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ピッチ内外で「一番頑張って来ている」ボランチが出場停止。思い込めて戦った大津が仲間とともに国立へ

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大津高が激闘を制し、準決勝進出を果たした。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[1.4 選手権準々決勝 前橋育英高 0-0(PK4-5)大津高 駒場]

“力愛のために”――。大津高(熊本)は、中盤の要であるMF浅野力愛(3年)が累積警告で出場停止。ピッチ外を含めて人一倍努力してきた3年生ボランチへの信頼感は、非常に厚いものがある。大津の選手たちはその浅野を準決勝のピッチに必ず立たせるという決意を持って、準決勝のピッチに立っていた。

 DF坂本翼(3年)は「アイツが一番頑張って来ている。3年間ゴミ拾いとかやってきているので、力愛が出れなくて終わらせられない」と語り、主将のFW小林俊瑛(3年)は「(浅野のためにという思い)そこは凄く大きかったですね。一番、日常生活のところはしっかりとやっている子なので」と頷く。

 準々決勝の対戦相手は、インターハイ王者・前橋育英高(群馬)。前回大会は同じく準々決勝で対戦し、大津が1-0で勝利している。前橋育英にとってはリベンジマッチ。大津にとっては「10回やって3回勝てるかなという相手」(山城朋大監督)だったというが、選手たちは立ち上がりから出足良く試合を進める。

 序盤はロングボールを上手く活用。攻守に密集を作ろうとする前橋育英を分断させた。「負傷していましたけれども、井伊(虎太郎)なんかは凄く頑張ってくれていて良いゲームができたと思います」と山城監督は振り返る。

 井伊は初戦で浅野とダブルボランチを組んで先発したが、前半に足首を負傷して後半途中交代。一時歩けない状態だったというほどで、3回戦はベンチ外だった。だが、「チームのためにというのが大きかったので、痛いとか関係なしに」という井伊は、準々決勝で痛み止めを服用して先発出場する。

 前半半ば以降はボールを保持される時間が増加。前橋育英はDF間にポジションを取り、コンビネーションやドリブルで割って入って来る。それに対し、井伊はボランチコンビを組んだMF坂本龍之介(3年)とともに運動量を増やして相手に付いて行った。ボールを保持される時間が増え、危ないシーンもあったが、井伊と坂本をはじめ、各選手が守備意識高くプレー。前後半にあった決定機を活かせず無得点に終わったが、PK戦で国立競技場で開催される準決勝への切符を勝ち取った。

 山城監督は「本当に今日の朝まであのポジション(ボランチに)誰を使うかということは(平岡和徳)総監督とも悩んでいましたし、井伊のコンディション次第というところもあったので。井伊も『自分がやらないといけない』というので、痛いものを痛くないと言いながら試合に出るということはやってくれましたので、今度は浅野がその分やってくれると思います」。アンラッキーな警告と出場停止から戻ってくる浅野の奮起に期待した。

 大津は前回大会で初めて選手権4強入りを果たしたが、準決勝は不戦勝。決勝では青森山田高(青森)にシュートゼロに抑え込まれて敗れている。それでも、1年前に国立競技場での戦いを経験していることはライバル校へのアドバンテージになる。

 山城監督は「しっかり準備はできていますし、国立という場所も彼らは知っていますので、それをアドバンテージに。何と言っても浅野がもう一度サッカーをできる環境ができたことを凄く幸せに思いながら、頑張っていきたい」とコメントした。

 小林は「経験しているのとしていないのとでは全然違うと思うので、去年経験の差だったりでああいう差になってしまったと思うので、自分だったり(国立を経験している)田原(瑠衣)中心にやっていきたい」と語り、坂本は「『超越』というのが今年のテーマなので、絶対に(昨年度の準優勝を超越して)優勝するという気持ちでやっていきたいです」と誓った。まずは東山高(京都)との準決勝突破へ集中。復帰する浅野のエネルギーも加え、再び強敵を上回る。

(取材・文 吉田太郎)
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