[MOM4187]前橋育英MF根津元輝(3年)_長期離脱を強いられた実力派ボランチが「サッカーを楽しむ」メンタルで大一番の中盤を完全制圧!
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ supported by sfida]
[1.2 選手権3回戦 昌平高 1-2 前橋育英高 駒場]
チームメイトがこの日へとバトンを繋いでくれたのだ。ここで戦わない理由はない。自分が3年間で築き上げてきた価値を、自分がこのチームにいる意味を、80分間にすべてぶつける準備なんて、とっくに整っていた。
「初戦もなかなか自分のプレーができなくて、『自分らしさって何だろう?』と考えた時に、チームを鼓舞するプレーもそうなんですけど、一番はサッカーを楽しむことだと思ったので、今日は実際にサッカーを楽しむことができましたし、それを結果に繋げることができて、最高に楽しかったです」。
夏冬二冠を狙う上州のタイガー軍団が誇るナンバー7。前橋育英高(群馬)のスペシャルなボランチ。MF根津元輝(3年=1FC川越水上公園出身)は注目のビッグマッチを、きっと誰よりも楽しんでいた。
自分のパフォーマンスのことは、自分が一番よくわかっている。1年ぶりに選手権に帰ってきた初戦の日章学園高(宮崎)戦で、根津は決して良いプレーとは言えない出来に終始すると、続く2回戦の四国学院大香川西高(香川)戦ではベンチスタートを命じられる。
「初戦で自分のプレーが出せなかったので、ヒザの状況もあったんですけど、監督からも2回戦は『次の試合にコンディションを合わせろ』と言われました」と根津が明かせば、チームを率いる山田耕介監督も「根津はまだケガ上がりでベストな状況ではなかったので、2回戦は休養させました」と明言。ピッチの外からチームメイトのプレーを眺めることになる。
「もちろんスタートから出たかったんですけど、自分にできることはピッチに立っていなくてもあったので、そこは意識してできたかなと思います」。今シーズンは負傷離脱する時間も長く、チームメイトをサポートする役割に回ることも多かった。目の前のやるべきことを100パーセントでこなすことは、この1年間で今まで以上に学んできたことだ。根津も終盤から登場した試合は、6-1で快勝。チームは大一番と目されていた3回戦へと勝ち上がる。
相手は昌平高(埼玉)。「自分も埼玉出身で、昌平には知っている選手もたくさんいたので、負けたくないという気持ちがありましたね」と根津。会場も浦和駒場スタジアム。舞台は完璧に整っていた。
いきなり前半3分の失点から始まったゲームは、13分にFW山本颯太(3年)がすぐさま同点弾を叩き出すと、そこからは前橋育英の果敢な守備が、昌平のアタックを完璧に近い形で封じていく。
「1人じゃ取れなくても、2人目、3人目でしっかり奪い切ることと、前線が追い込んでくれたところに自分が取りに行くことは意識していました。特に奪われた後に取り返す意識は全員の中で統一していたので、まだまだですけど、そこは今日の試合でできたところかなと思います」と話す根津は、圧倒的なスピードとパワーで相手のボールを刈り取っていく。その鬼気迫るようなプレーに、この一戦への決意が滲む。
30分過ぎに相手との接触で倒れ込むと、なかなか立ち上がれない。「もともとケガをしているところで、結構痛かったんですけど、あそこで終わるわけにはいかなかったですし、アドレナリンも出ていたので、やり続けました。始まったばかりでしたし、自分がピッチでできることはまだまだあったので、“マル”を出しました」。周囲もヒヤリとしたものの、しばらくすると何事もなかったかのようにピッチへ戻っていく。
後半10分には根津のフィードをDF井上駿也真(3年)がダイレクトで落とし、FW小池直矢(3年)のグラウンダークロスをMF青柳龍次郎(3年)がプッシュして逆転に成功。終盤は1点を追い掛ける昌平に押し込まれる時間を強いられたものの、守備強度は最後まで落ちず、そのまま2-1で逃げ切りに成功。万全の準備を施して挑んだ重要な一戦で、7番を背負ったボランチの存在感が際立った。
今年の3月にヒザを負傷。2年生ながら高校選抜にも選出され、チームとして初めて臨むプレミアリーグへと想いを募らせていた矢先の大ケガだった。一時は仲間の試合を見るのも嫌になるぐらい、メンタルを蝕まれかけたこともある。チームの勝利を素直に喜べない自分に、失望したこともあった。でも、そんな苦しい離脱期間が、改めて大切なことを気付かせてくれた。
「自分がケガをしている間に、親も含めていろいろな方が支えてくれたので、その人たちのために頑張ろうという想いはより強くなりました。『痛みもなくサッカーできることは、本当に当たり前じゃないんだな』って感じましたし、サッカーができることに感謝して、できる時は100パーセント以上の力を出して、見ている人も勇気付けられるようにという感情が芽生えたんです」。
だからこそ、まだまだ満足するわけにはいかない。ここからはすべてが大一番。とりわけ次のゲームは、準々決勝というシチュエーションも、大津高(熊本)という対戦相手も、1年前とまったく一緒。この一戦のために1年間の努力を積み重ねてきたと言っても決して大げさではない、因縁のビッグマッチだ。
「去年は大津に負けたので、自分たちは『打倒・大津』もそうですし、ベスト8の壁を破りたいと、しっかり勝ちたいと思ってこの1年間やってきたので、次の試合に向かう想いはそれぞれが強いと思います。自分たちが思い切りプレーできているのも、スタンドで応援してくれている人たちの想いが、凄く自分たちの力になっているからなので、責任を持ってプレーしていきたいです」。
帰ってきたタイガー軍団の実力派ボランチ。根津は誰よりもサッカーができる喜びを携えながら、この仲間と目指し続けてきた冬の日本一だけを真っすぐに見据えている。
(取材・文 土屋雅史)
●【特設】高校選手権2022
[1.2 選手権3回戦 昌平高 1-2 前橋育英高 駒場]
チームメイトがこの日へとバトンを繋いでくれたのだ。ここで戦わない理由はない。自分が3年間で築き上げてきた価値を、自分がこのチームにいる意味を、80分間にすべてぶつける準備なんて、とっくに整っていた。
「初戦もなかなか自分のプレーができなくて、『自分らしさって何だろう?』と考えた時に、チームを鼓舞するプレーもそうなんですけど、一番はサッカーを楽しむことだと思ったので、今日は実際にサッカーを楽しむことができましたし、それを結果に繋げることができて、最高に楽しかったです」。
夏冬二冠を狙う上州のタイガー軍団が誇るナンバー7。前橋育英高(群馬)のスペシャルなボランチ。MF根津元輝(3年=1FC川越水上公園出身)は注目のビッグマッチを、きっと誰よりも楽しんでいた。
自分のパフォーマンスのことは、自分が一番よくわかっている。1年ぶりに選手権に帰ってきた初戦の日章学園高(宮崎)戦で、根津は決して良いプレーとは言えない出来に終始すると、続く2回戦の四国学院大香川西高(香川)戦ではベンチスタートを命じられる。
「初戦で自分のプレーが出せなかったので、ヒザの状況もあったんですけど、監督からも2回戦は『次の試合にコンディションを合わせろ』と言われました」と根津が明かせば、チームを率いる山田耕介監督も「根津はまだケガ上がりでベストな状況ではなかったので、2回戦は休養させました」と明言。ピッチの外からチームメイトのプレーを眺めることになる。
「もちろんスタートから出たかったんですけど、自分にできることはピッチに立っていなくてもあったので、そこは意識してできたかなと思います」。今シーズンは負傷離脱する時間も長く、チームメイトをサポートする役割に回ることも多かった。目の前のやるべきことを100パーセントでこなすことは、この1年間で今まで以上に学んできたことだ。根津も終盤から登場した試合は、6-1で快勝。チームは大一番と目されていた3回戦へと勝ち上がる。
相手は昌平高(埼玉)。「自分も埼玉出身で、昌平には知っている選手もたくさんいたので、負けたくないという気持ちがありましたね」と根津。会場も浦和駒場スタジアム。舞台は完璧に整っていた。
いきなり前半3分の失点から始まったゲームは、13分にFW山本颯太(3年)がすぐさま同点弾を叩き出すと、そこからは前橋育英の果敢な守備が、昌平のアタックを完璧に近い形で封じていく。
「1人じゃ取れなくても、2人目、3人目でしっかり奪い切ることと、前線が追い込んでくれたところに自分が取りに行くことは意識していました。特に奪われた後に取り返す意識は全員の中で統一していたので、まだまだですけど、そこは今日の試合でできたところかなと思います」と話す根津は、圧倒的なスピードとパワーで相手のボールを刈り取っていく。その鬼気迫るようなプレーに、この一戦への決意が滲む。
30分過ぎに相手との接触で倒れ込むと、なかなか立ち上がれない。「もともとケガをしているところで、結構痛かったんですけど、あそこで終わるわけにはいかなかったですし、アドレナリンも出ていたので、やり続けました。始まったばかりでしたし、自分がピッチでできることはまだまだあったので、“マル”を出しました」。周囲もヒヤリとしたものの、しばらくすると何事もなかったかのようにピッチへ戻っていく。
後半10分には根津のフィードをDF井上駿也真(3年)がダイレクトで落とし、FW小池直矢(3年)のグラウンダークロスをMF青柳龍次郎(3年)がプッシュして逆転に成功。終盤は1点を追い掛ける昌平に押し込まれる時間を強いられたものの、守備強度は最後まで落ちず、そのまま2-1で逃げ切りに成功。万全の準備を施して挑んだ重要な一戦で、7番を背負ったボランチの存在感が際立った。
今年の3月にヒザを負傷。2年生ながら高校選抜にも選出され、チームとして初めて臨むプレミアリーグへと想いを募らせていた矢先の大ケガだった。一時は仲間の試合を見るのも嫌になるぐらい、メンタルを蝕まれかけたこともある。チームの勝利を素直に喜べない自分に、失望したこともあった。でも、そんな苦しい離脱期間が、改めて大切なことを気付かせてくれた。
「自分がケガをしている間に、親も含めていろいろな方が支えてくれたので、その人たちのために頑張ろうという想いはより強くなりました。『痛みもなくサッカーできることは、本当に当たり前じゃないんだな』って感じましたし、サッカーができることに感謝して、できる時は100パーセント以上の力を出して、見ている人も勇気付けられるようにという感情が芽生えたんです」。
だからこそ、まだまだ満足するわけにはいかない。ここからはすべてが大一番。とりわけ次のゲームは、準々決勝というシチュエーションも、大津高(熊本)という対戦相手も、1年前とまったく一緒。この一戦のために1年間の努力を積み重ねてきたと言っても決して大げさではない、因縁のビッグマッチだ。
「去年は大津に負けたので、自分たちは『打倒・大津』もそうですし、ベスト8の壁を破りたいと、しっかり勝ちたいと思ってこの1年間やってきたので、次の試合に向かう想いはそれぞれが強いと思います。自分たちが思い切りプレーできているのも、スタンドで応援してくれている人たちの想いが、凄く自分たちの力になっているからなので、責任を持ってプレーしていきたいです」。
帰ってきたタイガー軍団の実力派ボランチ。根津は誰よりもサッカーができる喜びを携えながら、この仲間と目指し続けてきた冬の日本一だけを真っすぐに見据えている。
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挑戦し続ける若者を応援したい、挑戦の先にある新たな扉を開くサポートをしたい、そんな想いから第100回大会より全国高校サッカー選手権へ協賛。日本一を目指す高校生たちの挑戦を全力でサポートいたします!
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(取材・文 土屋雅史)
●【特設】高校選手権2022