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失点、天候急変、延長戦突入も失わなかった平常心。王者・青森山田が青森県予選26連覇!

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青森山田高が青森県予選26連覇を達成

[11.6 選手権青森県予選決勝 青森山田高 2-1(延長)八戸学院野辺地西高 カクスタ]

 青森山田が26連覇達成! 第101回全国高校サッカー選手権青森県予選決勝が6日に行われ、前回日本一の青森山田高八戸学院野辺地西高と対戦。延長後半8分にFW 小湊絆(3年)が決勝点を決めて2-1で勝ち、26年連続28回目の選手権出場を決めた。

 いずれもプレミアリーグ勢の流通経済大柏高(千葉)、桐生一高(群馬)、静岡学園高(静岡)、そして近年の選手権で3位に入っている帝京長岡高(新潟)、矢板中央高(栃木)、そして今夏のインターハイ準優勝校・帝京高(東京)が決勝を前に敗れる波乱含みの都道府県予選。青森山田も難しい戦いを強いられた。だが、平常心を失わず、延長戦を含む100分間で八学野辺地西を撃破。今年も選手権出場校に名を連ねた。

 青森山田は前半10分、左FKの流れから右SB渡邊来依(3年)が滞空時間の長いクロス。CB小泉佳絃(2年)がDF、GKに競り勝つ形で繋ぐと、最後はCB三橋春希(3年)が頭でゴールへ押し込んだ。

 立ち上がりからサイド攻撃、セットプレーで相手にプレッシャーを掛け、早い段階で先制する青森山田の必勝パターン。狙い通りの得点で一気に流れが傾くかと思われた。だが、この後、青森山田が仕留め切れなかったこと、また八学野辺地西が勇気を持って繋いで勝負したこと、加えて天候が急変したこともあって試合はもつれる展開となる。

 青森山田は右サイドで圧倒的なスピードを見せるSH奈良岡健心(3年)を活用。シンプルな攻撃からゴール前のシーンを作り出す。だが、至近距離からのシュートを相手GK西野春徹(3年)に止められてしまうなどゴール前の質を欠いてしまった。38分にはこの日攻守に存在感のあった渡邊がクリアボールを拾って強烈ミドル。だが、これも左ポストを叩いてしまう。

 一方の八学野辺地西は10番MF金津力輝(3年)が身体能力の高さを活かしてボールキープ。FW鳥谷部塁(3年)のポストワークを活用するなどグラウンダーでテンポ良くボールを動かして前向きの状況を作り出して見せる。23分には、MF小向光(2年)がカットインから右足シュート。クリアで逃げるのではなく、幾度か繋いで押し返せていたことが大きかった。加えて、CB布施颯大主将(3年)らDF陣が競り合いで踏ん張り、GK西野の好守などもあって、1点差のまま食らいつく。

 後半、青森山田は連動した攻撃を続け、セットプレーを獲得。またCB三橋が声でチームを引き締めるなど1-0のまま試合を進める。だが、八学野辺地西がスーパーゴールで同点に追いついた。後半15分、左中間のFW山端琉央(3年)がPAのわずかに外側でFKを獲得。キッカーのCB高木和(2年)が右足を振り抜く。すると、素晴らしい孤を描いた一撃がファー上へ突き刺さり、同点となった。

 この日の青森市は午前中に激しい雨。試合開始直前から止んでいた雨が再び降り出し、それはみぞれ混じりの強雨となった。球際、攻撃に迫力のある青森山田は23分、縦に速い攻撃から小湊が決定的な左足シュート。八学野辺地西も奪い返しの部分で健闘して速攻を繰り出すなど、オープンな展開となった。

 青森山田は後半29分に怪我から復帰のCB多久島良紀主将(3年)を投入。小泉をボランチに上げる。その青森山田の選手たちは、八学野辺地西がボールを持ったり、好守を見せるたびに会場が沸くことを実感していた。

 八学野辺地西は左SB齋藤晃葵(3年)のロングスロー、CK、カウンターでゴールを目指してくる。そして、雨が降り続け、アクシデントが起きてもおかしくないような状況。だが、多久島が「冷静にやろう」と言葉がけする中、青森山田は一つひとつの競り合いで上回ること、PA付近では「ゴールを隠す」守備を徹底する。

 試合は1-1で延長戦へ。青森山田は失点後、延長戦を含めて被シュートゼロを貫いた。黒田剛監督は「しっかり自分たちを見失うことなく、延長で決着をつけるというところまで冷静に行けたところが良かった。何があっても平常心で行くことをミーティングで伝えていた」。八学野辺地西の勢いある攻守に落ち着いて対応。そして、ゴール前で必死の守りを見せる八学野辺地西を相手に、繰り返し攻め続けてゴールをこじ開けた。

 延長後半8分、青森山田は中央からパスを繋ぎ、奈良岡が1タッチでのスルーパス。これに走り込んだ小湊が右足シュートを右隅へねじ込む。ゴールと同時に足を痛めた10番はピッチに背中をつけたままガッツポーズ。再び晴れ間の出た空の下、選手たちが喜びを全身で表現し、ベンチ前では多久島と黒田監督が抱擁していた。この後もシュートを打たせずに守り抜いた青森山田が2-1で勝利。重圧を乗り越えて選手権予選26連覇を達成し、県内公式戦の連勝記録を388へ伸ばした。

 八学野辺地西がスーパーゴールを決め、自分たちのシュートはポストを叩いたほか、精度を欠いた。加えて、相手の粘り強い守備、悪天候など波乱の要素はあったが、王者は屈することなく平常心で勝利。黒田監督は「プレミア3チームが負けて、静学も負け…それくらい勝ち続けるというのは難しいことなので、山田の教育や指導の中でこういうブレないサッカーができるようになっていったんだと思う」。3冠の次世代としてスタートした今年は、プレミアリーグEASTで5連敗を喫し、インターハイは初戦敗退。それでも、青森山田らしい堅守や対応力、ブレずに戦い抜く力、勝ち切る力を身に着けてきた選手たちが、選手権に臨む。

 黒田監督が23年から町田ゼルビア監督に就任。青森山田監督として指揮を執るのはこの決勝が最後で今後はチームをサポートする側に回るが、選手権全国大会はベンチ入りする予定だ。多久島は「(町田監督就任を聞いて、)最初はみんなびっくりしていたんですけれども、最後の最後、日本一を獲って胴上げしようとみんなで言っていたんで、まずはそのスタートラインに立てたので良かったと思います」と頷く。

 ただし、日本一を勝ち取ることは簡単なことではない。多久島は「監督に日頃言われているところが、今日出ていたので本当に大事だなと思いました。シュート1本中の1本が入らないとアクシデントで失点したりというのは起きるとみんな痛感したと思うので、残りの期間で修正したい」と指摘。そして、小湊は「全国大会に出場したというのはスタートラインなので。全国2連覇できるのは他の都道府県どこにもなく自分たちだけなので、そこは王者のプライドと意地を持って戦いたい」と力を込めた。全国決勝の日まで学び続けること。そして、気負わず、平常心で青森山田の強さを発揮し、全国大会の5試合を勝ち抜く。

(取材・文 吉田太郎)
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