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伝統の14番を託された冷静沈着な1年生。國學院久我山MF近藤侑璃の堂々たる選手権デビュー

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國學院久我山高の伝統のナンバー14を託された1年生MF近藤侑璃

[12.31 全国高校選手権2回戦 近大和歌山高 1-3 國學院久我山高 駒沢]

 気付けばいつも、そこにいる。じっくりとパスを回していく攻撃の時も、ボールを奪われてカウンターを食らいそうになる守備の時も、その14番は気付けばいつも、そこにいる。

「いろいろな人たちの支えがあるので、そういう人たちに恩返しできるように、自分のプレーと久我山のプレーをいろいろな人に見てもらいたいという想いはあります」。

 國學院久我山高(東京A)が誇る伝統のエースナンバー、14番を託されたスーパールーキー。MF近藤侑璃(1年=1FC川越水上公園出身)の不思議な存在感、要注目。

 チームとしては3年ぶりの選手権。ピッチに立つのは初めてこの晴れ舞台を経験する者だけ。「これが選手権ということですよね。非常に重たかったなと。選手たちもそういうタイプではないのに、緊張感があったのか、前半は凄く硬くなっていたなという感じです」と李済華監督も言及したように、初戦の近大和歌山高(和歌山)戦に臨む國學院久我山の選手たちはやはり硬かった。

 だが、「自分自身あまり緊張しないタイプなんです」と言い切った言葉にも十分に頷けるパフォーマンスを披露する選手がいた。1年生ながら強豪校の中盤アンカーという大役を、入学直後から任され続けてきた近藤だ。

「監督にも、まず第一にテンポを速くするということを言われていて、その上で『シンプルなプレーが一番上手いプレーだよ』ということを監督もコーチも常に言っているので、自分は久我山に入ってから、シンプルなプレーやテンポの速いプレーを意識するようになりました」。受けて、捌く。機を見て前に上がり、シュートを放つ。確かにプレーはシンプル。ゆえに、その基本技術の高さも際立つ。

 開始5分で先制点を奪われる展開にも、頭の中には冷静な思考が横たわっていた。、「前半は自分たちもベンチの人たちも焦っていなかっですね。後半もあるし、じっくり1試合を掛けて、2点獲れればいいので、焦らずにはできたと思っています」。大した1年生である。

 実際にチームは後半の立ち上がりに続けて2点を奪い、逆転に成功。終盤はセットプレーを中心に勢いを増す近大和歌山の攻撃にも、近藤は確実に守備でできることをこなしていく。「彼はどっちかと言うと華奢ですけど、しなやかなんですよ。ディフェンスも強いというよりは、足がヒュッと伸びてくる。可動域が広いんでしょうね。柔軟性も高いので、守備の範囲が凄く広いんですよ」。李監督の表現が面白い。気付けばいつも、そこにいるのだ。

 終盤は足を攣らせながらプレーしていたが、本人の分析も興味深い。「緊張しないタイプではあるんですけど、さすがに今日は身体が緊張していたというか、それが最後の足を攣っちゃったことに繋がったので、そういうところはまだまだだなと思っています」。それでも試合終了までピッチに立ち続け、逆転勝利にフル出場で貢献してみせた。

 94回大会(15年度)の全国準優勝時にはMF名倉巧(長崎)も背負っていた『國學院久我山の14番』を託されたのは、この選手権予選から。「LINEで番号が来るんですけど、近藤のところが“14番”になっていたので、メッチャ驚きました。でも、去年の久我山の試合を見た時に、右サイドバックをやっていた森次(結哉)くんが14番を付けていて、『本当に上手い選手だな』とずっと思っていたので、嬉しい気持ちもありました」。

 だからと言って、必要以上の気負いはない。「14番でも『いつもの自分のプレーをやらなくちゃいけないな』とずっと思っていたので、そこは今日もいつも通りにできたと思います」。やはり大した1年生である。

 勝ち上がっていけば、このルーキーに注目が集まることは必至。そう水を向けると、返ってきた答えがまた振るっている。「自分で思うのは、1年生だからどうのこうのと言われたら、まだまだ二流だなと思うので、もっと『近藤侑璃は凄い』というふうに言われたいと思います。でも、注目されるのは嬉しいことですけど、あまり注目されたくないタイプなので、名前は知っておいてもらいたいですけど、ずっと見られるのはちょっと嫌ですね(笑)」。

『國學院久我山の14番』を受け継いだ16歳の司令塔。近藤侑璃という名前、覚えておいた方が良さそうだ。

(取材・文 土屋雅史)
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