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OBが紅白戦参加、現役Jリーガーは洗濯係も志願…団結して戦った“高川学園ファミリー”「本当にありがたかった」

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[1.2 選手権3回戦 高川学園高 0-2 東山高 柏の葉]

 前回大会で旋風を巻き起こし、4強シード校として臨んだ高川学園高だったが、今大会ではベスト16の壁に阻まれた。昨年から出場機会を得てきた背番号10のFW山本吟侍(2年)は「3年生のために勝とうと思っていたけど勝てなくて申し訳ない」と唇を噛んだ。

 2年生エースの重圧を背負っていた山本は先輩への感謝を語った。「自分が今年はチームの中心にやってやろうと思っていたなかで、うまくいかない時も(梅田)彪翔、武藤(尋斗)が必ず声をかけてくれて、寮でも部屋まで来てくれて、落ち込んでいたら慰めてくれた」。だからこそ、自らのゴールで勝利に導きたいという思いは強かった。

 また今大会では昨年度のエースの一角を担ったFW林晴己(明治大)をはじめ、錚々たるOBが何人もチームに帯同し、全国舞台に挑む選手たちを支えていた。

「大会に入って以降、開会式の前から後輩のために時間を割いてくれてトレーニングに入ってくれて、アドバイスをしてくれて、声掛けを随分してくれた。そこは高川学園の伝統のいい部分だと思う」。そう明かしたのは江本孝監督。「初めての経験の子もいるので、フワフワしている部分もあったけど、OBの人たちがみんなの前で締めてくれる。臨む姿勢、気持ちが大事だぞとアドバイスをくれた」と感謝した。

 ゲームキャプテンを担ったDF藤井蒼斗(2年)によると、OB選手たちは紅白戦で仮想の対戦相手役を担ったり、J2水戸ホーリーホック所属のFW梅田魁人は自身の車を使って洗濯係を買って出てくれたりしたのだという。

「コーチのところにOBの方々が集まって、こういうふうに攻撃をしてこういうふうに守備をして、このポジションはこういう特徴だからこういう動きをするよというところまでやってくださった」(藤井)。ただでさえプロ選手と対峙するというのは得難い経験。藤井は「わざわざOBの方が来てくださるだけでもありがたいのに、練習に参加してくださるというのは他にはないことだと思う。本当にありがたかった」と感謝を噛み締めていた。

 その他にも昨季の9番FW中山桂吾(福岡大)はシーズンを通じて山本にアドバイスを送っていた様子。「ハルくんとかケイゴくんとは頻繁に連絡を取るし、アドバイスをくれる。自分にないものを持っているので、持っているものを組み合わせればいいプレーができる。サイドのドリブルとかメンタルの部分、『観客を自分のモノにしろ』というところを教えてもらった」。まさに“高川ファミリー”で全国舞台を戦っていた。

 そうしたチームの雰囲気について江本監督は「高川学園という学校自体がアットホームな感じで、理事長がそういう雰囲気を作り上げてくれている。それを子どもたちが感じてくれて、サッカー部もそういう色になっているんじゃないかと思う」と学校の雰囲気に前向きな要因を見出す。また藤井は「何より江本監督のおかげ」と指摘。「みんなお世話になったから、恩返ししようということで来てくださっている」と語った。

 年々厚みを増していく高川ファミリーの挑戦は来季に受け継がれる。次期キャプテンの藤井はすでに次期生徒会長の就任が内定。「自分がサッカー部の模範となって、全校の模範になりたい。サッカー部が全校の3分の1くらいいるので、サッカー部からいい雰囲気を伝達させていけば、おのずと学校の雰囲気も良くなっていくと思う」と大役を担っていく構えだ。

 そして今大会で届かなかった全国制覇の夢に再びトライしていく。「自分一人じゃ何もできないと思うけど、吟侍や大下隼鋭、他の2年生にも頼りながらやっていきたい。去年の結果と今年の結果を踏まえて、もっと上を目指して全国優勝という結果で終わりたい」(藤井)。一回り強くなって、この全国舞台に帰ってくる。

(取材・文 竹内達也)
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