[1.2 選手権3回戦 日体大柏高 1-0 飯塚高 柏の葉]

　大怪我でプレーできなくなった先輩から直々に指名され、託された右サイドバックのポジション。飯塚高DF溝口敢大(2年=長崎U-15)は「恩返ししたい」という一心で、懸命に役目を果たした。惜しくも試合には勝つことができなかったが、ラストイヤーの来季に向けて大きな財産を手にした。

　昨年12月31日に行われた2回戦、飯塚DF松島朝日(3年)は試合中に左足首靭帯損傷の重傷を負い、今大会でのプレーが事実上不可能となった。翌1月1日、松島は中辻喜敬監督から「誰に託せるか」と質問され、そこで指名したのが溝口だった。FWからDFまでをこなすユーティリティな2年生。指揮官も同じ意見だった。

　溝口は3回戦の朝、他の選手と同様に、松島が徹夜でつづった手紙を受け取った。「後は託したと書かれていました」(溝口)。出番が決まった時点では緊張に襲われていたが、そこで腹は決まった。「感謝の気持ちでやるしかないと思った。3年生には感謝しかないので、恩返しするために必ず勝とうと思った」。自身初めての全国舞台に思い切って立った。

　先輩の思いも背負った背番号19は、立ち上がりから迷いのないプレーを見せた。攻撃参加、局面での守備対応ではいずれも力強さを見せ、セットプレーのこぼれ球では積極性あふれるシュートも披露。「緊張はそこまでせずに入れたのでアグレッシブに入れた」。ここまで2試合連続ゴールを決めていたFW古谷柊介(3年)にも「絶対に10番にはやらせないという気持ちでやった」とうまく抑え込んでいた。

　それでも最後は1点が遠かった。「あと少しの差で負けるんだなというのを実感した」。溝口はまだ2年生。先輩の涙を間近で見つめた17歳は「来年は必ず優勝して、日本一になって、いろんな人に恩返ししたい」と決意を固めた。

(取材・文　竹内達也)

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