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今年は「粘り強く、泥臭く戦う」ドリブル軍団・聖和学園、東北学院をPK戦の末下し6年ぶりの全国へ

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6年ぶり5回目の選手権出場を決めた聖和学園高

[11.5 選手権宮城県予選決勝 聖和学園高 0-0(PK6-5) 東北学院高 ユアテックスタジアム仙台]

 第101回全国高校サッカー選手権の宮城県予選は5日、仙台市のユアテックスタジアム仙台にて決勝が行われ、5年連続決勝進出の聖和学園高と5年ぶり決勝進出の東北学院高が対戦。試合は互いに決定機をつくりながらも得点を奪えず0-0で延長戦でも決着がつかずPK戦に突入。PK戦を6-5で制した聖和学園が6年ぶり5回目の全国大会出場を決めた。

 前半は聖和学園が自慢の攻撃陣が東北学院陣内に襲いかかり、FW桃原泰河(3年)やエースナンバー14を背負うMF藤田晴(3年)、共にスピードが武器の両サイドハーフMF榁木良雅(3年)、MF石澤海陽(3年)が決定機をつくっていく。

 しかし、東北学院も守備陣が奮闘する。橋本俊一監督は「6月の県高校総体の決勝では下がりすぎてやられたので引かずに戦いました」と、DFラインから前線までをコンパクトに保ち、できるだけ高い位置でボールを奪おうとした。キャプテンDF佐藤春樹(3年)は「当初の予定では、もう少し前からプレスしてボールを持つ時間を増やしたかったのですが、やはり少し下がってしまいました」とそれでも自陣に押し込まれる時間が長くなったことを反省。しかし、DF大友豪士(3年)と共に最終ラインで踏ん張りを見せ、シュートを打たれるシーンがありながらも、GK大友陽佑(3年)のファインセーブでしのぎ、前半を0-0で折り返した。

 後半は東北学院も決定機をつくれるようになっていく。ペナルティエリア近くでファウルを誘い、エースストライカーFW渡邉幸汰(3年)がフリーキックを放つが、惜しくも決めきれない。後半終了間際にはMF牧田侑大(3年)のシュートが枠を捉えたが、聖和学園GK菅井一那(3年)がパンチングでかき出し、あと一歩でゴールを奪えなかった。後半を終えて0-0で試合は延長戦に突入する。

 延長戦は両チームとも足をつる選手が出るなど死闘となった。そんな中、豊富なスタミナを見せた聖和学園DF金井太一(3年)が右サイドを駆け上がりシュートに持ち込む場面をつくる。金井は延長後半終了間際にもゴール前でクロスに合わせたが、シュートは枠の外へと外れた。0-0のまま延長戦も終了し、試合はPK戦に突入する。

 PK戦先攻の聖和学園は1人目の桃原がクロスバーに当ててしまい失敗。その後東北学院は3人目まで成功。聖和学園も2人目から4人目が成功し、迎えた東北学院の4人目はキャプテンの佐藤だった。左に蹴ったPKを聖和学園GK菅井がパンチングでセーブ。その後5人目、6人目がともに成功。7人目は聖和学園は藤田が成功し、東北学院は途中出場のMF野木夢翔(3年)が左に蹴るが、これも菅井がセーブしてPK戦終了。6-5で聖和学園が勝利し、6年ぶりの全国への切符を勝ち取った。

 聖和学園の加見成司監督は「簡単にはいきません。決勝の難しさを感じました。相手のGKも良かったですし、DFがしぶとかったです」と相手を讃えた。それでも何度かあったピンチをしのげたからこそ聖和学園も前後半、延長戦の100分を無失点で終えられた。「意地のぶつかり合いで最後ゴールを割らせなかったのが良かったです」と守備陣の奮闘を喜んだ。

 春先はプリンスリーグ東北で複数失点を喫する試合も多かった守備陣だが、キャプテンのDF小野喬(3年)は「インターハイを経験して、夏から意識が変わりました」と守備対応が改善されたという。「粘り強く、諦めず、泥臭くやる。これが今年のチームのテーマです」と語る小野。どうしても派手なドリブルサッカーのイメージが強い聖和学園だが、今年のチームはこうした泥臭さがある。前線やサイドハーフの選手も積極的に守備に関わり、厳しい時間帯も辛抱できる勝負強さがある。「ドリブルに特長がありますし、セットプレーも注目してほしいですね。自分たちのサッカーを出して日本一を取りたいです」と今年の学年の目標である「日本一」をこの選手権で達成しようと意気込んだ。

 あと一歩で勝利を逃した東北学院だが、県高校総体の時はやや消化不良のような印象も受けたが、この試合では最後まで守備の集中が途切れず、ファイティングポーズをとり続けた。「選手たちはやり切った感がありましたね」と橋本監督は敗れたものの、ロッカールームですがすがしい表情を見せていた選手たちの頑張りを讃えた。守備で奮闘した佐藤も「ラインを上げて攻める守備ができたのが成長したところです」と胸を張った。

 佐藤はPKを失敗してしまったが、「練習で左に蹴っていて、ここでコースを変えたら後悔すると思って左に蹴りましたが、今、後悔しています。もう少し徳を積んでいたら良かったのかな」と冗談も交えながら振り返るなど、やるだけのことをやっての敗戦に一定の充実感を感じていた。残る公式戦は12月のプリンスリーグ東北参入戦となるが、「後輩は全国に行ける力を持っています。良い経験をさせたいので置き土産として頑張りたいです」と、最後の大仕事へ意欲を見せた。

(取材・文 小林健志)
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