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[MOM4077]実践学園GK宮崎幹広(2年)_切磋琢磨する日常が呼び込んだPKストップ!先輩たちの想いを背負った2年生守護神の躍動

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実践学園高の2年生守護神、GK宮崎幹広はPKを止めてガッツポーズ!

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ supported by sfida]
[11.5 高校選手権東京都予選Aブロック準決勝 実践学園高 1-1 PK5-4 東海大高輪台高 味の素フィールド西が丘]

 1つしかないポジションを争うライバルでもありながら、快く自分をピッチに送り出してくれた先輩たちのためにも、ここで終わるわけにはいかない。自分が止めれば、まだ日常は続いていく。絶対に止める。絶対に。

「キーパーの3年生とは練習も一緒にやっていますし、本当に面白い先輩がいっぱいいて、良くしてもらっているんです。そういう先輩たちがスタンドで応援してくれているわけですし、ベンチでも支えてくれる人がいて、その中で2年生の自分が試合に出ているので、やっぱり1つ1つのプレーに対する責任感は凄く大きくて、プレッシャーもあったんですけど、先輩もみんな『楽しんでやってこい』って言ってくれたので、楽しくプレーできました」。

 実践学園高のゴールマウスを託された守護神。GK宮崎幹広(2年=練馬石神井中出身)は先輩たちの想いを背負って、西が丘のピッチに立っていた。

「ウチはほとんど3年生のキーパーを使ってきて、2年生というのはあまり記憶にないんですよね。だから、今日も加藤の先発も十分あったかなと。本当に最後の最後までどっちを使うかは決まらなかったんです」。実践学園を率いる深町公一監督はこう語る。3年生の加藤圭乙と2年生の宮崎。チームには高い実力を有する2人のゴールキーパーがいる。

「自分の中でも凄く意識を置いていますし、セービングとキックがかなり上手な先輩で、自分にはない武器を持っていて、凄く尊敬している先輩なので、毎日毎日の練習が勝負です」とは宮崎。たった1つの出場枠を巡って、切磋琢磨を繰り返してきた2人。準々決勝は加藤が先発出場していたが、この日は宮崎がスタメンに指名される。

 試合は前半終了間際にセットプレーから失点。1点を追い掛ける展開を強いられる。「1点獲りたいという想いはみんなあったと思いますし、前掛かりになってしまったところで、高輪台さんの裏に対するカウンターの対応がちょっとおろそかになってしまうところがあったので、自分としてはディフェンスの位置やボランチを落とすところを意識して声掛けしていました」(宮崎)。全体を見渡しながら、的確な指示を送っていく。

 後半23分。MF古澤友麻(2年)が同点ゴールを決める。最後方からその軌道を見ていた宮崎も「美しいなと思いました。特等席から見ていたので、凄く気持ち良かったです。アイツも凄く練習しているんですけど、あんなのは見たことがないですね。意外でした(笑)」と称賛するゴラッソ。スコアは1-1のまま、勝敗の行方はPK戦へ委ねられることになった。

 チームメイトと次々とハイタッチを交わす。もちろん加藤ともハイタッチして、短く抱擁。強い気持ちを受け取って、ゴールマウスへと歩みを進める。練習してきたことを思い出す。スタンドの先輩たちの顔を思い浮かべる。ここで終わるわけにはいかない。自分が止めれば、まだ日常は続いていく。絶対に止める。絶対に。

 東海大高輪台の2人目。不思議と頭の中はクリアだった。「キッカーの助走だったり、目の位置、体重移動である程度予測して飛びました」。自らの左へ蹴り込まれたボールを、左手1本で弾き出す。ガッツポーズ。咆哮。「本当にこの1週間はPK戦のことを考えて練習していたので、練習の成果が出たことは凄く嬉しかったですね」。両手をスタンドへ掲げてみせる。

 5人目のMF関根宏斗(2年)のキックがゴールネットを揺らし、勝利が決まった実践学園の選手たちは一目散に殊勲の守護神へと全速力で走り出す。その中にはもちろんあの男の姿もあった。

「『スーパー!スーパー!』と言ってくれました。本当にテンションを上げてくれる人ですし、今回は自分が出させてもらったんですけど、サポートの面や自分のメンタルは先輩が支えてくれたので、やっぱり勝利が決まった瞬間に自分のところに来てくれたのは嬉しかったです」。想いを共有する宮崎と加藤は、静かに、笑顔で抱き合った。



「今日は特に負けたら終わりですし、プレッシャーもありましたけど、今日勝ったことでまた練習からポジション争いができて、それを決勝に繋げることもできるので、本当に良かったなと思います」。この1週間は、また今まで通りの競争がスタートする。いよいよ決勝戦。対峙するのは國學院久我山高。相手にとって不足はない。

「久我山はメチャメチャ強いですよね。今日の試合内容だとハッキリ言ってダメだと思います。今日の最後のミーティングで深町先生もおっしゃったんですけど、チームとしてやることは凄く明確になってきているので、守備のところのあと一歩行くところ、詰めるところ、カウンターの質、セットプレー、そういうちょっとしたところでゲームが決まってしまうと思いますし、自分たちの個の強度を上げながら、明確な形で攻められたらいいかなと思います」。

「相手はどこからでもシュートを打ってくる感じですし、ゴール前のパス回しも凄く落ち着いていて、遊び心もありますし、そういう意味では個人としてはボールウォッチャーにならないようにはしたいと考えていて、一番全体が見えているのはキーパーなので、ほかの選手が見えない視野を確保して、落ち着いてプレーできるように支えたいと思います」。

 ピッチに立っても、立たなくても、やるべきことは変わらない。チームの勝利のために、今できることを、全力で。中体連出身の2年生守護神にとって、決勝という大舞台であっても、やるべきことは何も変わらない。



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(取材・文 土屋雅史)

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