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プレミア得点王候補に待望の大阪予選初弾!! “泥臭ゴール”に安堵の履正社FW古田和之介「心の余裕につながる」

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履正社高のFW古田和之介(3年)

[11.6 選手権大阪府予選準決勝 履正社高 2-0 大阪商大堺高 ヨドコウ]

 履正社高のエースFW古田和之介(3年=G大阪ジュニアユース)にこの日、待望の選手権予選初ゴールが生まれた。味方のシュートのこぼれ球をオフサイド気味に押し込む格好となったが、「ストライカーとして得点が欲しかったので、一つ取れたのは心の余裕につながる」と安堵。12日に控える興國高との決勝戦に向け、大きく勢いをつける一発となった。

 履正社のエースを担う古田は2回戦の大阪偕星学園高戦(○3-0)、3回戦の大阪産大附高戦(○3-1)といずれもチームが3得点を奪ってきた中、ここまでノーゴール。高円宮杯プレミアリーグWESTでは今季14ゴールで得点ランキング2位につけ、全国トップクラスのストライカーであることは日々の結果で示してきたものの、今大会に限ってはトーナメントで守備を固めてくる相手に苦戦を強いられてきた。

「どちらかというと裏に抜けてラインを下げて、収めてフリーの味方を使うタイプだけど、相手がブロックを引いてきてCBもSBも自分についてきて、抜けるスペースもなかなかなくて、プレミアとは全然戦い方も相手も全然違っている」。そうした中でも味方を活かすプレーに励み、アシストは重ねていたが、やはり最大の役目はフィニッシャー。「自分もそれに対応してもっとゴールを狙えるようにならないと厳しい」と課題を感じていたという。

 そこで古田が取り組んだのはゴールのバリエーションを増やしていくことだった。「ショートカウンターで背後に抜け出してという形が多くて、その形では得点を取れているけど、背後で抜け出させてもらえない時に足元で受けてミドルシュートであったり、もっとレパートリーを増やしていかないといけない」。この日の準決勝はそうした課題を克服する格好の一戦となった。

 対戦相手は大阪府リーグ3部所属ながら並み居る強敵を次々に破り、史上初めてベスト4あでたどり着いた大阪商大堺高。守備的なスタイルで格上チームのキーマンを抑えながら勝ち抜いてきた今大会のダークホースだが、得点源となる古田への警戒も絶大だった。川崎F内定の左ウイングMF名願斗哉(3年)とともにマンマーカーをつけられ、古田には終始DF横井元(2年)が密着していた。

「右に行っても左に行ってもずっとついてくるし、しかも前に強いCBだったので、なんとかキープして、味方使って、寄せられているというより引き付けているイメージで、みんなに決めてもらおうと思ってやっていた」。あまりの徹底マークに一度は黒子に徹しようとしていた古田。それでも前半33分には、ゴール前で最初のビッグチャンスが訪れた。

 同じくマンマークを受けていた名願が一瞬のスキを突いてペナルティエリア左をえぐり、折り返しのパスを送ると、中途半端となった相手のクリアボールに古田が反応。「ゴールに入るまで動き続けている」という一瞬の動き出しから右足でシュートを放った。だが、これはGKの正面。跳ね返りをFW小田村優希(3年)が沈めて先制点につながったものの、ストライカーとしての悔いは少々あったようだ。

「力んでしまってダボダボのシュートになって、GKが弾いたところの(小田村の)プッシュだったので、1発目で決められていたらなと……」。絶好のチャンス、選手権の雰囲気に焦ってのシュートミス。「ボールは来たのに力みで入らなかったので反省」と悔いるしかなかった。

 ただ、この日の古田には名誉挽回のチャンスが訪れた。後半アディショナルタイム4分、右サイドでカウンターの起点をつくると、味方を使うと見せかけてそのまま単独突破をスタート。「1対1だったので相手も疲れていたし、なかなか味方も上がってこれない状況だったので、ソロで行ってシュートまで行こうと」。ゴリゴリとドリブルを仕掛け、ついにゴール前まで駆け上がった。

 最後に放った右足シュートはGKに阻まれたが、攻撃はここで終わらない。こぼれ球をDF西坂斗和(3年)が拾い、素早いキックモーションでゴールを狙うと、相手に当たったこぼれ球が古田のもとへ。最後はなんとか身体に当てる形でゴールに押し込み、歓喜を爆発させた。これが予選3試合目で奪った待望の初ゴール。背番号9は「“泥臭ゴール”ということで、ストライカーとしては点を取る仕事が一つできて良かった」とホッとした表情を浮かべた。

 そんなエースの姿には平野直樹監督も「ずいぶん力んでたんだけども、これで少し肩の荷が下りたんじゃないかな。あんなもんでしょストライカーは」と目を細める。しかしその一方で、指揮官は試合全体の古田のパフォーマンスに課題を示すことも忘れなかった。

「その前にもっと決めておかなきゃいけないところもあったし、相手が前にパワーを持ってきているんだからその裏をうまく突くだとか、それなら逆サイドが空いてくるだとか、そこのゲームメイクがなかなかうまくいっていなかった気はしますね。もう少し大人の判断をできるようになってもらいたい」

 そうした課題については古田自身も織り込み済みだ。全国大会を見据えれば相手が守りを固めてくることも考えられるため、「もっともっとゴールの引き出しを増やしていかないといけない」と認識。引いてくる相手に対してもパフォーマンスを発揮すべく、プレーの幅を広げられるよう取り組みを続けていく構えだ。

 もっとも、そうした先を見据えられるのも次の決勝戦に勝ってこそ。「僕らは国立で勝って日本一になると言ってきているので、そこが目標だけど、まずは決勝になんとか勝つということにこだわってやっていきたい」。対戦相手の興國は攻撃的なスタイルのチーム。裏抜けのチャンスもあると想定される中、プレミアリーグで培った得点センスをぶつけていくつもりだ。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2022

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