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インハイ16強の四中工撃破も「通過点」。宇治山田商は目標の全国へ、決勝も必ず勝つ:三重

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後半3分、スーパーミドルを決めたMF長谷川蒼紀(右から2人目)を中心に喜ぶ宇治山田商高の選手たち

[11.3 選手権三重県予選準決勝 四日市中央工高 0-1 宇治山田商高 四日市市中央緑地陸上競技場]

 四中工撃破も全国への「通過点」――。3日、第101回全国高校サッカー選手権三重県予選準決勝が行われ、宇治山田商高がインターハイ16強の名門・四日市中央工高に1-0で勝利。宇治山田商は8年ぶり2回目の選手権出場を懸けて、11月6日の決勝で津工高と戦う。

 試合終了後、スタンドへの挨拶を終えた選手たちは表情をほぼ変えることなくベンチへ戻って行った。選手権出場34回、全国制覇した歴史も持つ強敵を倒して嬉しくないはずがない。だが、CB城山陽汰主将(3年)は「終わった瞬間とか本当に嬉しい気持ちがあったけれど、何も終わっていないので。次に向けて切り替えようと。自分たちの目標は全国なので、あくまできょうの一戦も『通過点』だとチームのみんなと話していたので、ここで浮かれずに次の一戦へ向けてみんなで行きたい」と引き締めた。

 宇治山田商は前回大会準々決勝でもPK戦の末に四日市中央工を破っている。当時は涙、涙、涙。今年同様に全国大会出場を目標としていたが、「そのつもりはないにしろ、四中工に勝って満足してしまったところがあった」(古西祥監督)。結果は準決勝敗退に終わった。だが、今年は喜びすぎることなく、次へスタート。指揮官は選手たちの自発的な行動に頷き、「今日の終わった後の雰囲気を見ていると、決勝が楽しみ」と期待していた。

 前半は四中工が主導権を握った。開始2分、機動力を活かしてDF背後へ抜け出したMF岡本海里(3年)がいきなり決定機を迎えると、インターハイでも活躍したエースFW平尾勇人(3年)がボールを次々と収め、高い位置取りをする両SBも活用した分厚いサイド攻撃。決定機を相手GK荒木天聖(3年)の好守に阻まれ、ラストパスを城山、池田悠(3年)の両CBに弾かれていたが、繰り返し仕掛けてクロス、ラストパスの本数を増やしていた。

 一方の宇治山田商は前半、シンプルなロングボールが増加。簡単にボールを失ってまた攻められるシーンが続いていたが、U-17ワールドカップ日本代表のFW光田脩人(現早稲田大)を兄に持つFW光田向志(2年)とFW 石橋和空(3年)の強力2トップがそのスピードで相手ゴールを脅かす。

 前半20分、29分とDF背後へ抜け出した石橋がビッグチャンスを迎える。これは、四中工GK 鈴木廉太郎(3年)に阻まれるなど決め切ることができない。また、好守を連発する四中工CB及川惺那(3年)の壁に幾度も阻まれていた。

 それでも、宇治山田商は後半3分にスーパーゴールで先制点を奪う。前線の石橋の落としを受けたMF長谷川蒼紀(3年)がトラップから一つ前に運んで右足一閃。「右サイドにボール出すことも考えたんですけれども、GKが前に出ているのが分かっていたので。自分でもヒックリした」という一撃がゴール左上隅に突き刺さった。

 このゴールで自信を得た宇治山田商はディフェンス面で鋭いアプローチを連発。ファーストDFが相手との距離をしっかりと詰め、ロングボールを入れられても競り負けずボールに触れ続ける。前半はセカンドボールを回収されていたが、後半は中盤の選手たちがコンパクトさを維持。クリアをマイボールに変え、そこから落ち着いて繋ぐなど追加点のチャンスを作り出していた。

 MF中村隆太(1年)や右SB中野景太(3年)ら出足鋭く、ゴール前も堅い宇治山田商の前に四中工の後半のシュート数はわずか3本。18分に左クロスからMF 平野颯汰(2年)が放った左足シュートはわずかに右へ外れ、27分にMF 久山侑人(3年)が狙ったカットインシュートもGK荒木に反応されてしまう。終盤に掛けてロングスロー、CKの数を増やした四中工だったが、攻撃の迫力を欠いてしまう部分も。また、「本当に良い形で守備ができた」(古西監督)という宇治山田商から最後まで1点を奪うことが出来ず、0-1で試合終了を迎えた。72年度の初優勝から、四中工が3年連続で優勝を逃したのはこれが初めてとなる。

 宇治山田商はインターハイ予選決勝で四中工に1-5で大敗。2週間後の県1部リーグでも勝利目前の後半アディショナルタイムに2点を失い、1-2で敗れている。その後、ライバルはインターハイで2勝。古西監督はその後のミーティングで「四中工に勝てば自然と全国でも勝てるチームになっている」と選手たちにメッセージを送ったという。

 四中工に勝つチームに、また勝っても満足しないチームになること。そして、目指す姿に近づいて選手権予選で宿敵を撃破した。この日は普段通りのサッカーができない部分もあったが、自信を得たことも確か。長谷川は「決勝ではチーム勝たせる点を獲ったり、クロスとかパスでアシストしてしっかりと結果でチームに貢献したいです。最近(全国へ)行けていないので、四中工に勝って、決勝もしっかり勝って、全国で自分たちのサッカーができるように、次もしっかりと勝ちたいです」と力を込めた。大事なのは次。攻守に力を備えた宇治山田商が決勝も必ず勝って、選手権切符獲得を全員で喜ぶ。

(取材・文 吉田太郎)
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