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誇りと絆を胸に、挑むのは全国の頂。日本文理が新潟明訓を撃破して5年ぶり2回目の新潟制覇!

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日本文理高は5年ぶり2度目の全国切符を獲得!

[11.13 高校選手権新潟県予選決勝 日本文理高 3-1 新潟明訓高 デンカビッグスワンスタジアム]

 あの悔し過ぎる敗戦から、ちょうど1年。この日の勝利を掴むために、さまざまな苦労を重ねてきた。上手くいっていても、上手くいかなくても、貫くのは全員で戦う“文理らしさ”。その先に勝利があると信じて、みんなで1つずつ、自信と経験を積み上げてきたのだ。

「自分たち“文理らしさ”は全員攻撃、全員守備なので、そこを貫こうと。文理のスタイルがそういうスタイルなので、それは全員がしっかりやらなきゃいけないところですし、それをやった上で勝利があるので、決勝でもしっかりできたのは良かったと思います」(日本文理高・曾根大輝)。

 スタンドも含めた全員サッカーで掴んだ最高の景色。13日、デンカビッグスワンスタジアムで行われた第101回全国高校サッカー選手権新潟県予選決勝は、日本文理高新潟明訓高が激突。新潟明訓の丁寧なパスワークに苦しみながら、力強く得点を重ねた日本文理が3-1で勝利。5年ぶり2回目の全国切符を手繰り寄せている。

「上で勝負をしてしまうと文理の良さが生きてしまうので、パスとドリブルで対抗するしかないなと思っていて、良いリズムで試合に入れたので、みんな楽しめていましたね」と坂本和也監督が話したように、序盤は新潟明訓が好リズムで立ち上がる。前半6分には左サイドでDF中山暖斗(3年)、MF友坂海空(2年)と細かくパスを回し、MF平井壱弥(2年)のシュートはゴール右へ逸れるも、積極的な姿勢を前面に打ち出す。

 だが、先制点を手にしたのは「硬くて、出足も悪くて、ここで失点したらキツいなというところでしたね」と駒沢隆一監督も振り返った日本文理。10分。相手のペナルティエリア内でのビルドアップが乱れた隙をFW曾根大輝(3年)が見逃さず、かっさらったボールをゴールへ滑り込ませる。集中力を保ち続けていた10番のキャプテンが叩き出した一撃。上手くいかない流れの中で、日本文理が1点のアドバンテージを奪う。

 思わぬ形からの失点にも、「あそこは紙一重だと思うんですよね。剥がせばチャンスですし、奪われれば失点ですけど、そのリスクを取ると今年は決めたので」と指揮官も口にした新潟明訓は折れない。27分にはMF中村凌也(3年)が右サイドへ鋭くサイドを変え、走った友坂はダイレクトでピンポイントクロス。飛び込んだ平井のシュートは枠を外れたものの、あわやというシーンを創出すると、歓喜の瞬間はそのすぐあと。

 29分。ここも中山と中村で仕掛けたサイドアタックからCKを獲得すると、友坂が左から丁寧に蹴り入れたボールに、身体ごと突っ込んだDF後藤太一(2年)のヘディングはゴールネットを確実に捉える。「押し込まれる展開の中で、セットプレーからのもったいない失点でしたね」と話すのは日本文理のGK日隠レックス海斗(3年)。40分にも平井が掴んだ決定機は、日隠がファインセーブで凌ぐも、前半はお互いに1点ずつ奪い合って、40分間が終了した。



 ハーフタイムに日本文理が動く。「明訓の幅広いサイドチェンジに対抗するために、石澤と塩崎が縦並びだった前半から、フラットにしました」(駒沢監督)。MF塩崎温大(3年)を頂点に置き、MF石澤賢汰(3年)をアンカーに据えるダイヤモンド型から、2人を横に並べるボックス型に中盤を変更。空きがちだった石澤の両脇のスペースを埋めつつ、スライドのスピードを速めることで、相手の広いアタックへの対抗策を講じる。

 この変化は攻撃面の効果ももたらす。「2人が横に並んだことで、横にサポートを作れるようになったことが上手くハマって、ボールを回せましたし、サイドが出ていって崩す形が何本も出てきたのが良かったです」とは塩崎。後半11分には左への展開から、MF高橋迅(3年)のグラウンダークロスを受けた塩崎が反転シュート。ここは新潟明訓のキャプテン、DF加藤大貴(3年)が身体でブロックしたものの、惜しいチャンスを生み出すと、勝ち越し弾もやはりサイドアタックから。

 12分。高橋のパスから左へ流れた曾根がそのままクロス。中央に潜ったFW杉本晴生(3年)のヘディングはGKの正面を突いたが、こぼれ球にいち早く反応したMF山田拓実(2年)が執念でゴールへ流し込む。「晴生さんがシュートを打ったので、『飛び込むしかないな』って。気持ちで押し込みました」というスタメン唯一の2年生はこれが今大会初ゴール。日本文理が再び一歩前に出る。



 リードを手にすると、ベンチワークも早い。15分には殊勲の山田に代えてDF赤阪和輝(1年)を投入し、守備時は中央にDF小舟戸結太(3年)、DF阿部飛祐(3年)、赤阪を並べ、右のDF高橋葵(3年)、左のDF小林倫太朗(3年)も下がる5バックで対応する形へ。「守りながらもカウンターは狙うんですけど、ああやってハッキリさせることで、チーム全体にメッセージを送るという形です」とは駒沢監督。準決勝の帝京長岡高戦でも採用したシフトチェンジで、勝利への執念をピッチへ落とし込む。

 1点を追い掛ける新潟明訓は、「後半は特にシュートまで行けなかったなと。雨でパスももっと繋がるかと思ったんですけど、もう1つギアを上げるところが足りなかったですね」と坂本監督が言及したように、交代カードを切り、布陣も変えながら反撃を狙うも、なかなかエリア内まで侵入するシーンを作り切れないまま、時間ばかりが経過していく。

 40+1分。勝利を確信する1点が日本文理に記録される。阿部が前線へフィードを送ると、「足は攣っていたんですけど、ああいうチャンスが来ると、自分は攣っていても走れてしまったりするんです」と笑った曾根が右サイドで収めて足裏パス。途中出場のFW大島未月(3年)が中央へを送ったパスに、全力のスプリントで走り込んだ小林のシュートがゴールネットを鮮やかに揺らす。

「交代させようかなと思っていた選手が決めてくれて、よくあることなんですけど(笑)、そういう意味では良い時間帯でとどめを刺せましたし、ナイスゴールだったと思います」(駒沢監督)。

 ファイナルスコアは3-1。「もう本当に嬉し過ぎて、『嬉しい!』という気持ちしか出てこなかったです。その後に歓声を聞いて、感謝の気持ちがだんだん湧いてきました」(塩崎)「何も考えられなかったですね。とりあえず叫びました。もう気付いたら真ん中に集まって一礼していた感じでした」(日隠)「準決勝、決勝と非常に苦しいキリキリするようなゲームだったので、結果として勝ち切れた彼らの成長が嬉しいという気持ちはあるのだけれど、やっている間は身体によくない時間帯を過ごしました(笑)」(駒沢監督)。“文理らしさ”の結実。日本文理が2度目の全国出場を逞しく勝ち獲った。

 1年前の11月3日。日本文理の選手たちは、涙に暮れていた。選手権予選準決勝。帝京長岡高を相手に2点を先制したものの、結果的には2-4で悔し過ぎる逆転負けを喫してしまう。その試合にスタメン出場していた塩崎が「一番怖い点差とは言われますけど、2-0から負けた経験なんてほぼなかったので、あの試合の印象はメチャメチャ大きかったですね。2-0で勝てると思っていたところからやられてしまったので」と言及すれば、「あの試合は自分も出ていて、自分にビッグチャンスがあったんですけど、それを外してしまって、そのせいで負けたのかなと引きずっていましたし、本当に悔しかったです」とは曾根。バックスタンドを埋めたメンバー外の選手も含めて、試合後の呆然自失といった雰囲気が印象深かった。

「そこが彼らのスタートだったんです」と口を開いた駒沢監督は、「帝京さんに2点リードしていながら、追い付かれて、引っ繰り返された悔しさというところが、今のゲームを上手く運ぶ能力を身体で感じている部分なんじゃないですかね。あの経験から、どうやって勝ちに繋げていくかというところをそれぞれが考えながら、自分がやりたいプレーを選択するのか、チームが求めるプレーを選択するのか、というところの判断が、少し上がったのかなというような感じはします」と言葉を続ける。

 1年前と同じ会場で、再び帝京長岡と対峙した先週の準決勝。「やっぱり五十公野で帝京長岡とやると、あの時のシーンを思い出しました」という曾根もゴールを奪い、今回も先に2点をリードすると、5バックへ切り替えて守備意識を徹底し、そのまま2-0で勝ち切ってみせる。そして、この日の決勝でも流れの良くない時間帯をきっちり凌ぎ、堂々と収めた勝利。「1回目の全国も嬉しかったですけど、今回は嬉しさが一段と強いかなという感じがします」という駒沢監督も、1年をかけて積み上げてきた選手たちの成長が、何よりも嬉しかったのだ。

 5年前の初出場時は全国ベスト8まで駆け上がったが、この冬の目標を口にする選手たちの言葉も頼もしい。「最近は帝京長岡が全国でもベスト4に行っていますし、決勝までは行きたいと思います」(曾根)「やるからには前回のベスト8を超えるとかではなくて、優勝を目指してやっていかないと意味がないと思うので、全国制覇が目標です」(塩崎)「大物を食いたいですね。青森山田や大津のようなプレミア勢を倒して、そこからも甲子園の下関国際みたいな形で、勢いもありながら、たまたまではないような形で行けるところまで行きたいですね」(日隠)

 俺たちの進化は止められない。誇りと絆を胸に、挑むのは全国の頂。日本文理の大いなるチャレンジは、ここからが本番だ。



(取材・文 土屋雅史)
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