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上州のタイガー軍団が逞しく掴んだ夏冬連覇への挑戦権。前橋育英は初の全国を狙う共愛学園に6発快勝!

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前橋育英高は選手権で夏冬連覇にチャレンジ!

[11.6 高校選手権群馬県予選決勝 前橋育英高 6-0 共愛学園高 正田醬油スタジアム群馬]

『日本一を獲ったチーム』という見られ方が、もう変わることはない。栄冠を勝ち得た夏を経て、なかなか結果の出ない時期を経験したからこそ、腹は括っている。すべてを受け入れた上で、さらに今までの自分たちを超える。それはすなわち、冬の日本一も真剣に狙うということに他ならない。

「見られるプレッシャーというのは凄く感じますけど、それをみんなで楽しむぐらいのメンタリティを持ちたいですし、そこは気持ちの問題だと考えているので、これからも気負い過ぎることなくやっていこうと思います」(前橋育英高・徳永涼)。

 盤石の予選突破で、逞しく掴んだ夏冬連覇への挑戦権。6日、第101回全国高校サッカー選手権群馬県予選決勝、インターハイ王者の前橋育英高と初の全国を目指す共愛学園高の対峙は、前半と後半に3点ずつを奪った前橋育英が、共愛学園を無失点に抑え、6-0で快勝。2年連続となる全国出場を決めている。

「もっとボールを持てればとは思いましたけど、さすがにそれは育英がやらせてくれないので、その中でも本当にチャレンジしてくれましたね」と奈良章弘監督が話したように、共愛学園の立ち上がりは決して悪くなかった。MF桑子佳太(2年)とキャプテンを務めるFW竹内海人(3年)のドイスボランチを中心に、果敢なプレスで相手のパスワークを寸断しながら、奪ったボールは右のMF松本陽生(2年)と左のMF松井瑞葵(3年)の両サイドハーフを素早く使い、MF横井勇真(3年)を生かしたカウンターへの狙いも十分。15分には決定的なピンチをDF日向野麗司(3年)がスーパークリアで凌ぐなど、守備も高い集中力で対抗していた。

 だが、均衡はタイガー軍団の左サイドバックによって破られる。17分。MF青柳龍次郎(3年)の展開から、右サイドでMF大久保帆人(3年)のスルーパスに走ったDF井上駿也真(3年)の折り返しに、走り込んだDF山内恭輔(3年)の豪快なシュートが左スミのゴールネットへ突き刺さる。「今日はゴールを狙っていました」という左サイドバックが、右サイドバックのアシストで先制点。前橋育英が1点のリードを奪う。



 追加点は30分。ここも青柳が左へ振り分け、上がってきた山内は深い位置まで切れ込んで中央へ。フリーで受けたFW山本颯太(3年)の反転シュートが、鮮やかに揺らしたゴールネット。存在感を高めてきたストライカーの2戦連発弾で点差を広げると、38分には「自分は途中交代からでも全力でやって、1試合でも早くスタメンを取り戻せるようにこの選手権期間はやってきました」と語った、今大会初スタメンのFW高足善(3年)がPKで3点目をゲット。3-0で前半を折り返した。

 後半は共愛学園が先に決定機を迎える。8分。右サイドで粘り強くキープした横井が、そのままエリア内へ侵入してフィニッシュ。ここは前橋育英不動の守護神、GK雨野颯真(2年)がファインセーブで凌ぎ、こぼれを拾った松井のクロスも雨野が防ぐも好トライ。15分には前橋育英もFW小池直矢(3年)が決定的なシュートを放ったが、前半からアグレッシブなプレーの目立った共愛学園のGK佐藤明珠(1年)がビッグセーブ。ファイナリストとしての意地を見せる。

 16分には松本のフィードに、最前線へポジションを移していた竹内が完璧なトラップからGKをかわし、ゴールへとボールを流し込む。ここはオフサイドの判定で得点とはならなかったものの、以降も抜群の飛距離を誇るロングスローを竹内が何度も投げ込み、相手ゴール前を脅かすなど、小さくないビハインドを負っても、共愛学園が取り続けるファイティングポーズ。

 それでも終盤は黄色と黒の虎が獰猛に牙を剥く。31分。井上のスローインを小池が繋ぎ、途中出場のMF根津元輝(3年)の強烈なシュートのこぼれに、山内が詰めて4点目。34分にもキャプテンのMF徳永涼(3年)が通したラストパスから、この日もキレまくっていた大久保が5点目を挙げれば、37分には根津の左CKに、DF齋藤駿(3年)が完璧なヘディングで2戦連発弾を叩き込んで6点目を記録。圧倒的な攻撃力を披露する。

「まあ、一言で言えば強い!点も獲れそうで獲れないところがやっぱり大きいかなと。でも、ウチも逃げ隠れせず、真っ向勝負をしてこれだから、夏とスコアは一緒だけど、内容的には抵抗できたかなと思います」とは奈良監督。両者が対峙したインターハイ予選準決勝とまったく同じ6-0というスコアで勝利を収めた前橋育英が、共愛学園を下して堂々の群馬制覇を飾り、全国切符を手繰り寄せる結果となった。

 帝京長岡高。矢板中央高。帝京高。そして、静岡学園高。各地から強豪校敗退の報が伝えられる中、夏の全国王者は兜の尾を締め続けていた。「昨日もみんな静学とかの結果を見ていて、涼を中心に『こうならないようにしよう』と言っていました」と明かすのは高足。9日間で3試合というスケジュールが組まれた県予選も決して簡単な戦いではなく、健大高崎高とのセミファイナルも終了5分前に決勝ゴールを奪う辛勝だった。

「(準々決勝で対戦した)常磐さんは常磐さんでしっかりリトリートする戦術を取ってきたり、健大さんはハイプレスが凄くて、良いチームでした。県の予選を突破するのも難しいですね。また勉強させてもらいました」とは山田耕介監督。最大のライバルと目されていた桐生一高の早期敗退こそあったものの、やはり『日本一のチームを食ってやろう』という他校のモチベーションをひしひしと感じていたことも間違いない。

「ホッとした気持ちもありますけど、内容的にも改善する部分がたくさんあったので、ここからまたしっかりやらないといけないなと思いました。勝たないといけないという県予選のプレッシャーはありましたけど、自分たちはもっと細かく繋いで、相手の逆を取ってというサッカーなので、直矢と山本に当てるサッカーに頼り切りになってしまったことで、みんなの距離感も悪くて、それがちょっとダメでしたね」と気を引き締めた徳永も、改めて選手権という高校最大のステージへ向けて、こう想いを馳せる。

「自分は本当に小さい頃から選手権を見ていて、凄く憧れていた舞台でしたし、その中で『国立で試合をやる』という夢があったので、それに一歩一歩近付いてきている実感はあります。やっぱり選手権は特別なものですし、そこで夢を掴みたいなと思います」。

 日本中で彼らだけが目指すことを許されている夏冬連覇。小さくないプレッシャーにさらされてきた上州のタイガー軍団・前橋育英が、まずはその目標に向けての第一関門を、力強く突破している。



(取材・文 土屋雅史)
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