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引かずに「前から」、“圧縮型プレス”…全国制覇目指す浜松開誠館が真っ向勝負で静岡学園突破!

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浜松開誠館高が前回全国8強の優勝候補、静岡学園高を撃破

[11.5 選手権静岡県予選準決勝 静岡学園高 1-2 浜松開誠館高 エコパ]

 全国制覇への難関を真っ向勝負で突破――。第101回全国高校サッカー選手権静岡県予選準決勝が5日に行われ、前回全国8強の静岡学園高浜松開誠館高が激突。浜松開誠館が2-1で逆転勝ちした。浜松開誠館は11月12日の決勝で藤枝東高と戦う。

 J内定2選手を擁した静岡学園からの白星も、まだ目標への通過点でしかない。初優勝した18年度大会決勝や他大会でこれまでも静岡学園からの勝利を経験している浜松開誠館だが、それらは相手に押し込まれながらも耐え切っての白星だったことも確か。だが、この日は80分間前に出続けて内容でも名門を上回った。

 元清水FWの青嶋文明監督は、「(相手が静岡学園でも)そこをきちっと通過しないと、その先の全国制覇って見えてこないので」と説明する。プレミアリーグWESTで4位につける強豪相手でも引かずに戦い抜く見事な80分間だった。

 序盤から互いに切り替えの速い攻防戦に。静岡学園は10分、G大阪内定MF高橋隆大(3年)のスルーパスからFW神田奏真(2年)が左足を振り抜く。一方の浜松開誠館は奪ったボールを逆サイドに展開。左WB前田康尋主将(3年)と右WB若尾直哉(3年)の両翼がスプリントして崩しに係る。

 その中で主導権を握ったのは浜松開誠館の方。個々のテクニック秀でた静岡学園に対して、ファーストDFが振り切られることなく対応する。また、サポートした選手たちと連動した守備で相手にビルドアップを許さない。加えて、高橋に対しては前田が、また名古屋内定CB行徳瑛主将(3年)に対してはFW坂上輝(3年)が、マンマーク気味について彼らにボールを入れさせなかった。

 ファウルすれすれで厳しくチェックしてくる浜松開誠館の前に、静岡学園はゆとりを持つことができず、自然と苦しいパスやドリブルが増加。跳ね返されてセカンドボールを拾われるという悪循環に陥っていた。それでも、行徳の1タッチの縦パスなどで攻め返す静岡学園は、26分に高橋がインターセプトから仕掛けて右足シュート。32分には右サイドを抜け出した高橋がGKをかわしてラストパスを送る。

 浜松開誠館はハイプレスが利いていたが、ボールから遠い選手が狙いきれずにピンチも。静岡学園は相手のわずかな隙を逃さずに先制する。前半35分、MF寺裏剣(3年)の左クロスに飛び込んだ高橋が右足ダイレクトで合わせて1-0。だが、前田が「『走り切らなきゃな』と思って、後半始まる前に『悔いないように、助け合ってプレーしよう』とみんなで話し合ったのでそこを100%できたので良かったと思います」と振り返ったように、浜松開誠館はギアを上げて臨んだ後半に試合を引っくり返す。

 後半3分、浜松開誠館はMF今井航(3年)の左CKを坂上がGKと競りながらねじ込んで同点。さらにデザインされたセットプレーや、坂上のポストプレーから生まれたチャンスでMF菅原太一(2年)が決定的なヘッドを放つなど、勝ち越し点を目指す。

 後半は前半以上と言える守備。青嶋監督が「“圧縮型ハイプレス”と言っていたんですけれども、相手に変えさせないように。我々の走る距離も短くなるので。それを思った以上にやってくれたと思います」。味方のために助け合いながら走った浜松開誠館が勝ち越し点を奪う。

 後半20分、浜松開誠館は右サイドで相手ボールを奪って縦パス。坂上に対する静岡学園DFの対応が乱れてMF松本大樹(3年)が抜け出す。最後はGKを引き寄せてからのラストパスを菅原が右足ダイレクトでゴールへ沈め、2-1とした。

 静岡学園は選手交代を交えて反撃するが、坂上が「自分たちの良さを出すためには(青嶋)監督からも試合前に言われたんですけれども、引くんじゃなくてやっぱり前からしっかり戦いに行こうというのはあって、そこでは上手く出来て良かったです」という浜松開誠館はハイラインを維持して相手が攻め切ることを許さない。

 37分、静岡学園は右CKから行徳がヘディングシュートを放つもわずかに枠上。40分には細かくパスを繋いで高橋が右足を振り抜くも、わずかに左外へ外れてしまう。静岡学園は終盤になってようやく繋いで前進するシーンが増えていたが、浜松開誠館は集中力を切らすことなく戦い切って2-1で勝利。前評判の高かったV候補筆頭を破って決勝へ進出した。

 闇雲に前から行くのではなく、終盤勝負を見越してのペース配分にも成功。青嶋監督が「彼らが落ち着いてプレーを楽しめるように、自分の力を出せるようにというのは口酸っぱく言いました」と語るように、静岡学園に怯むことなく、自分たちの走力や左利きのDF原田渉夢(3年)や松本らの技術力、質の高いポジショニングなど、自分たちの良さを大一番で発揮することを意識し、出し切った。

 だが、今回の白星もあくまで通過点。青嶋監督は「とにかくもう1試合やらせて頂けるので彼らの良いところを出せるように、笑顔でプレーできるようにサポートしたい」と語り、前田は「まだ通過点に過ぎないので。次の決勝はまず勝つこと。もっと修正できる点はあるので、それへ向けて一週間準備して、全国に行けるように頑張りたい」と誓った。対戦相手の分析など106人の部員全員が役割を持って戦い、静岡制覇へ。そして、目標の全国制覇へ一歩前進する。

(取材・文 吉田太郎)
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