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[MOM4164]東山FW豊嶋蓮央(3年)_憧れはOB鎌田、目指すは浅野の姿「僕より全然上手いけど似ている」献身報われた2ゴール

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FW豊嶋蓮央(3年、写真右)が2ゴール

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ supported by sfida]
[12.29 選手権1回戦 星稜高 1-2 東山高 オリプリ]

 献身性とフィジカルを兼ね備えた東山高のストライカーが、チームの全2得点を叩き出す大活躍で初戦突破に導いた。背中には奇しくも、OBのMF鎌田大地(フランクフルト)がカタールW杯で背負った15番。「尊敬、憧れがあるし、自分もW杯で鎌田大地選手のような活躍がしたいと思ってサッカーを続けている」。偉大な先輩の存在からも刺激を受けながら、目標の日本一に一歩一歩近づいていくつもりだ。

 昨季までBチームで過ごしていたFW豊嶋蓮央(3年=SAGAWA SHIGA FA Jr.ユース)にとって、今季が最初で最後の全国選手権。経験者であっても重圧と緊張で固くなってしまいかねない大舞台ではあるが、2トップの一角で先発出場すると、試合の立ち上がりから堂々たるパフォーマンスを発揮していた。

 まずはダイナミックな動き出しでサイドの高い位置に顔を出し、相手を背負いながら力強いボールキープを連発。ロングスロー以外ではなかなか良い形をつくれていなかった攻撃を最前線で牽引し、チームに試合の主導権を手繰り寄せていった。そして前半21分、その献身性は得点という形でも見事に結実した。

「前から行くのはチームで言われていたところ」(豊嶋)。星稜MF平良大研(3年)が低い位置でボールを保持するやいなや、間合いを測りながらプレッシングをかけ、鮮やかにボールを奪取。そのままペナルティエリア内にドリブルで持ち込むと、最後は利き足ではない左足シュートでファーポスト際に流し込んだ。

 ボール奪取からシュートまで、たった一人で完結させた見事なゴール。それでも「一人一人が頑張った結果の得点」と謙遜し、巧みな逆足シュートにも「自分でもビックリ」と苦笑い気味に話した。「守備の部分は福重先生からずっと言われてきているところなので、練習の成果が出たと思う」。手応えは指揮官から口すっぱく言われてきたという献身的な守備についてだけだった。

 ところが、この日の活躍はここで終わらなかった。

 1-0で迎えた後半17分、今度は右サイドを攻め上がったDF石井亜錬(3年)のクロスをゴール前で待ち構え、冷静なヘディングシュートで2ゴール目を沈めた。

「亜錬(アレン)とは小さい時からずっと一緒にサッカーをやってきているので、上がってくるタイミングもわかる。動き出しとちょうど合った」。石井は同じ小学校出身の幼馴染。小中学校時代は別のチームでプレーしていたため、共にプレーするのは高校が初めてだが、「お互いのことはわかる」というホットラインがこの大舞台でつながった。

 そんな背番号15の2ゴールにはスタンドに並んだ控え部員も大いに沸いた。「僕はBチームの子たちと一緒に練習してきた結果、いまがある。僕一人でやっているわけではない。チームのみんなに感謝しているし、ずっと一緒にやってきた人たちが応援してくれている。(試合に出られなくて)悔しいと思うけど、応援してくれることに感謝している」。仲間たちの大きな思いを背負ったストライカーは嬉しそうな笑顔を見せた。

 試合後、福重良一監督は「珍しいですね。2点も取って」と冗談めかしつつも、起用を続けてきた豊嶋の活躍に目を細めた。「長い期間、自分の良さをわかっていなかったけど、徐々に自分の良さがわかってきた。彼が前から貪欲に守備をしてくれる。本来FWというのは点を取ればいいけど、うちの場合は前から守備をしっかりやってもらうので、守備を素直にやってくれるところが素晴らしい」。さらに指揮官は「高校選手権は1試合1試合成長する舞台。ここで伸びて次の試合につながる」と期待も寄せていた。

 もっとも、豊嶋自身はこの日の活躍にも満足していなかった。前半26分には渾身の右足シュートがクロスバーに弾かれると、後半は2度の決定機を相手GKに阻まれ、ハットトリックを逃していた。「僕のミス。それでチームが苦しくなる。決めていかないと日本一になれない。決めて日本一になりたい」。チームが掲げる日本一という高い基準を見つめながら、決意を新たにしていた。

 チャンスを決め切ることの大事さは、先輩の鎌田が出場していたW杯からも学んだ。

 布陣の最前線で戦う豊嶋が自身と重ねたのは、初戦のドイツ戦で決勝ゴールを奪ったFW浅野拓磨の姿。「浅野選手の得点を見ていて、僕より全然上手いけど似ているところがあった」。かつてこの大会で得点王に輝いた浅野と同様、献身性を発揮しながらも、しっかり決め切るのがストライカーの理想像。「自分はあまり上手くないし、エリートではない。球際の部分とかは自分がやらないと出られない。一つ一つの球際、一つ一つのプレーをもっとこだわっていけたら」。ここまでのし上がってきたストライカーは目標の日本一に向け、まだまだ武骨に走り続ける構えだ。

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(取材・文 竹内達也)

●【特設】高校選手権2022

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