beacon

履正社決勝進出もMF名願斗哉は徹底マークに苦戦「もっと存在感を」三笘の大活躍、川崎Fの終盤戦も刺激に日本一へ

このエントリーをはてなブックマークに追加

履正社高MF名願斗哉

[11.6 選手権大阪府予選準決勝 履正社高 2-0 大阪商大堺高 ヨドコウ]

 ダークホースの大阪商大堺高を迎え撃った履正社高の大阪府予選準決勝、来季から川崎フロンターレ加入が内定しているMF名願斗哉(3年=G大阪ジュニアユース)は大苦戦を強いられた。「自分のところに集まってくるのは最初からわかってたんで、なるべくシンプルにとは思ってたんですけど、自分の思うようにさせてもらえなかった」。この一戦で向き合った課題と収穫を糧に、全国行きをかけた1週間後の最終決戦へと挑んでいくつもりだ。

 大阪府3部リーグ所属ながら近大附高、関大一高、金光大阪高といった府屈指の強豪を破り、今大会の台風の目となっていた大阪商大堺との一戦。名願には徹底的なマンツーマン戦術が敷かれていた。得意のエリアでボールを受けようとすれば、マッチアップしたDF山中光生(3年)やMF相原時成(3年)が背後に迫り、中盤まで下りても執拗についてくる。あまりの密着ぶりは世代屈指のドリブラーにとっても「今まで経験ない」というほどのものだった。

 そこで問われたのは周囲との連動だ。左サイドで名願とコンビを組んでいるのは同じくJクラブからオファーを受け、来季は徳島ヴォルティスに加入することが決まっているDF西坂斗和(3年)。名願は高校屈指の推進力を持つSBに「相手が引いてくるならそのぶんスペースもできるので斗和を走らせた」と縦突破を委ね、自身は後方支援に回るイメージもあったそうだが、相手の対策を上回ることはなかなかできなかった。

 もっとも、一つも結果につながらなかったわけではない。前半32分には左サイドでボールを受けると、味方に預けると見せかけてペナルティエリア左を切り裂いて折り返しのパスを配給。直接味方には届かなかったが、このこぼれ球からMF小田村優希(3年)の先制点が生まれた。「シンプルにワンツーで味方を使おうかと思ったけど、あまり相手が寄せてこなかったのでターンできるかなと思った。綺麗にターンできてクロスは良くなかったけど、結果的にゴールになって良かった」。苦戦を強いられた中でも、前半に決まった先制点がファイナル進出を手繰り寄せる決勝点となった。

 それでも名願が自身に求めるのはさらに高いプロ基準だった。「マンマークでも多少のマークなら自分はできないといけないレベルだと思っているし、もっと存在感を出していかないといけない」。ドリブルの質も大事だが、さらに重要なのは動きのバリエーション。「自分は基本足元で受けることが多いけど、斜めに背後に走る動きとかを増やしていけば、相手のラインが下がってもう一回足元でもらえる」と反省点を見つめ、さらなる成長を誓った。

 準々決勝の大阪産大附高戦では自陣で相手セットプレーのこぼれ球を拾い、約70mをドリブルで駆け上がって単独でカウンターを完結させるゴールも披露。「たまたまではあるけど自分的には一番上手くいったゴールになった」。その模様を収めたYoutube中継の映像はSNSで大きな話題を呼び、名願のもとにも次々に反響があった。しかし、この日は同様のインパクトは見せられず。「見ている人も楽しむためにサッカーを見に来ていると思うので、もっと見ていて楽しいプレーもしたい」とあらためて意気込んだ。

 来季加入する川崎FではMF三笘薫(ブライトン)にプレースタイルを重ねる声もあり、大きな期待が寄せられている。「三笘選手になろうとは思っていないし、自分なりにできることはある」とプライドをのぞかせつつも、「尊敬はしている」と名願。ちょうど前日には三笘がプレミアリーグで初ゴールを挙げたが、「ゴールがヘディングだったので意外やなと思ったけど、そういうバリエーションも持ってるんだなと。自分はあまりヘディングで取っていないのでゴールのバリエーションを増やしていかないといけない」と刺激も受けていた。

 また惜しくもJリーグ3連覇を逃したものの、GKに退場者を出しながら勝ち切ったチームの強さにも感銘を受けていたようだ。「一人少なくなった状況でもゴールを目指していった結果が勝利につながった。結果的に優勝は逃したけど、自分もあそこの試合に絡めるように頑張りたい」。そうした未来のためにはまず、高校年代で圧倒的なパフォーマンスを見せたいところだ。「チームでも個人としても日本一という目標があるので、やるべきことをしっかりやって頑張っていきたい」。この冬の主役になる活躍を誓った18歳は1週間後の決勝戦に向けて「今日は物足りない感じだったので、決勝ではもっと暴れられれば」と力を込めた。

(取材・文 竹内達也)
▼関連リンク
●【特設】高校選手権2022

TOP