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[MOM4112]近大和歌山MF畑下葵(3年)_全国へと導いたシビアなキャプテン…結果にこだわり続けた理由

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近大和歌山高のキャプテンマークを託されるMF畑下葵(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ supported by sfida]
[11.13 選手権和歌山県予選決勝 初芝橋本高 1-2 近大和歌山高 紀三井寺公園陸上競技場]

 近大和歌山高が2連覇を果たした決勝戦後、藪真啓監督が「一番の功労者」として名前を挙げたのは、キャプテンを務めるMF畑下葵(3年)。畑下の精度の高いキックは準決勝に続き、この決勝でも先制点を生んでいる。また、守備面でも苦しい時間には仲間を鼓舞し、予測にも長けた広い視野で周囲をカバー。「畑下をピッチから抜いてしまっていたら、もっと厳しかっただろうと思うし、チームをよくまとめてくれた」と話した藪監督。続けて、「今日の試合に限らずこの1年を通じて選手たちには高いレベルの要求をしてきたので、それに応えようとする畑下を自ずと厳しいキャプテンにしてしまったと思う。1年間チームを率いてくれたことに感謝している」と語った。

 振り返れば、夏前から「このままでは冬に間に合わない」と焦りを見せていた。その焦りが生まれるのは、仲間と一緒に最後は笑いたいからだ。そして、仲間と一緒に全国大会のピッチにもう一度立ちたい。けれど、客観的に物事を判断できる畑下は、他チームを見て、このままでは勝ち抜けないと感じていた。焦燥感を感じれば感じるほど強くなる口調は、ピッチ内での指示が的確であるからこそ、チームメイトにとっては厳しさを感じることもあっただろう。自身もそれに気づいてはいたが、結果にこだわり、厳しいキャプテンであり続けた。

 畑下が結果にこだわり続けた理由は、チームメイトと喜びを分かち合いたいだけではなかった。中学時代にセレッソ大阪和歌山U-15でプレーした畑下は、中学校に入学するタイミングで和歌山県の南部に位置する地元を離れ、母親と共にチームの練習拠点である和歌山市に引っ越した。父親と兄は、和歌山市からは車で3時間ほど離れた地元に残っている。自分のやりたいサッカーのために離れて暮らすことになった家族に対して「迷惑をかけた」と感じていると、以前から何度か口にしていた。今年で高校生活も最後。両親を引き離してしまった生活も今年でようやく最後になる。「家族に苦労や迷惑をかけたから、その感謝の気持ちを表すことができる結果がどうしても欲しかった」。

 シビアなキャプテンであり続け、仲間たちがそれに応えてくれたおかげでチームの状況は少しずつ良くなり、夏前に「間に合わない」と思っていた選手権予選で望み通りの優勝を掴み取った。試合後、さまざまな思いを噛み締めているような面持ちで、「自分が家族に感謝の気持ちを表現する場をチームのみんなに与えてもらった。自分についてきてくれたことに心から感謝している」と話している。

 しかし、全国の舞台に上がることがゴールではない。去年よりももっと高い場所に行く。個人としても、選手権に出ること自体が目標ではなく、さらに質の高い選手になって、いずれはプロサッカー選手になる。畑下の魅力の1つは、目標から逆算して執念深く努力を尽くせること。ここからまた自分が果たしたい目的に向かって、着実に歩みを進める。
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(取材・文 前田カオリ)

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