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崩し切ったゴラッソは掲げる「全国4強」への道しるべ。粘る鹿島学園に逞しく競り勝った岡山学芸館が3回戦へ!

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岡山学芸館高は鮮やかな決勝点で競り勝って逞しく3回戦へ!

[12.31 選手権2回戦 鹿島学園高 2-3 岡山学芸館高 駒沢]

 押し気味にゲームを進めながら、相手に2本しか許さなかったシュートで、2度のリードを追い付かれる。嫌な予感の漂う展開だったことは否めない。だが、今年の彼らには積み重ねてきた確かな経験と自信があった。

「ずば抜けた選手はいないんですけど、インターハイもプレミア参入戦も経験させてもらったり、プリンスリーグでも中国地方の強豪とやらせてもらってきた中で、全員でハードワークすることが大事だという意識は、選手たちも気付いているんじゃないかなと思います」(岡山学芸館高・高原良明監督)。

 最後は美しい決勝点で、鮮やかに勝ち切って16強進出。第101回全国高校サッカー選手権2回戦が31日に行われ、鹿島学園高(茨城)と岡山学芸館高(岡山)が対峙した一戦は、鹿島学園が2度のビハインドを粘り強く跳ね返すも、後半34分に流れるような攻撃からMF山田蒼(3年)が決勝点を奪った岡山学芸館が3-2で勝利し、3回戦へと勝ち上がっている。

「より速い形で、相手のアタッキングサードにどれだけ入れるかというところを意識してゲームに入りました」と高原監督も言及した岡山学芸館が、まずは攻撃的に立ち上がる。1トップに入ったFW今井拓人(3年)を基点に、右のMF岡本温叶(3年)、中央のMF田口裕真(2年)、左のMF田邉望(2年)と2列目のアタッカーたちも果敢に前へとアタック。好リズムを掴むと、前半18分には先制点。左サイドでDF中尾誉(3年)のスローインを受けた山田が、思い切ってエリア外から右足で振り抜いたシュートが左スミのゴールネットへ突き刺さる。「試合前から迷わずシュートを打っていこうと思っていた」という10番の強烈な一撃。早くもスコアは動く。

 ビハインドを負った鹿島学園は、前線で構えるFW石塚大地アントニオ(3年)とMF林結人(3年)にボールが届かず、なかなか攻撃の時間を作れなかったが、前半終了間際に“飛び道具”が炸裂する。38分。左サイドからMF大貫翼(2年)がロングスローを投げ入れると、中央の混戦からMF妹尾俊兵(2年)が右足でボールをゴールネットへ押し込む。この試合のファーストシュートがそのまま成果に。1-1。試合は振り出しに引き戻される。

 立ち込めかけた暗雲を振り払ったのは、9番のストライカー。失点からわずか1分後の39分。山田とのワンツーからDF中尾誉(3年)がフィードを送ると、田口が頭で残したボールを今井は右足一閃。ドライブの掛かった軌道がゴールへ吸い込まれる。「ちょっとキーパーが左に寄っていて、ボールも左から来たので、そのまま振り切ったらドライブが掛かって良いところに入りました。あの回転は狙っていました」という今井の“ドライブシュート”で、岡山学芸館が再び1点のリードを手にして最初の40分間は終了した。

 後半も大きな流れは変わらず、“2点目”より“3点目”の雰囲気が色濃い中、「メンバーを少し変えながら、後半の時間帯から勝負していこうということは選手たちと話していました」と語った鹿島学園の鈴木雅人監督は後半11分、MF鈴木仁之介(2年)、MF山本慶斗(3年)、FW若野晃大(3年)といずれもアタッカーをピッチへ送り出す3枚替えを断行する。

 この決断が奏功したのは、交代策から2分後の13分。妹尾の蹴ったFKに若野が高い打点で競り勝つと、こぼれに反応した鈴木の残したボールを、山本が丁寧にゴールへ蹴り込む。“交代トリオ”が全員絡んでの同点ゴール。采配ズバリ。鹿島学園がまたもセットプレーから、力強く追い付いた。

 2本のシュートで2失点を喫した岡山学芸館。だが、この難しい流れの中でも、中盤のキーマンのMF木村匡吾(3年)は「嫌な感じはあったんですけど、(井上)斗嵩を中心に声は出ていて、チームとしてはまだまだ立て直せる感じでした」とその時間帯を振り返る。キャプテンのDF井上斗嵩(3年)が、木村が、山田が、チームメイトを鼓舞し続ける。インターハイでも、プリンスリーグでも、苦しい試合をモノにして何度も勝利を掴んできた。その築き上げられた自信は、最終盤で逞しく証明される。

 35分。左サイドでのアタックは、中尾の縦パスで一気にテンポアップ。エリア内へ潜った田邉がヒールで落とすと、山田がインフロントで放ったシュートは、綺麗な弧を描いて右スミのゴールネットへ飛びこむ。

「もう完璧な流れだったと思います」と山田が話せば、「本当にウチらしいイメージ通りの中からの崩しのゴールができたかなと思います」と高原監督も称賛したゴラッソがそのまま決勝点。2度の手痛い失点にも屈せず、練習してきた通りの形から3点目を獲り切った岡山学芸館が3-2で競り勝って、同校最高記録に並ぶ冬の全国16強を手繰り寄せる結果となった。

 岡山学芸館は着実に力を付けてきた。インターハイでは2年続けて準々決勝まで勝ち上がり、今季は激戦のプリンスリーグ中国もわずか1敗で2位に入り、昇格こそならなかったもののプレミアリーグプレーオフまで進出。チームとして重ねてきた経験値は、全国の強豪ともまったく見劣りしない。

「今年のチームが始まった当初から、ずっとみんなで『目標は全国ベスト4以上』という共通意識を持って、キツい練習もやってきました」と今井が話したように、今年のチームが掲げるのは全国ベスト4。そのために取り組んできたことを、指揮官はこう明かしている。

「選手がミーティングで『全国ベスト4に行きたい』という目標を立てていたので、本気でそこを目指すのであればということで、ベスト4以上のチームを例年見ていると、個で打開できたり、グループで崩すことはしっかりできる印象があるので、アタッキングサードの崩しのところはもっとウチも力を付けていかないと、それ以上のところには行けないということで、この1年間はそこをずっと強化してきてやってきました」。

 この日の3点目は、まさに『アタッキングサードの崩しのところ』で、3人のアイデアが完璧にシンクロしたゴール。高い目標を見据えて、みんなで積み重ねてきたモノが、この大舞台で形になったのだ。それを知れば、試合後に選手とスタッフがみんなで共有した笑顔にも頷ける。

 ただ、ここで満足するわけにはもちろんいかない。「去年の選手権は悔しい形で2回戦で終わってしまって、今年は何とか勝てましたけど、ここからがやっとスタートというか、自分たちの力が試されるところなので、勝って上に上がっていきたいと思います」(木村)「次も勝って学芸館の歴史を変えていきたいと思いますし、みんなが繋がってプレーすれば、目標は達成できると思っています」(今井)「学芸館の選手権はベスト16が最高成績で、次に勝てばまた新しい景色が見えると思うので、頑張っていきたいです」(山田)。

 新しい景色のその先へ。全国4強を見据える岡山学芸館の冒険は、まだまだこれからが本番だ。

(取材・文 土屋雅史)
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