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[MOM4151]成立学園DF佐藤由空(3年)_東京王者を牽引する二刀流。「11番のセンターバック」が豪快なヘディングで国立弾!

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成立学園高の二刀流、DF佐藤由空(左端、11番)が豪快なヘディングでゴールを奪う。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ supported by sfida]
[12.28 選手権開幕戦 成立学園高 3-2 津工高 国立]

 国立競技場の大空を自由に舞った11番の頭が、ボールを捉える。左のポストに当たった軌道がゴールネットへ吸い込まれると、一目散にコーナーエリアに向かって駆け出したスコアラーは、チームメイトたちの歓喜の輪に包まれる。

「八木のキックは精度が高いので、信じて走ったら自分のところにボールが来て、『相手に乗っかってでも絶対に決めてやる』という想いで決めたんですけど、さっきゴールシーンの動画を見たら結構エグかったですね(笑)」。

 東京きってのテクニック集団、成立学園高(東京B)が誇る“11番のセンターバック”。DF佐藤由空(3年=成立ゼブラFC出身)が磨き続けてきた強烈なヘディングが、国立の舞台でも力強く火を噴いた。

 11番という背番号が示すように、そもそも今大会の登録はFWだ。昨年まではCBを務めていたが、今シーズンに入って1トップへとコンバート。「最初はフォワードに抜擢されて、『どうしようかな』と思っていたんです」と当初は戸惑いながらプレーしていたものの、少しずつ身体の強さとスピードを生かしたストライカーへと成長。きっちりとゴールも重ね、自信も掴んでいった。

 だが、不思議と選手権では最終ラインでプレーする機会が増加する。予選の準々決勝と決勝ではチームメイトの負傷もあって、CBで奮闘して17年ぶりの全国出場に“守備面”で貢献すると、この日の開幕戦もスタメンリストに名を連ねた11番の横には“DF”という文字が書き込まれる。

「予選はみんなケガも多くて、CBが続いたんですけど、チームを勝たせるためならどこでもやりたいと思っているので、自分がその欠けた部分を補って勝てたからこそ全国にも来れましたし、健さん(山本健二監督)に信頼されて使われているからには、自分の役割を果たすだけなのかなって」。3年間の締めくくりで手繰り寄せた、最初で最後の晴れ舞台。FWでもCBでも、自分にできることをやるだけだ。佐藤の腹は決まっていた。

 決して良い立ち上がりではなかったものの、徐々に本来のリズムを取り戻した成立学園。佐藤とDF藤井利之(3年)のCBコンビから丁寧にボールを動かし、ゴールを窺う中で、前半35分にMF陣田成琉(3年)が先制点を奪うと、40分には右サイドでCKを獲得する。

 練習から積み重ねたいくつかのパターンの中から、キャプテンのMF八木玲(3年)が選択したのは、シンプルな中央へのキック。「練習の時から八木にあそこに入ってきてほしいとは言われていました」という佐藤の、マーカーの身体に乗り上げるような跳躍力で叩いたヘディングがチームに大きな2点目をもたらす。

「最高ですね。初めて来た国立で、初めてのピッチで自分がこうやってゴールを決められたので、自分を褒めたいというか、称賛してあげたいです」。自分の最大のストロングとして、最も自信を持ってきたヘディングでの一撃が国立のゴールネットを揺らしたのだ。自画自賛するのも頷ける。

 ただ、守備者としてはその後の展開に小さくない反省が残った。後半早々に3点目を奪いながら、そこから2点を返され、終盤は際どいシーンを作られ続ける。「相手の勢いも凄かったですね。最後はもう繋ぐとかではなくて、ボンボン前に蹴ることを頭に入れていたので、ヘディングも自分が跳ね返したり、集中力を切らさないようにやっていました」。

 ファイナルスコアは3-2。苦しんで、苦しんで、何とか手にした全国での1勝。「最終ラインの意志を統一するために、藤井と僕で声を掛けて、マークの受け渡しを良くしたので、そういう部分で3失点目がなかったのは良かったかなと思うんですけど、2失点してしまったことは大きな課題だと思うので、そこは改善できるようにしていきたいです」。勝って兜の緒を締めよ。佐藤もそのことは十分に理解している。

 試合後。成立学園を率いる山本健二監督がこう明かした。「3-0になった時に由空をトップにして、瀧川をCBにしようかなと思っていた矢先に点を獲られてしまって、そこでプランが変わってしまったんです。マスコミの皆さん的にも『いきなりCBからCFか!』というのも面白いのかなと思ったんですけどね」。

 いわゆる“二刀流”への期待も高まるが、「日大藤沢の森重(陽介)くんが目立っているので、自分も今回の大会でCBでも点をどんどん決めていければ、FWもできてCBもできると注目を浴びられると思いますし、自分の良さを出しつつ、チームが勝っていければ、チームにも自分にもプラスになりますけど、自分はチームのために頑張るタイプなので、そういう部分で役割を果たせればいいかなと考えています」と本人は謙虚な発言。とはいえ、ゴールへの色気はいつでも十分。今後も勝ち上がっていけば、佐藤の存在にもより注目が集まるはずだ。

 中学時代は成立学園の下部組織に当たる成立ゼブラFCでプレー。当時も山本監督の指導を仰いでおり、指揮官とチームに対する想いは誰よりも強いことも自認してきた。予選決勝で勝利を収めた直後、佐藤が語っていた言葉が印象深い。「成立のことはオレが一番愛しているぞぐらいの気持ちを持っています(笑)。健さんにはずっとサッカーを教わってきて、本当にお世話になってきましたし、ここまで来たら全国優勝を狙いたいと思うので、また健さんを胴上げできるように頑張ります」。

 成立学園を逞しく牽引する、義理と人情を携えた“11番のセンターバック”。その立つ場所が最前線であっても、最終ラインであっても、100パーセントで与えられた役割と向き合う佐藤の姿勢は、微塵も変わらない。

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(取材・文 土屋雅史)

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