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鹿児島実が後半40+1分に追いつき、鹿児島城西に延長勝利!新たな挑戦続けてきた伝統校が15年ぶりの決勝進出!

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延長前半3分、鹿児島実高MF福元一光が決勝ゴール

[11.11 選手権鹿児島県予選準決勝 鹿児島実高 2-1(延長)鹿児島城西高 白波スタ]

 鹿実が15年ぶりの決勝進出! 11日、第101回全国高校サッカー選手権鹿児島県予選準決勝が行われ、鹿児島実高鹿児島城西高が激突。延長戦の末、鹿児島実が2-1で勝利した。15年ぶりに準決勝を突破した鹿児島実は、決勝(12日)で神村学園高と対戦。勝てば07年度以来、24回目の全国大会出場となる。

 鹿児島実が過去10大会で8度決勝進出の鹿児島城西を撃破。開幕3日前の怪我で離脱している主将への思いも胸に戦う伝統校が一つ、壁を超えた。前半、拮抗した展開の中で主導権を握っていたのは鹿児島実の方。怪我で大黒柱のMF尾ノ上禅主将(3年)を欠く鹿児島実だが、ともに人一倍運動量の多かったMF原口順多(2年)とMF木之下昊優(2年)がスペースへ動いてボールに係わり、右SB東中凪音(2年)らが相手を見ながら正確にボールを前進させる。

 24分には、右CKの流れからFW丸山敢大(3年)の右足シュートがクロスバーをヒット。28分にはインターセプトしたCB浅井颯樹(2年)が個人技で右サイドを突破し、ラストパスを送る。サイドチェンジも交えながらボールを動かし、仕掛けてセットプレーやクロスの本数を増加。また、守備面では185cmの1年生CB吉村太希が競り合いで強さを発揮するなど前半の被シュートはゼロだった。

 一方の鹿児島城西はまず守備に重きを置いた前半。3バックの中央でDF小堀優翔主将(3年)が守りを引き締め、奪ったボールを左サイドへ運んで注目エースのFW前田隼希(3年)や10番FW原田天(3年)、MF坂上日向(2年)、左WB是枝大翔(3年)が崩しを狙う。

 後半8分にはMF山口慶祐(3年)のミドルパスでMF石内凌雅(2年)が抜け出して決定的な左足シュート。これは鹿児島実GK田中敦志(2年)に阻まれた。だが、鹿児島城西は10分、インターハイ予選準決勝での対戦時に流れを変えて勝利へ貢献しているMF佐俣盛之助(3年)を投入し、攻撃のギアを上げる。鹿児島実も吉村の好フィードから狙いとするサイド攻撃でチャンスを作り返す。

 0-0のまま迎えた後半31分、鹿児島城西が先制する。相手のクリアボールを山口が1タッチで繋ぎ、右中間で受けた原田がドリブルでDFを外して左足シュート。技ありの一撃がゴールネットへ突き刺さった。

 鹿児島実は好内容の試合を見せながら痛恨の失点。だが、諦めずに原口のロングスローやCKで相手にプレッシャーを掛ける。鹿児島城西は選手交代しながら試合を締めようとしていたが、40+1分に鹿児島実が執念のゴールを奪う。

 セットプレーの流れから左サイドのMF仙田龍聖(2年)がゴールエリアへクロス。これをMF福元一光(2年)がGKに競り勝つ形で落とすと、最後は浅井が右足シュートをゴールへ叩き込んだ。劇的な同点弾が決まり、1-1で延長戦へ。その開始前、鹿児島実の円陣からは笑い声が起こっていた。

 森下和哉監督は「(恩師であり、鹿児島実を2度の日本一へ導いた故・)松澤(隆司)先生のマネをしました。(緊迫した展開でも)『何を緊張しているのか』と、笑いを取るような人だった」。コーチ陣の言葉、行動で雰囲気良く延長戦に入った鹿児島実は2分、左SB瑞慶山史師(3年)のオーバーラップから決定機。これはポストに阻まれたものの、直後の3分、右中間で相手クリアボールに反応した木之下がフワリとクロスを上げる。これをファーサイドの福元が頭で右隅へ押し込んだ。

 前半からボールを動かし続けて相手の足を止め、森下監督が「延長に入る前に言ったことなんです。外から外(で決める)」という狙い通りの形だった。後半途中にアンカーから本職の左サイドへポジションを移していた福元の勝ち越し点で2-1。鹿児島実は延長後半、前に出てきた鹿児島城西の迫力ある攻撃の前に3度4度とチャンスを作られたが、GK田中中心に封じ切り、決勝進出を果たした。

 選手権優勝2回。前園真聖、城彰二、遠藤保仁、松井大輔ら数々の名選手を輩出してきた伝統校・鹿児島実は14年のインターハイで全国8強入りし、翌年にも連続出場しているが、台頭した神村学園と鹿児島城西に阻まれるなど選手権からは遠ざかっていた。「(神村学園や鹿児島城西に対し、)僕らが新しいことをしなければいけない」(森下監督)として17年4月に下部組織のFC KAJITSU(U-15)を発足して中高一貫指導にチャレンジ。なかなか高校の結果が出ず、厳しい意見も受けていたという。

 今年も新人戦、インターハイ予選ともに準決勝敗退に終わった。結果が出ない中、夏には3部練も敢行。連日映像を確認しながらトレーニングし、U-17日本代表や今治の指揮を執った吉武博文氏を招いて指導を受けるなど「後悔したくない」(森下監督)という取り組みを続けてきた。そして、FC KAJITSU出身の6選手が先発に名を連ねた今回、3年、また6年間掛けて徹底的に技術力、また人間性を磨いてきた「ニュー・鹿実」は内容・結果で証明。どこよりも練習してきたという自負、加えて出場は困難ながらもベンチ入りし、仲間を勇気づける主将への思いがまたチームを一つにしている。

 延長戦で攻守に好プレーを見せた瑞慶山は、「ここまでの試合でも最後キャプテンを準決勝、決勝のピッチに立たせて上げるという気持ちで戦ってきて、できたので良かったです」。そして、「ずっと選手権で優勝する、全国に出ると言われてきて、自分たちの代で歴史を塗り替えると思ってやっていました。(この日は追い込まれたが、)準々決勝でも先制点をやられたけれど、自分たちを信じて追いついてやれたので良かった。決勝はこれまでの試合よりも厳しい戦いになると思うので、全員で声を掛け合いながら、また全国でも戦えるようにしたい」と力を込めた。指揮官も口にしていたように、「まだ決勝に行っただけ」。鹿実復活へ、決勝でも積み重ねてきたものを発揮し、壁を超える。

後半40+1分、CB浅井颯樹(20番)が劇的な同点ゴール

(取材・文 吉田太郎)
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