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仲間を大切に、一つ一つ積み重ねて強くなった米子北の3年生。後輩にプレミア切符と次への「悔しさ」を残す

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インターハイ3位の米子北高は2回戦敗退。下級生たちが来年、歴史を変える。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[12.31 選手権2回戦 日大藤沢高 2-1 米子北高 等々力]

「本当に仲が良くて、仲間の大切さというか、そういうのを感じさせてくれる……感じでした。一つ一つ課題を克服してここまで来たので、もう少し試合をさせてあげたかったとは思います」。試合を優勢に進めながら、わずかな隙が失点に繋がって逆転負け。米子北高(鳥取)の中村真吾監督は溢れる涙を堪え、言葉を詰まらせながら3年生たちへの思いを口にした。

 登録メンバーの出身地は地元・鳥取を中心に、関東から沖縄まで様々。彼らが山陰の地で3年間挑戦を続けてきた。海まで2kmほどの立地。風の強い日も多い。部訓「心・技・体・和」の下、サッカーを通して強い精神力を養い、将来につながる人間性の育成を目指す米子北は、全国上位のチームでは数少ない土の学校グラウンドを中心に、近隣の人工芝グラウンドや砂浜での努力を重ねてきた。

 米子北は21年、インターハイで12年ぶりに準優勝。決勝では、同年度に3冠を成し遂げた青森山田高(青森)をあと一歩まで追い詰めた。そのチームからMF佐野航大(現岡山、U-18日本代表)やCB鈴木慎之介(現関西学院大)、左SB海老沼慶士(現IPU・環太平洋大、日本高校選抜)が卒業。今年は厳しい戦いが予想されたが、指揮官の言葉通り、選手たちは仲間を大切にしながら、一つ一つの課題を克服してインターハイ3位、1つ上の代が果たせなかったプレミアリーグ昇格という快挙も成し遂げた。

 そして、選手権でまず初戦突破。この日も「今までやってきたことはかなり整理してしっかり守れていたんじゃないかなと思います」と中村監督はいう。ショートコーナーから右SB 梶磨佐志(2年)のクロスをCB森川和軌(3年)が合わせて先制し、その後も個々の力がある日大藤沢高(神奈川)相手に隙を見せずに戦っていた。

 だが、後半半ば以降にロングスローから2失点。セットプレーで相手選手をスピードに乗せてしまったり、セカンドボールへの反応がわずかに遅れてしまうなどわずかな隙が出てしまった。

 インターハイは2度の準優勝を経験しており、今年も3位。だが、意外にも選手権の最高成績はベスト8だ。今大会屈指の左SBで主将の野田徹生(3年)はこの一年について、「個人個人が凄く自覚と責任、さらに自分の意見を持っていて、さらに仲の良いチームだったので、言い合ったり、人の意見を聞いたりするのが一番大きかった」。チームのために何ができるか考え、意見を出し合いながら好チームに成長した集団は歴史を変えることを期待された。

 だが、悔しい2回戦敗退。「夏から比べたら色々整理されて良くなっていると思いますし、もっともっと試合をすればすれば強くなっていく自信はあったんですけれども勝負ですから」と指揮官は残念がり、野田も「楽しんで、最後まで諦めず、(決勝まで勝ち上がって)一番最後に引退できるようにはとみんなで話し合っていたんですけれども、それが叶わなくて凄く悔しいです」と唇を噛んだ。

 3年生が後輩たちに残したものがある。それは“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグへの切符と次へのエネルギーとなる「悔しさ」だ。野田は昨年、インターハイ全6試合に出場した一方で選手権はピッチに立てず初戦敗退。その悔しさを力に変えて選手として成長し、インターハイ3位、プレミアリーグ昇格へ導くリーダーとなった。チームは中国地方を代表する強豪だが、中学時代に悔しい思いをした選手たちばかり。1、2月の平均気温は5度を下回る地域から反骨心を持って成長し、毎年のように全国上位の力を身につけている。

 野田は後輩たちへ向けて、「悔しさを学べたと思う。この悔しさをしっかり胸に刻んで、今年2年生でメンバーに入っている子たちが多かったので、その思いを持っている子たちが多いので、引っ張って行ってもらって、北高の歴史を変えられるようにして行って欲しいと思います」と後輩たちが悔しさをエネルギーに変えてくれることを期待した。この日、米子北は梶、MF上原颯太(2年)、MF仲田堅信(2年)が先発し、MF石倉亜連(2年)とFW森田尚人(2年)が途中出場。彼らを中心に先輩たちの姿を見てきた下級生たちが来年、プレミアリーグなどで力を磨いて選手権で歴史を変える。 

(取材・文 吉田太郎)
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