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[MOM4104]佐野日大FWヒアゴンフランシス琉生(3年)_仲間の“推薦”でメンバー入り…ブラジルにルーツ持つドリブラーが値千金の決勝弾!

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FWヒアゴンフランシス琉生が値千金弾(写真中央・25番)

 バーに当たってボールがゴールラインを超えると、一目散にベンチメンバーの元へ駆け寄った。自分が試合に出場できるのは仲間のおかげ――。チームメイトの期待に応えた25番は最高の笑顔で喜びを噛み締めた。

 佐野日大高を6年ぶりの選手権に導いたのは、怪我から復活したドリブラーだ。FWヒアゴンフランシス琉生(3年)はブラジル人の父から譲りのテクニックを持ち、今季のチームで重要な役割を担っていた。しかし、夏に腰椎分離症を発症。リハビリを余儀なくされ、チームから離脱した。戻ってきたのは10月の頭。コンディションは100%に戻っているわけではなく、当初はメンバーリストにも名前がなかった。

 プレーできたとしても万全ではないのは明白。しかも、長期間に渡ってメンバーとプレーもしていない。そうした状況下でも直前になって今予選のメンバーに組み込まれたのは、仲間の後押しがあったからだ。

 ヒアゴンをメンバーに加えるか――。今予選前にチーム内で議論があった。チームキャプテンのMF江沢匠映(3年)はこう話す。

「あいつはすごく上手い。チーム全員が認めている。なんとしてでもヒアゴンをメンバーに入れて欲しい。結果を残してくれると信じていた」

 チームを代表して直接話したゲームキャプテンのMF籾山陽紀(3年)も「コンディションの部分が気になっていたけど、怪我をしてから試合に出ていなかった。なので、夏以降に頑張った選手がメンバーに入れないことも気にしていた」と振り返る一方で、「『あいつなら絶対にゴールを決めてくれる。だから入って欲しい』というのがチームの総意だった」という。チームを代表して直接話した際には「試合に出て、活躍できる?」と尋ね、ヒアゴンも「できる」と回答。本人も「嬉しくて感謝しかない」と仲間の期待に覚悟を決め、話し合いの末にメンバーへ加わった。

 ただ、決勝前までに練習試合でも1試合を通じて40分しかプレーしていない。今予選も出番はなく、この決勝も腰椎の疲労骨折が完治していない中でなんとかプレーできる状況だった。そのため、本人も出番は後半に入ってからと考えていたのだが、開始9分に先制点を奪われたため情勢が変わる。海老沼秀樹監督と高瀬亮コーチは29分にヒアゴンの投入を決断。「まさか前半から行くとは思っていなかった」と戸惑いもあったが、ピッチに立つ以上はやるしかない。3-4-2-1のシャドーに入ると、得意のドリブルで局面を打開して攻撃のリズムを作り出していく。後半に入っても積極的に仕掛けていくが、ゲーム体力が戻っておらず、時間の経過とともに存在感が希薄に。それでも仲間のために走り続け、延長戦に入っても懸命に足を動かした。そして、迎えた延長前半アディショナルタイム。中埜からパスを受けると、最後の力を振り絞って左サイドから中にボールを運び、右足を振り抜く。バーを叩いてネットに突き刺さり、激闘に終止符を打った。

「チームのために絶対に決めて全国行く。出場する前からずっと思っていて、結果が出て本当に良かった」(ヒアゴン)

 最後の最後にチームの力になれた。その想いが言葉からもひしひしと伝わってくる。ただ、まだゴールではない。選手権に向けてスタート地点に立ったに過ぎないからだ。本大会の開幕までにコンディションを戻し、再びチームの勝利に貢献できるか。今度は全国舞台で仲間と最高の笑顔で喜びを分かち合う。
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(取材・文 松尾祐希)

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