自分のところに一回は来ると思っていたのでそこを絶対に決めてやろうと思っていました」というこの準々決勝でチームを救った。

 ヒーローは子豚の縫いぐるみを手に取材対応。「(山本)監督の誕生日に自分たちが“勝利の子豚ちゃん”と言って渡したんですけれども、そこに『全国行くぞ』と書いてあって、きょう監督が持って来てくれた」という。

 05年度以来の選手権出場、そして全国制覇を目標に掲げる成立学園は“勝利の子豚ちゃん”とともに準決勝進出。陣田は「ここ勝ってチーム的に浮ついちゃうと思うんですけれども、締めて目標はあくまで全国で優勝すること」と言い切る。

 また、野尻は「(勝負弱いところが課題だったので、今後も)自分たちの気持ちをどれだけ高めて勝利へ向けた執念を出せるかだと思います。そこの気持ちの部分をもっと高めていきたい。絶対に次の試合はもっと苦しい試合になると思うので、そういうところで自分にチャンスが回ってきたら、チームの勝利に貢献できるようなプレーをして、チームとしても全国出て、結果を残したいと思います」と誓った。勝負はここから。例え逆境の展開になっても全員で乗り越えて、必ず選手権切符を勝ち取る。

成立学園高FW野尻七誠が劇的な決勝ゴール

(取材・文 吉田太郎)
▼関連リンク
●【特設】高校選手権2022

TOP