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“最弱と呼ばれた”世代が夏に続く全国の舞台へ!! 鹿島学園は水戸啓明を破り、3大会連続の選手権出場

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鹿島学園高が夏に続く茨城制覇

[11.13 選手権茨城県予選決勝 鹿島学園高 1-0 水戸啓明高 茨城県立カシマサッカースタジアム]

 インターハイでは日章学園高に1-5で敗れた。今季から参戦しているプリンスリーグ関東1部ではリーグ最多の30失点を喫して8位に低迷。守備陣の立て直しが求められるなか、今予選前には守備の大黒柱を担うキャプテンが負傷してしまう。そうした逆境にもめげず、チーム一段となって戦い抜いて全国行きの権利を手に入れた。

 13日、第101回全国高校サッカー選手権茨城県予選決勝が行われ、鹿島学園高水戸啓明高を1-0で下して3年連続11回目の選手権出場を決めた。

「インターハイの準決勝でもやっている相手。水戸啓明さんも同じ形で負けるわけにはいかないと思っていたはずで、難しい展開になる。我慢比べになるし、しっかり守っている相手を攻めても簡単には点を取れない」

 試合前、鈴木雅人監督は難しい展開になると予想していた。しかも、キャプテンのCB上原悠平(3年)は怪我明け。準々決勝後に肉離れで離脱し、準決勝で戻ってきたとはいえ万全な状態ではなかった。選手のコンディションやチーム状況も含め、一発勝負は何が起こるか分からない。

「選手権にかける想いがみんなあって、力があっても勝てるとは限らない。すごいシュートが1、2回で入ってしまうケースもある」(鈴木監督)

 事実、立ち上がりから主導権を握りながらも攻め切れず、膠着した状況が続いた。嫌な雰囲気が流れたが、この日は課題だった守備が機能。前線から相手にプレッシャーを掛けるだけではなく、水戸啓明のキーマンであるMF大槻聡良(3年)をFWと中盤で挟み込んで自由にボールを持たせない。組織的な守備が機能し、前半をスコアレスで折り返した。

 後半に入っても一進一退の攻防が続く。指揮官の予想通りに我慢比べの展開となるなか、徐々にアタッキングエリアでプレーする場面が増える。FW林結人(3年)もパスを受けられるようになり、サイドから崩すシーンが増えた。すると、後半17分にスコアが動く。MF萩原駆(3年)がゴール前に入り、ペナルティエリア内で倒される。これで得たPKを上原が決め、ついに先制点を奪った。

 以降は相手にボールを握られる時間帯もあったが、CB上原を中心に身体を張った守備を見せて得点を許さない。195cmの大型GK木村和輝(3年)もハイボール処理で強みを発揮し、クロス対応ではしっかりキャッチして相手の攻撃を寸断。フィニッシュに持ち込ませず、最後まで粘り強く戦った鹿島学園が最後まで虎の子の1点を守り切った。

 決してコンディションは良いとは言えない状況。選手権予選前は直前までプリンスリーグを戦い、調整を兼ねた練習試合は一度もできなかった。怪我人も多く、上原だけではなくエースの林も負傷を抱えながら先発出場を続け、決勝もFW玉川颯太(3年)、FW石塚大地アントニオ(3年)が負傷でベンチから戦況を見守った。

 そうした状況下で選手たちは一戦毎に成長。夏までは大量失点する試合も珍しくなく、立て続けにゴールを許す悪癖が度々顔を覗かせた。6月下旬のプリンスリーグでは帝京高に前半だけで5失点を喫し、インターハイも1回戦で日章学園の攻撃陣を止められずに1-5で大敗。そこから選手間で話し合い、「今年は失点が多い。自分たちは夏以降守備をどうするかを考えてきた」(上原)。その結果、プレッシャーの掛ける際に相手を見た上で決められるようになり、守備陣の安定感が増した。そうした状況下で迎えた今予選は準決勝、決勝を完封勝利。成長の跡を示し、夏からの成長を感じさせたのは間違いない。

「めちゃくちゃ弱いと入学当初から言われてきた世代。自分たちでも弱いという自覚があったけど、負けず嫌いな奴が多いので頑張ってここまで来れた」とは上原の言葉。3ヶ月で見違えるように逞しくなった鹿島学園は全国舞台でも粘り強く戦い、過去最高のベスト4進出を目指す。

(取材・文 松尾祐希)
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