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上手さに加え、強さも持つチームへ。名門・藤枝東が延長3発で浜名を振り切り、7年ぶりVへ王手:静岡

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藤枝東高が100分間の激闘を制して決勝進出

[11.5 選手権静岡県予選準決勝 藤枝東高 3-1(延長)浜名高 エコパ]

 藤枝東、100分間の激闘を制す――。第101回全国高校サッカー選手権静岡県予選準決勝が5日に行われ、ともに公立校の藤枝東高浜名高が対戦。延長戦の末、藤枝東が3-1で勝ち、11月12日の決勝(対浜松開誠館高)へ進出した。

 昨年度準々決勝の再戦は前半、リベンジに燃える浜名ペースで進んだ。前半5分、相手CKのロングカウンターから抜け出したFW高桒琉吾(3年)が、左ポスト直撃の左足シュート。互いにボールを持つと丁寧にビルドアップするチームだが、トランジションの速い展開の中でより浜名がボールを握って攻撃を繰り出した。

 インターハイ予選優勝校の磐田東高やプリンスリーグ東海2位の藤枝明誠高を破って勝ち上がってきた浜名は、10番MF荻涼哉(3年)やMF朝井陽之(2年)らキープ力の高い選手が多く、CB河合大樹主将(3年)やCB長谷明紀(3年)から質の高いボールが中盤、前線へ入っていた。

 相手の厳しいチェックの前に前半シュートゼロに終わった藤枝東は、後半開始から2年生の大型FW植野悠斗を投入。10番FW井藤璃人(3年)の1トップから2トップへ変更し、またある程度割り切りながらゴール前を固めて守ることも意識づける。植野を起点にボールが動き出した後半は、MF中島悠翔(3年)のドリブル突破から植野がシュートへ持ち込むなどサイド攻撃も増加。また、26分にはMF海貝俊輔主将(3年)の左足ミドルがクロスバーを叩いた。

 だが、後半も浜名がより狙いとする形を表現していた印象だ。ドリブラーのMF竹内拓空(3年)投入で攻撃の厚みも向上。27分には左サイドから繋いで竹内が右足を振り抜くシーンもあった。ただし、内藤康貴監督は「ボールは握ったけれど、もっと前に前に行かないといけない」。終盤へ向けて、徐々に藤枝東に押し返される時間帯が増えてしまう。

 押し込んでサイドから崩しにかかる藤枝東は40+2分、MF泉新之助(2年)が右サイドから強烈な左足シュート。これは浜名GK永田歩大(3年)が反応し、得点にはならない。それでも後半のシュート数は6本へ増加。またゴール前での守りも堅かった。CB寺田史朗(3年)は「コンパクトに守れたことと、あとはゴール前で体を張ってシュートをどこかに当てるという意識が良かったと思います」。注目の2年生レフティー、渡辺皐(2年)ら技巧派の揃う藤枝東だが、上手く繋げない中でも戦い方を変えて流れを引き寄せる力、我慢強く戦える力を見せた。

 そして、0-0で突入した延長戦で藤枝東は3得点を奪い取る。延長前半4分、藤枝東は右SB野田隼太郎(2年)が相手シュートをブロック。こぼれ球を拾った植野のキープから泉の好パスが切り替え速く駆け上がった野田へ通る。ここから野田がさらに深くドリブルで切れ込み、マイナスのラストパス。走り込んだ井藤が右足ダイレクトのシュートをニアへ突き刺し、先制した。

 浜名は9分、高桒の左足ミドルが枠を捉えたが、藤枝東GK石坂地央(3年)がファインセーブ。それでも、浜名は直後のCKからゴール前の混戦を作ると、最後は長谷が右足で蹴り込み、同点に追いついた。

 藤枝東にとっては痛恨の失点。だが、元主将で就任1年目の鷲巣延圭監督が「失点しても崩れなくなったところが成長。インターハイの時は(藤枝)明誠さんに2点目取られて下向いて終わりみたいな雰囲気になってしまったんですけれども、最近は点を取られても下向かずに切り替えてやれるようになってきたので、そういう意味では戦えるようにはなってきた」と認めるチームは逆境を乗り越えて見せる。

 延長後半2分、交代出場MF出水志耀(3年)が敵陣中央から左足FK。これを右外の左SB大場翔太(3年)が頭でゴール前へ折り返す。最後は中央の海貝が右足で押し込み、勝ち越した。さらに4分、出水の右CKを寺田が豪快に頭で決めて3-1。浜名もセットプレーからチャンスを作り返したが、3試合連続3得点と決め切る力も示した藤枝東が決勝進出を果たした。

 藤枝東の鷲巣監督はタフに勝ち切った選手たちに対し、「そこが足りなかったところだと思うので、上手さだけじゃ勝てないってところをしっかり彼らは振り返って、強さも持たないといけないと、こういう形になってきたと思います」。伝統校は最後まで走り切る部分でも相手を上回った。

 海貝が「3年生にとっては最後の大会なので、引退した人たちもいるので、その人たちの分まで戦わないといけないとみんな思っている。この大会、『優勝したい』とみんな口々に出しているので、チームとして良い方向に持っていけていると思っています」という藤枝東は決勝も全員で戦う。

 寺田は「俺たちの代で絶対に全国行くという気持ちでやってきたので、まずは県を獲りたいです」。選手権出場25回、全国優勝4回の名門校も、15年度を最後に選手権から遠ざかっている。上手さに強さを加え、勝つチームに変わってきた藤色軍団。昨年度準優勝の悔しさも込めて決勝を戦い、復活Vを果たす。

(取材・文 吉田太郎)
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