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[MOM4056]都城農FW河野佑哉(2年)_「だいたいこのあたり」がわかるストライカーが起死回生の同点弾でチームを救う!

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土壇場で同点ゴールを挙げた都城農高FW河野佑哉(20番)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ supported by sfida]
[10.29 高校選手権宮崎県予選準決勝 小林秀峰高 1-1 PK3-4 都城農高 串間市総合運動公園陸上競技場]

 それを人は“得点感覚”と呼ぶのだろう。「だいたいこのあたり」。その場所を嗅ぎ分ける才能は誰でも持ち合わせているわけではないし、いつでもそれを発揮できるわけでもない。だからこそ、点の獲れるストライカーは、それだけでスペシャルな存在なのだ。

「ボールがゴチャゴチャしている時に、『このへんにいたら決められるな』という考えは一応持つようにはしているので、たまたまこぼれてきて、たまたま決められたかなって。実力ではないかもしれないですけど、もう本当に嬉しかったです」。

 都城農高を敗退の危機から救った2年生ストライカー。FW河野佑哉(2年=都城志和池中出身)が感じる“たまたま”は、きっと“たまたま”ではない。

 決してチームの空気は悪くなかった。小林秀峰高と対峙した選手権予選準決勝。前半の終了間際に先制点を奪われたものの、「ハーフタイムも雰囲気が良くて、みんなでしっかり声掛けし合っていました」と河野が振り返ったように、黄色と黒のユニフォームからは常にポジティブな声が発せられていた。

 ただ、時間は容赦なく経過していく。1点のビハインドのまま、時計の針はもう後半40分に差し掛かっていた。都城農が左サイドで獲得したCK。レフティのDF小坂瑠偉(3年)が蹴り込んだキックは、いったん相手にクリアされたものの、数回のラリーを経たボールが再びエリア内へ戻ってくる。

 その瞬間。「だいたいこのあたり」で待っていた河野の足元に球体が届く。すかさず反応して前を向き、躊躇することなく右足を振り抜くと、軌道は低い弾道で右スミのゴールネットへ吸い込まれていく。



「日南学園戦もああいうゴールを決められましたし、みんなから見たらたまたまかもしれないですけど、そこにいたことが大事だと思ってます。偶然っぽいですけど、それも必然かなって」。まさに起死回生の同点ゴール。河野の一撃によって土壇場で生還した都城農の決勝進出は、PK戦の結果に委ねられることになる。

 今年のチームはPK戦に明らかな苦手意識があった。新人戦、インターハイともにPK戦で敗退。もちろん練習は積み重ねてきたものの、三たび巡ってきたこの『11メートルの勝負』に、嫌な予感が頭をよぎったとしても不思議ではない。

 4人目を終えて、スコアは3-3。都城農5人目のキッカーは河野。20番を付けた2年生が、ペナルティスポットへゆっくりと向かう。「PKに自分の中で苦手意識があって、総体は自分が外して負けてしまったので、『ここでその壁をしっかり超えないとな』と思って蹴りました」。飛んだGKと逆のサイドのゴールネットが揺れる。小林秀峰の5人目が蹴ったボールが枠を外れ、熱戦に決着。苦手のPK戦を制した都城農が、37年ぶりとなる全国出場に王手を懸ける結果となった。

 実は5人目のキッカーは“雰囲気”で立候補したという。「自分で手を上げたんですけど、みんなの『なんか行けよ』みたいな雰囲気があったので、逆にみんなのおかげで決断できたかなと思います。決めた時はもうホッとしました」。壁を超えたストライカーに、笑顔が灯った。

 参考にしている選手はヨーロッパやJリーグではなく、もっと身近にいる“先輩”だ。「プロサッカー選手よりも仲間にいる10番の竹之下皓星くんや11番の中原蓮くんは、中学からずっと一緒にやってきているので参考にしていますし、都農自体に結構同じ志和池中からやってきたメンバーが多くて、中学校の時も県大会で準決勝ぐらいまで行っても、日章や(宮崎)日大に負けちゃうことが多かったので、そのメンバーでここまで来られたことも良かったなと思います」。そんな彼らと一緒に臨む決勝戦。ちょうど1年前の記憶を、河野が明かしてくれた。

「去年の決勝は運営する側で鵬翔と(宮崎)日大の試合を見ていて、テゲバジャーロのホームスタジアムの新富で試合したいなとずっと思っていたので、それが一番嬉しいです。点が入ったりするとみんな柵を越えて『ワーッ』てなるじゃないですか。去年の自分はゴール裏にいて、そういうのを止める係だったんですけど、いざこっち側になってみると、『やっぱりああいうことをやるよな』って思いましたし、次は点を獲ったらみんなの中に飛び込みたいですね(笑)」

 “たまたま”を積み重ねてきた嗅覚で生きる都城農のストライカー。ゴールを決めるにしても、スタンドに飛び込むにしても、河野の「だいたいこのあたり」から決勝も目が離せない。



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(取材・文 土屋雅史)

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