beacon

最後はPK戦で守護神躍動!「全国で勝つため」“ムービングサッカー”導入の広島皆実が48番目の出場権獲得!

このエントリーをはてなブックマークに追加

広島皆実高が最後の出場権を獲得した

[11.20 選手権広島県予選決勝 広島国際学院高 1-1(PK1-2)広島皆実高 広島広域公園第一球技場]

 48番目の代表校は広島皆実に決定――。第101回全国高校サッカー選手権広島県予選決勝が20日に行われ、広島国際学院高広島皆実高が激突。1-1で突入したPK戦でGK大代初芽(3年)が3本を止め、広島皆実が2-1で勝利した。広島皆実は2年ぶり17回目の選手権出場。全国大会の組み合わせ抽選会は11月21日に開催される。

 08年度全国王者で、10年連続決勝へ進出した名門・広島皆実と、初めて決勝に臨む広島国際学院との広島ファイナルは立ち上がり、広島国際学院が勢いよく試合を進める。7分、右サイドへ抜け出したFW原田朋和(3年)がカットインから左足シュート。奪ったボールをオープンスペースへ運び、テクニカルなMF板村祥里(3年)やFW角谷莉聖主将(3年)が仕掛けてゴール前へ持ち込もうとする。また、MF宗本隼(3年)が連続でタックルを決めて速攻へ持ち込むシーンもあった。

 だが、徐々に広島皆実が押し込む時間を増やす。いずれも技術力、運動量に長けたMF杉原優希(3年)とMF渡部琉(2年)のダブルボランチがボールに係わり続けて前進。FW藤井永遠(3年)、FW藤井颯天(3年)、FW岡本敬大(2年)の3トップの攻撃力も活かしてゴールに迫る。17分には渡部のスルーパスから右中間の岡本が右足シュート。これがファーポストを叩いた。

 広島皆実は奪い返しも速く、相手に攻撃機会を与えない。だが、広島国際学院はその展開も想定済み。瀬越徹監督は「怯まずに跳ね返せば。決勝ですから、勝った方が強い訳ですから、全国に行ける訳ですから、そうなる(押し込まれる)ことを悪いと思わずに弾き返すんだと力強い考えを持とうと言いました」。広島国際学院は前線にスピード、テクニックを持った特徴的な選手が存在。我慢の展開となったが、守備することに対して前向きに取り組み続け、オープン攻撃で幾度か会場を沸かせて見せる。

 広島皆実は前半だけでシュート9本。だが、凌ぎ続けた広島国際学院が少ないチャンスをモノにする。前半40分、広島国際学院は右ロングスローのクリアボールに反応したMF宮迫真汰(3年)が、PA外側から左足シュート。これをゴール前のMF野見明輝(2年)がコースを変えてネットを揺らした。歓喜に沸くブルーのユニフォーム。初Vを狙う広島国際学院が1-0で前半を折り返した。

 だが、広島皆実は慌てない。後半立ち上がりから再び波状攻撃。広島国際学院も怯まずにゴール前、バイタルエリアでの守りを続けて攻撃に持ち込み、こぼれ球を拾った宗本が左足を振り抜く。だが、広島皆実の小熊和人監督は「いつかはこじ開けると思っていた」。その言葉通り、攻め続けた広島皆実が特長を発揮する形で同点に追いついた。

 後半21分、広島皆実は引いた位置で前を向いた岡本がスルーパス。右WB金山佳吏(3年)が絶妙なタイミングで抜け出し、最後は切り返しからの右足シュートでゴールを破った。広島皆実は今季、プリンスリーグ中国で苦戦。インターハイ予選も決勝で敗れている。なかなか得点数が増えない中でチームはより攻撃的な戦い、“ムービングサッカー”へシフト。4バックから3バックへ移行し、現在は金山佳、島田承馬(3年)の両WBや3トップがポケットを狙ってランニングし、正確な配球でチャンスに結びつけている。杉原は「選手とボールが常に動き回ってというのが、自分たちのスタイルに合ってきたと思うし、皆実の伝統のパスサッカーにそれが加わってより攻撃力が上がったと思います」と頷く。

 この攻撃的なスタイルを導入した理由は全国で勝つため。小熊監督は「僕らの目標はここじゃないので。全国で勝つため。攻撃の部分はパワフルになってきたので、シュート数もめちゃくちゃ増えてきて攻撃に手応えはありますね。相手のストロングを消しながら守備をしっかりとして、良い攻撃に繋げていける皆実の伝統をやっていきたいと思っています」。堅守強攻、そして新しい皆実のスタイルで全国へ。決勝で“ムービングサッカー”を披露し、ゴールに結びつけた広島皆実だが、この日はシュート数17本で1得点とラストの質の部分は課題となった。

 杉原や藤井颯、岡本が個でDFを剥がし、後半終了間際に金山佳がPAへ飛び出すなどあわやのシーンを作っていたが、得点に結びつけることが出来ない。対する広島国際学院は交代出場のMF島川翔汰(2年)が対人守備の強さを発揮。DFラインも集中した守備を続け、攻撃面でも角谷のアイディアを活かした攻撃などで相手の守りを脅かしていた。

 互いに足を攣らせる選手が増え、ベンチメンバーを含めた総力戦に。1-1のまま突入した延長戦はオープンな展開となったが、互いの好守もあって得点は生まれず、決着はPK戦へ委ねられた。そのPK戦は広島皆実GK大代、広島国際GK岡崎翔真(3年)の両守護神が勝利への執念を見せ合う。

 互いに相手の1人目、2人目のシュートを読み切ってストップ。互いに譲らず、PK戦は異様な空気感の中で進んだ。迎えた3人目、先攻・広島国際学院のシュートは右ポストを叩いてしまう。一方の広島皆実は3人目のDF新中優大(3年)、4人目のMF立通岳(3年)が成功。そして、2-1の5人目、GK大代が正面へのシュートを落ち着いて叩き、ベンチ方向へ走り出す。広島皆実が激闘を制し、唯一代表校が未定だった広島県予選の王者に輝いた。

 目標は選手権出場ではない。広島皆実は13年度大会の1勝を最後に全国大会は6大会連続で初戦敗退中だ。かつての全国王者は、「強い皆実」を再び全国で示すという使命感を持って成長を続けてきた。就任1年目の小熊監督は「まず1勝してベスト4以上行けるように。もう一回、広島を元気にさせるために頑張らないといけない」と力を込める。杉原も「後輩たちに『強い皆実』を見せるためにも全国大会で勝利していくということを目標にやっていきたいです。このサッカーを突き詰めて行って、全国でも優勝を目指せるようにしたい」と宣言。課題となったフィニッシュの精度を改善し、より自分たちのスタイルの質を高めて全国で勝つ。

(取材・文 吉田太郎)
▼関連リンク
●【特設】高校選手権2022

TOP